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2004年12月31日

良いお年を!

 『幽』表紙あてクイズの参加賞を投函しに行こうとしたら……す、すごい雪降り。大晦日に、こんなに降るのは珍しいですな。
 帰宅すると鬼が笑いそうな『ダ・ヴィンチ』2月号の見本が届いてました。

davigoth.JPG
↑なんか凄いことになってるんですが……

 ミステリー・ダ・ヴィンチの特集は「2005年はゴシックに生きる」――高原英理氏とDさんの対談を神無月マキナがまとめるという強力な布陣である。ううーむ、こいつは美女と野獣というべきかなんというべきか(笑)。小生は隅のほうでささやかに「人外の城、夢の砦――ゴシック文学への誘い」と題するコラム&ガイドを寄稿しております。また「怪談之怪」コーナーでは、『幽』2号の読みどころを編集長みずから解説。今号はほかにも「オタクと恋愛」特集とかツッコミどころ満載ですぞ。
 サテ、ぼちぼち年賀状の構想でも立てようかい……などと思いながら紅白を見ていたら、な、なんと美川憲一がクトゥルーのコスプレをっ!(←ちがいます)

 それでは皆さま、来年も当ブログとbk1をよろしくお願いいたします。
 良いお年をお迎えください。

isbn:4-309-26527-8
isbn:4-06-212519-6
isbn:4-05-900297-6

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月31日 20:07 | コメント (1) | トラックバック (0)

不朽の名著の名に恥じない幽霊本2点

 「怪異愛好者必携! 全点巻末索引付!」を謳う中公文庫〈異の世界〉から、第2弾として池田彌三郎『日本の幽霊』と今野圓輔『日本怪談集 幽霊篇』上下巻が刊行された。どちらも怪談研究における基本中の基本図書でありながら、最近は新刊での入手が難しくなっていただけに、こうした形での系統的復刊は大いに歓迎すべきことといえよう。
 しかも、たんなる復刊ではなく「ひと手間かけて」あるところがよい。今回の『日本の幽霊』や前回の江馬務『日本妖怪変化史』は、新たに索引を設けたことで格段に使いやすくなったし、相互のクロス・レファレンスが可能になった。研究のためのツールとしての機能が強化されているわけだ。また『日本怪談集』も、大きめな活字に鮮明な図版で、教養文庫版に較べて見違えるほど読みやすくなった。まあ、あえて分冊にする必要があるのか(〈伝奇ノ匣〉なら余裕で一巻だよな)……というツッコミは置いといて(笑)。
 これまた新たに付された解説も、適材適所という感じで新鮮な印象である。「幽霊篇」について木原浩勝氏@『新耳袋』に語らせるのはマア常套だろうが、『日本の幽霊』の堤邦彦氏@『江戸の怪異譚』による解説も、池田流民俗学の特質や史的位置づけを分かりやすく解説しながら、その今日的意義に説きおよぶ出色の一文となっている。わけても、池田の肉声を伝える「わたしの中のフォークロア」という晩年の対談記事に着目して次のように言い放つくだりには、思わず快哉を叫んだ。

 ここには池田の幽霊研究をきわ立たせる二つの重要な点が示されている。そのひとつは、幽霊の都市性を考えるための文化背景に近世の三都(京・大坂・江戸)が生んだ歌舞伎芝居の影響を思い浮かべている点、そしていまひとつは、幽霊の姿かたちを創り出した「文学」そのものに怪異発生の原風景を探り出そうとする方法であった。とくに後者は、歴史学、社会学の立場に立つ現今の妖怪研究とも異なる〈国文学者のスタンス〉といえるだろう。人間学としての文学研究は、人の心が生み出す怪異世界の母なる大地を可視化しうる、じつに有効なてだてにほかならない。(堤邦彦『日本の幽霊』解説より)

 先日の恠異学会大会の席上、歴史学や民俗学の方たちの活発な発言にひきかえ(たまたま主要な会員が欠席されていたせいもあろうが)国文学サイドからの発言が乏しかったことに些か淋しい思いをしていただけに、国文科出身の『幽』編集長としては、まさに我が意を得た思いしきりであった。
 さるにても「ぼくらとしてはどうしても文学、文芸類を題材に用いてくれば幽霊に触れなきゃならない。で、幽霊というのは人を目指すものだから、人間との関係というものは深くなってくる」という池田の言葉は含蓄深い。『幽』の試みもまたその延長線上にあることは、もちろんである。

bk1日本の幽霊 改版
池田弥三郎著
中央公論新社 / ¥ 1,100 (¥ 1,048) / 2004.12


bk1日本怪談集 幽霊篇 上
今野円輔著
中央公論新社 / ¥ 980 (¥ 933) / 2004.12


bk1日本怪談集 幽霊篇 下
今野円輔著
中央公論新社 / ¥ 980 (¥ 933) / 2004.12

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月31日 06:26 | コメント (0)

2004年12月30日

◆幻妖通信◆第16号配信しました&年間売り上げランキング発表

スタッフのタカザワです。
本年は幻妖ブックブログをご愛顧くださり、ありがとうございました。
今年最後の「幻妖通信」第16号が配信されましたのでご報告でします。

今年最後の東雅夫によるコラム(今回のテーマは「2004年度売上ランキング発表にあたって」)が掲載されています。

気になる「2004年度売上ランキング」はこちら↓
幻妖ブックブログ年間ランキング 2004

*「幻妖通信」は毎月無料でお手元に配信されます。
まだご登録いただいていないお客様はぜひご登録下さい

【幻妖通信】登録ページ

次号の配信は1月11日頃を予定しています。

来年も幻妖ブックブログと幻妖通信をよろしくお願いいたします。

では、良いお年を!

投稿者 : 2004年12月30日 11:18 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年12月29日

対象への愛にあふれた妖怪本2点

 東アジア恠異学会の大会には、『怪』の郡司編集長も出席されていた。もちろん顔を合わすなり殴り合うなどということはまったくなく、昼食時には仲良くテーブルを囲んで歓談に興じた次第。打ち上げ会場へ向かう途中、「おっ、『怪』と『幽』の編集長が並んで歩いている、怪しい」などと云って悦んでいる某作家氏がいたけれども、いちばん怪しいのは、両方の雑誌に深〜く関わっている某作家氏本人に他ならないことは贅言を要すまい。帰宅したら、その『怪』編集部から謹呈本が届いていた。

isbn:4-04-883909-8
↑目下在庫切れです。入荷したら御案内いたします。

 これは要するに「歴史手帖」の妖怪版ですな。見開き二頁に一週間ずつ、各日の六曜、干支、暦注、陰暦、月の満ち欠けまで記されており、妖怪探求を通じて日本の伝統文化に親しもうとする向きには便利このうえなし。しかもページの右下には「けいべつ? よく世の中を知らない少年のいうことばだ」などといった含蓄に富む水木しげる翁の名言金言が掲げられており、心和ませてくれる。また巻頭の「妖怪祭礼暦」、巻末の「妖怪用語ミニ事典」と「資料編」(妖怪関係史年表、度量衡や旧国名、西暦・元号・歴代天皇対照表等々)も、コンパクトながら非常に充実しており、使い勝手をよく考えた内容となっている。いいなあ〜これ。来年は『幽』でも『必携怪談暦』を作ろうかしらん(笑)。

kibontetyo.JPG
↑ストレートな妖怪愛に満ちた2冊である

 恠異学会にも出席されていた『幽』レビュアーの片岡美華さんから『キ神巡礼記』(頒価1500円/なお書名の「キ」は補助漢字のため表示不可。区点=2469/16進=3865/シフトJIS=8CE3/Unicode=5914)という同人本を頂戴した。これは山梨岡神社に祀られている正体不明の一本足の神「キ」をめぐって、御開帳当日に駆けつけた妖怪な人たちが、それぞれに紀行やエッセイや小説や研究やガイドや漫画等々を寄稿して成った、これまた隅々まで妖怪愛にあふれる真の意味でマニアックな一冊である。寄稿者の中には、多田克己とか村上健司とか化野燐とか石神茉莉とか村崎漏太とか、それから京極夏彦とか……どこかで見た憶えのある名前が勢ぞろいしていて、なかなかの壮観。内容の詳細と購入申し込みは、下記窓口へ。
http://www.geocities.jp/mayflw/form.html

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月29日 22:55 | コメント (3)

年の瀬の風物詩

 年内のノルマもほぼ(←ここ重要)果たし終え、よくぞここまで引っぱりに引っぱった特に名を秘す某先生の稲生モノノケ原稿も無事に結末まで到着し(いや、待った甲斐のある出来映えだったので、いいんですけど)、サアこれから清々しい気分で大掃除に取りかかろうかという矢先に、コレがどどーんと到着。

horrorawd.JPG
↑ホラー大賞一次通過作の箱である。某氏のみ今年も越年闘争(?)の模様。

 ……いや、いいんですけどね、今年はどんな才能がこの中に隠れているか、愉しみだし。

 暮れの風物詩といえば、当サイトの年間売行ベストテンがまとまりました。驚愕の第1位とは!? まもなく配信されるメルマガ「幻妖通信」にて先行発表いたしますので、気になる方でメルマガ未購読の方は、この機会に申し込みましょう!

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月29日 14:08 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年12月28日

【速報】『幽』2号、入荷

 お待たせしておりました『幽』2号が再入荷しましたので、お知らせいたします。
 下のリンクから飛ぶと相変わらず「取り扱いできません」表示のままですので(……)、お手数ですが、右下の検索窓から「幽 2号」で検索のうえ、ご注文くださいませ(御不便をかけている現行のシステムはまもなく全面刷新されるようなので期待しましょう!)。
 なお、購読特典、まもなく第1回配信の準備が整いますので、もうしばらくお待ちください。
 表紙あてクイズの粗品も、やっと発送できそうです……。

bk1幽 第2号

メディアファクトリー / ¥ 1,490 (¥ 1,419) / 2004.12.08

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月28日 13:21 | コメント (0) | トラックバック (0)

息を呑むほど美しい装幀の短篇集2点

 『幽』の編集に携わるようになって知った愉しみのひとつに、デザインワークがある。別に自分がデザインするわけでもないのに何が愉しみなのかというと、アートディレクターの祖父江慎さん、デザイナーの梅津佳子さんによる絶妙なコラボレーション、思いもよらぬアイディアが目に見える形となってゆく現場に立ち会えることに、日々新鮮な驚きを感じてやまないのだ。で、『幽』は、ああいう掟破りというか、やりたい放題のレイアウトになっているわけだが(笑)。次に紹介する2冊も、内容と装幀が理想的な共振関係にある幸福なる書物である。本のたたずまいそのものが所有欲を掻きたてる、昏い玩弄物としての書物である。

isbn:4-10-471701-0
 あの『幽(かすか)』といい『巴』といい『半島』といい、鈴木一誌デザインによる惚れぼれするような造本が印象的な松浦寿輝の小説集。今回は新潮社装幀室によるデザインだが、前小口と天地を漆黒に塗りつぶすという、かの『黒魔術の手帖』桃源社版を髣髴させる趣向に、まずグラリときた(小生も遠い昔、ぶんか社の『電脳猟奇』でこれをやろうとしたのだが、制作費がかさむからダメと云われて泣く泣く次善の策を講じた苦い思い出があったりする)。しかも今回は、著者鍾愛の画家フィリップ・モーリッツの銅版画が目次や扉にあしらわれていて、これまた我知らず、画中の異様な世界に誘い込まれるような吸引力を感じさせずにおかない。『あやめ 鰈 ひかがみ』の原型風小品あり、宮沢賢治トリビュートの童話あり、作者みずから純正怪談と認める詩小説「同居」ありと拾遺集的な色彩の濃い一巻である。

isbn:4-06-212653-2
 著者は申すまでもなく、あの諸星大二郎その人である。漫画家で小説にも筆を染める例はさほど珍しくないけれども、かくも鮮やかに、作者特有のイマジナリー・ワールドを、漫画と同じレベルで表現することに成功しえた例は稀有なのではなかろうか。巻頭作にして最新作である「狂犬」の雰囲気づくりの巧みさ、ホラー・ジャパネスクな奇想の凄絶さはどうだろう……これは断じて、漫画家の余技ではない。収められた五篇がそれぞれに独特の魅力を湛えて、にわかには甲乙つけがたい出来映え。その画風と同様、どこか朴訥な語り口が、かえってまざまざと悪夢の肌触りを読者に体感させる効果を挙げている。著者の装画をうまく活かした坂野公一のスタイリッシュな装幀と、紺野慎一のフォント・ディレクションによる斬新な本文組が相まって、本書の魅力を倍加させているように思われる。あ、ちなみに現在まで『幽』2号に寄せられた御意見・御感想の中で特に目につくのが、「今回は諸星大二郎作品が載っていなくて、残念!」という声。なにせ寡作で知られる諸星氏のこと、今回は他のお仕事とのかねあいもあって御寄稿が実現しなかったのだが、ねばり強くアタックいたします。出来れば小説も是非お願いしたい……。

matsumoro.JPG
↑右が黒小口の松浦本、左が諸星本……こうして見ると、なんか似てます!?

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月28日 04:24 | コメント (0) | トラックバック (1)

2004年12月27日

刊行されたこと自体が夢のような快挙本2点

 先に言及した『幻の猫』、あるいは『夜窓鬼談』などもそうだったが、今年は中小版元の心意気を感じさせるようなマニア感涙、いや号泣クラスの好企画が相次いだ。次に紹介する2点もその典型である。

isbn:4-7744-0373-3
 小酒井不木と江戸川乱歩――草創期の探偵小説界を先導した両巨人が、不木の急逝で突然の終止符を打つまでの七年間(大正十二年七月〜昭和四年四月)にわたり交わした往復書簡百五十余通を初めて集成する一巻。ミステリー・ファンはもちろんのこと、広く、黄金期の怪奇幻想文学シーンに関心を寄せる向きにとっても必読の一級資料といえよう。いわゆる怪奇探偵小説の誕生に、フランスの猟奇作家モーリス・ルヴェルの作品が思いのほか大きな影響を及ぼしていたことを再認識させられたのをはじめとして、多くの発見があった。国枝史郎がらみで気になっていた「耽奇社」の実態についても、ナマナマしい記述が散見されて興趣は尽きない。周到な翻刻と解説類、電子資料の利点をフルに活かした附録のCD−ROMの魅力もさることながら、破格に愉快なのが、村上裕徳氏の手になる脚註の知的暴走ぶり。紙背の闇に蠢く人間模様を名探偵よろしく推理するかと思えば、小説よりも奇なる怪人物や怪しいスポットをめぐるトリビアに没頭する……ヘタな小説を凌駕する、これは一個の「作品」である。村上氏といえば、氏が中井英夫の助手を務めていた当時の回想を率直に記した「月蝕領・羽根木時代の思い出」(『新青年趣味』第11号掲載)を、『小説推理』の虚無特集編纂中、須永朝彦さんに教示されて、たいそう面白く読んだばかり。なんでも氏は現在、映画『悪魔の手毬唄』のロケ現場にもなった山梨の某コミューンに食客として居住されている由、なかなかアッパレな当代の怪人ぶりではあるまいか。

isbn:4-901477-13-7
 すでに本ブログでも何度か言及してきた待望の一冊が、ついに刊行された。予想以上の持ち重りがするボリュームではあるが、洒落た造本で軽やかな印象を与えるのが、著者にふさわしい。これまた、大正〜昭和の幻想文学黄金期に華ひらいたケルト幻想の諸相と、廣子/みね子はもとより芥川龍之介、菊池寛らその担い手となった文学者たちの人間模様を窺ううえで、一級の文芸資料となろう。もっとも、今回初めて単行本化された諸篇については、実を云うと勿体なくてまだ読んでいない。歳末の慌ただしいさなかに、蒼惶と読むような類の書物ではないからである。2005年の読み初めは、本書に決まりだな。

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月27日 23:11 | コメント (1) | トラックバック (0)

微妙に『幽』がらみの散策本2点

 『小説推理』〜『幽』〜ホラー大賞〜年末進行と忙殺されているあいだに、世間では注目本が山のように刊行されていたではないか、嗚呼。
 というわけで、どんどんいきます! まずは微妙に『幽』がらみで注目の2冊を。

isbn:4-89444-383-X
 以前「怪奇幻想ブックストア」時代に紹介した写真集『逢魔が時』のコンビ(中里和人・写真/中野純・文)による新作は、東京下町の迷路さながら入り組んだ路地をテーマに、読者が実際に路地を徘徊しているかのような疑似体験へと誘う企みに満ちた一巻。またまた小生の個人的ツボを直撃の偏愛本となった。しかも、撮影場所に選ばれた墨田区向島界隈は、『幽』創刊号の「作家探訪・加門七海の巻」で訪れた一帯と近接する土地でもあるのだ。同探訪記を読んで興味を惹かれた向きには是非一見をお勧めしたい好著である。

isbn:4-06-352723-9
 こちらは『幽』2号の岡本綺堂特集をご覧になって、現地探訪を試みようと思われる方にお勧めの一冊。一見、他愛ないタレント本の類と誤解されそうだが、どうして一本筋の通った「坂道」観といい、坂好きのこだわりを感じさせる現地の写真といい、古地図や錦絵まで交えてコンパクトにまとめられた情報頁といい、丹念に造りこまれたハンドブックとなっている。判型もこぶりなので、怪しい坂道探訪や怪談史跡散策の伴侶に最適ですぞ。

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月27日 18:46 | コメント (0) | トラックバック (1)

『暴夜幻想譚』続報

 旧聞旧聞と連呼するということは、申すまでもなく仕事がやっと一区切りついたということである。『伝奇ノ匣8 暴夜幻想譚』の解説、書きも書いたり結局いつもの倍近い長さになってしまった。今回は、目玉の矢野目源一訳『ヴァテック』といい皆川正禧訳『シャグパットの毛剃』といい、あるいは日夏耿之介訳『壱千壱夜譚』といい、揃いもそろって翻訳の成立・出版事情がワケありで細かい説明を要するのであった。しかもそれぞれの逸話が「翻訳とは何か」という問いかけへの有意義な答えや手がかりをはらんでいるがために、引用の誘惑に駆られること、しきり。必然的に長文解説となってしまった。まあ、最近は意識して、この種の文章を書くときはミニマムなアンソロジーたるべしと心がけているのではあるが。
 ちなみに『ヴァテック』について、生田耕作による補訂版(初刊は牧神社)を底本に採用しなかった理由は、第一に矢野目単独訳の春陽堂文庫版が稀覯本と化しているのに較べ、牧神社版は何度か再刊もされて古書として比較的容易に入手可能なこと(ためしに今「日本の古本屋」で検索をかけてみたら20点以上もヒットした)、第二に補訳版以外にも原文に忠実な邦訳が複数存在すること(国書刊行会版等)、そして第三に、かつて牧神社版を読んだ際、オリジナルな矢野目訳がいかなるものであったか烈しく興味を掻きたてられたという個人的記憶による。『暴夜幻想譚』で初めて『ヴァテック』に接する方は、出来ることなら生田補訂版はじめ他の版本と読み較べてみていただきたい。翻訳という作業の奥深さを必ずや実感できることと思うし、またベックフォード一代の奇書たる『ヴァテック』は、そうした再読併読に堪える得がたい大古典であるのだから。日夏耿之介一門の雑誌『サバト』(本来は漢字表記)が企画した「サバト(同右)南柯叢書」に、英国ゴシック小説で唯一『ヴァテック』が採られているのは伊達ではない。ちなみに、その際に予告され、後に春陽堂から刊行されたのが、他ならぬ矢野目訳『暴王バテツク』だったのである。

noroiou.JPG
↑かつては角川文庫にも入っていたことがありましたな

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月27日 18:14 | コメント (0) | トラックバック (0)

今年のベスト3

 これまた(さらに輪をかけて)旧聞に属するが、『幽』校了の間隙を突いて『ダ・ヴィンチ』1月号恒例の「本読みのプロが選んだ3冊」に寄稿。今年は――このブログでも随時お伝えしてきたとおり――ベテランから新進まで傑出した作品が目白押しで、大いに逡巡を余儀なくされた(ま、それもまた愉しいんだが)。
 で、結果的に落ち着いた小生のベスト3@『ダ・ヴィンチ』バージョンは――
 伊藤人誉『幻の猫』
 津原泰水『綺譚集』
 長島槇子『旅芝居怪談双六』

 うーむ、ちょっとシブイけどマアいいか、いま担当してるのはホラー時評じゃなくて〈幻想と怪奇〉時評だし……などと思ったものだが、その後刊行された『このミス』今年度版のホラー総括記事を見て爆笑。一瞬、自分が書いたのかと錯覚したぞよ(笑)。
 なお『幻の猫』は、書店ルートでの購入ができないため、関心のある向きは下記の版元ホームページへアクセスを。内容は保証します。
http://www.spacelan.ne.jp/~kamenaku/index.htm

isbn:4-08-774703-4
isbn:4-05-402420-3

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月27日 02:47 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年12月26日

恠異学会大会開催

 やや(かなり?)旧聞に属するのだが、年末進行バタバタのさなか、西宮の関西学院大学で開催された東アジア恠異学会の第1回大会に出席してきた。
 ちなみに拙宅から東京駅まではクルマで十数分ほどなので、寝ぼけ頭で「まだ余裕だよなあ……」と呆然としていたら見事に予定時間の新幹線に乗り遅れ、30分近く遅刻するハメに。おまけに着席と同時に携帯電話が大怨霊、いや音量で鳴り響くという為体。これではまるで、オープニング講演の大役を担って熱血教師よろしく出席者に質問の雨を降らせていた妖怪文人・化野燐氏に厭がらせをしていると誤解されかねないではないか(笑)。

kaiitaikai.JPG
↑メインパネラーの化野、京極、苅米各氏(左から)

 昼食をはさんで後半は、恠異学会代表の西山克氏を司会役に、京極夏彦氏、苅米一志氏、化野氏によるシンポジウム形式で、もっぱら「怪異」の定義をめぐり興味深い論議が展開された。榎村寛之氏による総括も聞き応えがあった。
 ちなみに会場では、恠異学会とのコラボレーションによる新連載企画「怪談考古学(アルケオロジー)」が掲載された『幽』2号も販売され、アッという間に完売となった。当日お買いあげくださった皆さま、ありがとうございました。打ち上げにも参加させていただき、「怪談考古学」次回の仕切り役をお願いする副代表の大江篤氏に御挨拶する。結局、深夜カラオケまで御一緒してへろへろ状態で帰京。

isbn:4-653-03846-5
isbn:4-7517-3530-6
isbn:4-8273-3101-4
↑京極氏も絶讃の好著だ
isbn:4-10-290073-X

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月26日 18:31 | コメント (1) | トラックバック (1)

2004年12月21日

こちらも完売御礼だ!

 な、な、なんと『小説推理』に続いて『幽』第2号も、ハッと気がつけば初回入荷分を完売しておりました。こちらは創刊号の売れ行きから察して、それなりの大部数を発注していたのですが、予想以上の売れ行きに、bk1スタッフも嬉しい悲鳴を挙げておる模様です。
 御不便をかけて恐縮ですが、まもなく追加分が入荷すると思いますので、いましばらくお待ちくださいませ。
 そして、すでに御購入くださいました皆さま、本当にありがとうございます(深々と礼)。

bibid:02493302

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月21日 15:17 | コメント (1)

2004年12月20日

ゴシック名訳集成第2弾はアラビアン・ナイトメアの馨り!

 怒濤の年末進行も、ようやく先が見えてきた今日このごろ……長らく玄関先に積み上げてあったホラー大賞の箱をエイヤッとばかり返送し(今年は短編部門は平年並みだが長編部門がイマイチでしたな。他の方の箱に期待しよう!)、予想外に苦戦した義経北行伝説@ムーにようやく終止符を打ち、ゴシック特集@ダ・ヴィンチ(小生は「ゴシック文学への誘い」を寄稿)と幻想と怪奇時評@小説推理(今月のイチオシは断然、諸星大二郎『キョウコのキョウは恐怖の恐』だ!)と伝奇入門@ムー(伝奇ノベル大賞回顧の最終回)をサクサクこなして、今は『伝奇ノ匣8 暴夜幻想譚』の解説に着手したところであります(遠い目)。
 そういえば、『暴夜幻想譚』のラインナップを正式に告知していなかったことに、今ハタと気づいた次第(笑)。例によって紆余曲折ありましたが、こんな形に落ち着きました。

伝奇ノ匣8 暴夜(あらびや)幻想譚 ゴシック名訳集成2
 ヴァテック(ウィリアム・ベックフォード/矢野目源一訳)
 黒島王の伝――『開巻驚奇 暴夜物語』より(永峰秀樹訳)
 黄銅の都城の譚――『壱阡壱夜譚』より(日夏耿之介訳)
 シャグパットの毛剃(ジョージ・メレディス/皆川正禧訳)
『シャグパットの剃髪』(小泉八雲/田部隆次訳)
 蓬莱(皆川正禧)
 サイプレス――『アラビアの夜の種族』外伝(古川日出男)

 『ヴァテック』は、矢野目訳を生田耕作が補訂した牧神社版とは一線を画して、あえて原型となった矢野目単独訳を復刻しました。牧神社版をお持ちの方は、両者の差異を読み比べてみるのも一興かと。『暴夜物語』は日本最初のアラビヤン・ナイト邦訳本として夙に著名なもの。日夏訳『壱阡壱夜譚』からは全集未収録作をチョイス。しかし、なんといっても今回の目玉中の目玉は、メレディスの伝説的名作『シャグパットの毛剃』でしょう。
 ゴシック黎明期の明治日本で、小泉八雲と夏目漱石の両大家が口を極めて称讃・推奨し、両者の学統を継いだ英文学者・皆川正禧による一世一代の名訳にも恵まれながら、なぜか久しく埋没を余儀なくされたアラビヤン伝奇ファンタジーが、ついに、ようやく、ふたたび陽の目を見ることになりました! 痛快至極なストーリーと奇想天外な魔法合戦の連続は、あの『アラビアの夜の種族』を髣髴とさせ、あっさりハリポタを蹴散らすほどの面白さ!? 「読んで損はない」と確信をもって推奨できる逸品です。2月上旬発売、御期待ください!

isbn:4-88591-910-X
↑アラビアン・ナイト読本としても有益な、眺めて愉しい図録。オススメ!
isbn:4-480-03841-8

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月20日 16:37 | コメント (0)

アドニス版虚無、再入荷

 お待たせいたしました。
 アドニス版『虚無への供物』を掲載した『小説推理』1月号が再入荷しました。
 すでにリアル書店では、かなり入手が難しくなっておりまして、今回がラスト・チャンスとなる可能性があります。迷ってらっしゃる向きは、御決断を!(笑)
 ちなみに内容をおさらいしておきますと、メインは申すまでもなく碧川潭こと中井英夫が、同性愛専門誌『アドニス』に発表した『虚無への供物』プロトタイプの序章完全復刻、若き天才歌人として関係者と親交のあった須永朝彦さんへのインタビュー、そして中井の晩年を支えた「末期の助手」本多正一氏、『虚無』復権の立役者となった伝説の編集者(&俳人ほか)齋藤慎爾氏、それに博識のネット読書家として知る人ぞ知るpuhipuhiたんこと垂野創一郎氏のお三方によるエッセイ&評論という布陣です。
 小生も当初は入魂の評論百枚を予定していたのですが、次々とページが埋まり、気がついてみれば前書きと『虚無』入門ブックガイド1ページを入れる紙幅しか残されておりませんでした……残念!

bk1小説推理 1月号

双葉社 / ¥ 720 (¥ 686) / 20050101


投稿者 東 雅夫 : 2004年12月20日 15:07 | コメント (0)

【再告知】有料でした(汗)

 先にお知らせした高原英理氏との「ゴシック」トーク・セッション、大切なことを書き漏らしていました。
 このイベント、有料なんだそうで。ドリンク付きで1000円也。うう〜む、高原氏はともかく、小生の与太話なんぞに千円払ってくださる方なんて、いるんかいな!?
 ……というわけで、なんだか申しわけないので、御来場者特典として、ゴシックがらみの手作り小冊子でも用意しようかなと目下勘案中(もしも、どうにも時間がなくて準備できないときはゴメンナサイ)。2月からスタート予定の極私的史上初(!?)半年間毎月アンソロジー刊行計画も、その頃には詳細が固まっているはずなので、そのへんの予告編資料なんぞも多少はお渡しできたらと思っています。

あなたの中のゴシックハート
〜『ゴシックハート』(講談社)刊行記念トークセッション〜
高原英理×東雅夫

日時:2005年1月29日(土)18:00〜
場所:ジュンク堂書店池袋本店4Fカフェ
入場料:1000円(ドリンク付き)
予約/問合せ:03−5956−6111 同店1Fサービスカウンターまで

isbn:4-06-212519-6
isbn:4-05-900297-6

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月20日 14:52 | コメント (0)

2004年12月15日

完売御礼!

 ここんとこ年末進行やら何やらに追いまくられてウッカリしておりましたが、ハッと気がつけば『小説推理』1月号が売り切れておりました! 命日効果か!?(笑) 何はともあれ、ありがとうございます。
 再入荷は難しいかも……とお伝えしていましたが、双葉社営業部さんの格別の御配慮によりまして、少部数ですが再入荷することになりました。入荷次第、御案内いたしますので、買い漏らして天を仰いだ向きは今度こそ、お買い逃しなく!
 なお、アドニス版『虚無への供物』は、東京創元社からやがていつの日にか刊行される予定の中井英夫拾遺集(みたいなもの)に収められるそうでして、今回はそうした事情を勘案し、部分収録にとどめた次第です。

bk1小説推理 1月号

双葉社 / ¥ 720 (¥ 686) / 20050101


投稿者 東 雅夫 : 2004年12月15日 13:57 | コメント (0)

【告知】ゴシックなトーク・セッション開催

 以前チラリと言及しました高原英理氏とのトーク・セッションの日時が正式に決定されましたので、お知らせいたします。

あなたの中のゴシックハート
〜『ゴシックハート』(講談社)刊行記念トークセッション〜
高原英理×東雅夫

日時:2005年1月29日(土)18:00〜
場所:ジュンク堂書店池袋本店4Fカフェ
予約/問合せ:03−5956−6111 同店1Fサービスカウンターまで

 ふるっておはこびくださいませ。

isbn:4-06-212519-6
isbn:4-05-900297-6

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月15日 13:31 | コメント (0)

2004年12月09日

『幽』2号、発売目前!

 本日無事、見本が編集部に到着したというので駆けつけると、スタッフのロータくんが執筆者への発送作業に追われていました。店頭には予定どおり、遠隔地を除いて10日に並ぶと思います。
 なお、bk1では購入特典として、岡本綺堂の初期エッセイ「朝霜」をプレゼントいたしますので、ふるってお買いあげのほどを!

yoo2mihon.JPG
↑前号よりもちょっとだけ分厚いぞ!

bibid:02493302

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月09日 03:44 | コメント (0)

300字の物語宇宙

 以前、池袋西武のコミュニティカレッジでホラー講座を担当していたときの生徒さんたちから連名で、川又千秋編著『三百字小説』が届く。これは300字の「一息の読み切りサイズ」で書かれた全68篇の「ワンショット・ノベル」を収めた小説集なのだ。川又氏自身の作品のほか、氏の呼びかけに応えて集まったという作品多数が併緑されている。川又氏は西武コミカレでSF創作講座を担当されており、小生の講座と重複して受講している生徒さんも多かったのである。
 ショートショートの父・星新一の名を挙げるまでもなく、もともと掌篇小説は日本SFのお家芸でもあるわけだが、本書の収録作はSF的アイデアのものばかりでなく、怪談的なもの、奇想系のものなどバラエティに富んでいる。ジャパネスクな情感が嬉しい金子みづは「宵宮」や、高橋由巳子のジェントル・ゴースト・ストーリー「お盆の頃」など、和のテイストが強調された作品に特に好感を抱いた。

isbn:4-86156-501-4
isbn:4-10-203411-0
isbn:4-480-03747-0

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月09日 03:18 | コメント (0)

義経といえば

 日経BPさんから創刊された『週刊義経伝説紀行』が、いきなり届いた。もしや、このブログで話題にしたせいか、と一瞬思ったのだが、さにあらず。桑原茂夫さん率いるカマル社が、編集制作を請け負っているためらしい。国芳えがく錦絵の折り込み巻末附録も付いて創刊特価350円は、お買い得である(bk1では扱ってないけど)。
 早くも登場の第2号(こちらは560円)では、義経の母・常磐御前がテーマだが、有名な雪の逃避行ルートを、六道珍皇寺周辺の怪しいトポスに絡めて紹介している点が面白かった。今度の大河ドラマで鬼一法眼を演じる美輪明宏インタビューも妖しいぞ。
 全30号と巻数も手頃なので、伝説&紀行好きは要チェック。

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投稿者 東 雅夫 : 2004年12月09日 02:01 | コメント (0)

2004年12月07日

ホラー大賞の!

 ……箱にたどりつく前に、あたかも狂気山脈のごとく屹立する「義経北行伝説@ムー」の山(笑)。ひさびさの2色刷特集なので、下準備に時間がかかるのであった。微妙に芸域と外れるし。いや義経に関しては、『稲生モノノケ大全 陰之巻』にも、謡曲「鞍馬天狗」の別役実氏訳を収録してるくらいで大いに関心はあるのだけれど、フィクションが御法度な『ムー』ではねえ……。
 というわけで、担当の獅子堂(仮)と打ち合わせるため五反田の学研へ。幸い相談はすんなりまとまり、そそくさと帰ろうとしたら――「あーそうそう、ヒガシさん、そろそろ伝説紀行、まとめませんか?」それもテーマ別に単行本化したいという、ありがた〜いお話である。年明けには詳細をお知らせできると思うので、お愉しみに。
 しかしなぁ……『暴夜幻想譚』やら『稲生モノノケ大全 陽之巻』やらが、すべて越年へとズレこんだ結果、恐ろしいことに来年は、とりあえず2月から7月まで、毎月なにかしらのアンソロジーや競作集を上梓することになりそうな雲行きなのである。そこに単著が数冊加わるということは……うう〜む、下手の考え休むに似たり、とはこのことか。とっとと目の前の原稿を片づけねば。

isbn:4-620-31649-0
isbn:4-336-04020-6
↑義経伝説をテーマとする唯一無二のアンソロジー。いまの時期、カバー替えて再刊したら、けっこう売れるんじゃないかなあ。

isbn:4-09-626133-5
isbn:4-404-03095-9

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月07日 02:40 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年12月03日

ファンタジー入門ガイドの決定版!?

 もう一冊、これまた待望ひさしいというべきか待ちくたびれたというべきか、ロートル幻想文学ファンには懐かしい名前と書名であるリン・カーターの異世界ファンタジー啓蒙書『Imaginary Worlds』が邦訳された。何を隠そう小生なども、学生時代、神保町の洋古書店で偶然入手した同書のペーパーバック(相当にくたびれた本だったなー、誰の蔵書だったのだろう)を、辞書片手にひもといた、ちょっと気恥ずかしい過去があったりする(遠い目)。
 本書の意義については、訳者あとがきで中村融氏が指摘するとおり――「読みものとして抜群に面白いうえ、通史としての価値をいまだに失っていない」「類書が存在しないわが国では、貴重きわまりない著作」に尽きる。冒頭からマニア気質全開なその語り口には、著者の「ファンタジー愛」が沸々と脈打っており、その躍動感の前には、とかく批判の多い「剣と魔法の異世界遍歴ファンタジー」至上主義史観であるとか、誤記や記憶違いが散見される点(邦訳版では、訳者による周到な補訂が施されており、漫才のボケとツッコミを眺めているようで愉快)など、些事にすぎないと思えてくる。
 私見によれば、カーターという人は、編集者や批評家、研究家である以上に、根っからのアンソロジストであり、みずからが偏愛する対象の魅力を、より多くの人々に伝えることに至上の価値を見いだすタイプの人だったのではなかろうか。本書は、彼のそうした啓蒙的長所が、うまく活かされた仕事のひとつであると思う(ちょっと付言しておくと、編集者=エディターとアンソロジストとは、その職域が限りなく近似しているものの、本質的には別種の存在であると小生は考えている。もちろん小生は後者ね/笑)。
 啓蒙といえば、やはり訳者あとがきで中村氏が、近年のファンタジー隆盛とは裏腹に、基本的な通史的理解が欠落している日本の現状にふれて「そうした知識を自明のものとして、つぎの世代に伝える努力を怠ったように思う」と自戒を込めて記している点にも、切実な共感を覚えた。これはファンタジーに限らず、ホラーや怪談や幻想文学全般についても認められる傾向であり、常々なんとかしたいと思っている懸案だからである。うん、なんとかしなければ。

bk1ファンタジーの歴史
リン・カーター著
東京創元社 / ¥ 2,625 (¥ 2,500) / 2004.09.27

↑いま買えば太っ腹な購読特典がついてくる!

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月03日 19:02 | コメント (0) | トラックバック (1)

江戸怪異譚研究の決定版、出現!

 ようやく『幽』も無事に下版し、ハッと気づけば目の前に……ホラー大賞の箱と、『伝奇ノ匣8 暴夜幻想譚』のゲラと、『怪奇小説傑作集・日本篇(仮)』のゲラが山積みに! おまけに年末進行まっただなか……。
 いや、もうひとつ、大きなヤマがあった。そう、新刊の山である。年の瀬とともに、好著良書待望の本が、怒濤の勢いで発売されているではないか!

 そのなかでも真っ先に紹介したい絶対推奨本が、堤邦彦『江戸の怪異譚』である。
 ひとことで云うなら本書は、吉田幸一や太刀川清、そしてなにより高田衛によって開示された近世怪異小説研究の流れに、決定的な一石を投ずる書物なのだ。
 江戸の怪異小説が、中世以来の唱導文芸や民間伝承のうちに懐胎し、中国志怪小説の影響下に発展したことは、すでに定説化しているけれど、ではその実態がいかなるものであったのか、ここまで総合的に、民俗学や宗教学、ときには社会学の領分にまで逸脱しつつ、果敢に踏み込んで探求した書物は、かつて例をみないといってよい。
 おそらくこれからは、本書を読まずして江戸の怪談を語ることは不可能になるだろう……それくらいのインパクトを有する論文集なのである。一例を挙げるなら――寺社の勢力拡張・信徒獲得に、怪異譚とその「物証」が利用され、それが文芸や民談の世界へもフィードバックしていったという指摘と具体的検証作業は、小生自身、「日本伝説紀行」などで全国各地の寺社を探訪するにつけ、その学術的考究の必要性を痛感していたテーマだけに、心から快哉を叫んだ次第である。
 本書のもうひとつの魅力は、明晰で親しみやすい、その文体にある。国文学の世界には、先に名を挙げた高田衛氏や野口武彦氏、故・松田修氏をはじめ、達意の文章家が少なくないが、本書の著者もまた、その赫々たる伝統を受け継ぐひとりといえよう。そのため書き手によっては退屈極まりない粗筋の要約なども、本書では一個の読み物になっており、論文集というよりは時に奇談集を読むような感興を覚えしめる。400頁を越える大著だが、本当に息つくまもなく読み終えてしまった。
 近世文学のみならず、ひろく「怪談」に関心を寄せる総ての読書家に推奨したい、知的刺激に満ちた一冊である。

isbn:4-8315-1059-9

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月03日 17:29 | コメント (0) | トラックバック (0)

2004年12月02日

結果発表

 『幽』2号の表紙あてクイズ、期限の2日午前9:00を過ぎましたので、締め切らせていただきます。多数の(このブログにしては)御応募、本当にありがとうございました。
 それでは注目の結果発表です。じゃじゃ〜ん!

yoo2.jpg

 いやあ、意外に正解が少なかったですね。お目にかけた写真では微妙な色合いのバランスとか分からないので、致し方ないことだと思います。なにぶん、お遊び企画ですので御容赦くださいませ。
 見事、正解された「みなみ(仮)」さんと「あまのじゃく」さん、おめでとうございます! 未沙希さん、惜しかったですね。正解者には小生特製の秘密ネタ・ファイルをメールで進呈いたします(一週間ほど時間をください)。
 それから、これはまだ確定ではないのですが、ダ・ヴィンチさんの御好意によりまして、2号の書店配布用ポスター(小)を、応募された方全員に、参加賞として進呈できそうですので、お愉しみに(送付時期等は未定)。追って、送付方法の問い合わせメールを、こちらからさしあげますので、御入用の方は必要事項を記入のうえ御返信ください。
 しかし、こういう企画はブログならではですねえ。機会があればまたやりたいと思っています。とりあえず、12月10日発売の『幽』第2号を何卒よろしく!

bibid:02493302

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月02日 09:26 | コメント (5) | トラックバック (0)

2004年12月01日

締切せまる!(笑)

 なりゆきで始まった『幽』第2号の表紙あてクイズ、思いがけない反響に感激しております。
 そろそろ正式な書影の用意もできたようですので、今から約24時間後、明日2日(木)の午前9:00をもって、募集を締め切らせていただきます。よろしくお願いいたします。

【以下、前の記事を再掲】
yoo2covers.JPG

 ううーむ、どれも捨てがたくて目移りしますなあ(悩)。
 祖父江さん、さすがです。
 サテ、最後に残ったのはどのデザイン案だったか……コメントお寄せいただいて正解された方には、なにかオマケのファイルをメールでプレゼントします!(マジ)

投稿者 東 雅夫 : 2004年12月01日 08:49 | コメント (1)