« 2009年08月 | メイン
| 2009年10月
»
2009年09月30日
屋久島の神秘に魅入られた画家たち『幻想文学』などで長年お世話になってきた画家の建石修志さんから、下記展覧会の御案内をいただきました。

OZIBISM 幻視――屋久島
【参加作家】門坂流/柄澤齊/多賀新/建石修志
【会期】2009年10月3日(土)―16日(金)11:00―19:00
※会期中に休業日、時間変更日あり。詳しくは下記ホームページを参照。
【会場】青木画廊
〒104-0061 東京都中央区銀座3―5―16 島田ビル2F
電話03(3535)6858
http://www.aokigallery.jp
【協賛】山と渓谷社
幻想文学ファンなら先刻御承知だろう4人の画家の競演もさることながら、なにより注目すべきは「幻視/屋久島」がメイン・テーマに設定されていることでしょう。
今回の企画の仕掛人(!?)とおぼしき元『山と渓谷』編集長でエッセイストの勝峰富雄さんによる寄稿文によりますと、
甘美で危険な森の奥、遙か山稜へと、選ばれし4人の美術家が踏み入った。
謎を解く符牒は、OZIBI(オジビ)。
屋久島の精霊と美術家の身体が交感、拮抗して生み出された、いまだ表わされたことのない屋久島の秘景。
……とのことで、なんと実際に屋久島を踏破されての企画らしいのですな。
『響鬼探究』で決死の屋久島縦走に挑んだ小生としては、これはもう興奮を禁じえないというか、よくぞ皆さん御無事でというべきか(笑)、今から作品群を拝見するのが愉しみで、わくわくしております。
幻想文学好きの方も屋久島好きの方も響鬼好きの方も、ぜひ足を運ばれんことを!

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月30日 14:12 | コメント (1) | トラックバック (0)
第4回『幽』怪談文学賞長篇部門、最終候補作決定!というわけで、東京に帰着早々、メディアファクトリー編集部で開催された、第4回『幽』怪談文学賞長篇部門の予備選考会。
盛況の短篇部門に較べると、これまでは応募数的にも質的にも、やや層の薄い印象があった長篇部門ですが、今年は違いました!
一次通過作品は、どれも読み応えのあるものばかり。しかも、怪談文芸としてのバラエティにも富んでおり、選考会での討議にも、おのずから力が入りました。
拙著『怪談文芸ハンドブック』や『幽』での特集企画などで、長篇怪談振興に努めてきた成果が、ようやく目に見える形で現れつつあるようで、嬉しい限りです。
結果は、すでにWEB幽にて速報されているとおり。
本格的な百物語小説あり、イタリアや中国を舞台にした作品あり。
はたまた、戦国物に江戸市井物と、ひとつとして重複するものがない、最終候補作が揃いました。
11月頃に予定されている最終選考会で、どのような判断が下されるのか、今から愉しみでなりません。

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月30日 12:18 | コメント (0) | トラックバック (0)
青森怪談紀行(三日目) 浅虫温泉といえば、その昔、何回目かの怪談之怪イベントが下北半島で開かれた際に、京極夏彦さんや新耳コンビ、吸血キッシーらとともに短時間だが立ち寄って、京極夏彦生首写真を撮影した思い出の地である(笑)。
そういえば編集Rは当時まだフリーターの身で、このときの遠征で妖怪物販チームの運転手役を務めたのが縁で、なぜかメディアファクトリーで働くことになったのだよなあ……などと回想に浸るうち、夕闇迫る浅虫温泉駅へ到着。すると、あたかも待ちかまえていたかのように、土砂降りとなる。もともとこの日は曇ときどき雨の予報だったのに、取材中はピーカンに近い好天に恵まれた(かなりな晴れ男)。取材終了とともに一天にわかにかき曇るのは、よくあるパターンなのだ。宿に電話して、迎えの車を出してもらう。

▲沖合に浮かぶ「湯の島」の遠望。
連休中にもかかわらず、たまたま空いていた宿の部屋は、沖合間近に神秘的なたたずまいで浮かぶ「湯の島」を至近に望む、絶好のロケーションであった。眺望良好な展望風呂に浸かって、夏場に溜まりに溜まった疲れを癒し、仮眠を取って後、『幽』怪談文学賞長篇部門の原稿を明け方までひたすら読み続ける。
明けて翌日、せっかくフリー切符で来ていることだし、時間配分的に(帰着後、待ったなしで選考会なのよ)幽文原稿を読み続けないといけない状況でもあるので、鉄道メインの旅にして、本州最北端・龍飛岬を目指すことにする。
前日にもまして凄いくらいの蒼天のもと、林檎畑や水田がえんえんと連なる津軽平野をひたすら北上、昼前に三厩駅に到着した。

▲ここが鉄路の果て、三厩駅。
三厩といえば、忘れてならないのが義経寺だ。
衣川で敗死したはずの源義経が秘かに落ちのび、奥州各地を転々とした後、ここ三厩から津軽海峡を渡海して蝦夷へと渡ったという伝説は有名である。
実は小生、かつて某誌で義経北行伝説を取りあげた際、急な発熱に見舞われ、義経寺の取材を断念した苦い思い出があった。思いがけず本懐を果たせて嬉しいこと限りなし。
三厩の地名の由来ともなり、その上で義経が三昼夜、渡海成就を神仏に祈願したと伝えられる奇勝「厩石」の周囲を、にこにこしながらぐるぐる廻っていたら、散歩中のおばちゃんに奇異な目で見られた。

▲これが厩石。基部に三箇所、扉のような空隙があるのだ!
かくして、旅の終わりは、北のはずれ龍飛岬。
海峡の向こうには、北海道が間近く横たわる。
ふと見れば……なんと此処にも「津軽海峡冬景色」の歌碑が建てられているではないの(笑)。こちらはセンサーではなく手動式で、ボタンを押すと鳴り響く、おなじみのイントロ!(ただし流れるのは二番のみ)

▲メディアファクトリーの袋の中身は、もちろん『幽』怪談文学賞の一次通過作である。
岬の突端にひとり立ち、またしても「津軽海峡冬景色」を熱唱する小生であった。(完)

![]()
▲名曲「ホテル港や」が入っていないのが残念……。
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月30日 03:48 | コメント (0) | トラックバック (0)
青森怪談紀行(二日目) せっかく青森にやってきたからには、もう一箇所、ぜひとも訪れておきたい場所があった。
太宰治ゆかりの五所川原市、とりわけ川倉の地蔵堂である。
実は『文豪怪談傑作選 太宰治集』編纂中にも、むらむらと探訪慾が沸き上がり、出かける寸前までいったのだが、なにせ今年は例年にもまして多忙を極め、辛くも思いとどまったという経緯があった。
かくして翌日は早めに起動しJRのリゾート快速「しらかみ」で五所川原へ、そこから津軽鉄道に乗り換え、可愛らしい一両編成の「走れメロス号」で金木を目指す。走行中の車内では、アテンダントの綺麗なお姉さんが、乗客ひとりひとりに声をかけるサービスぶりである。地蔵堂までの道順について訊ねたら、「お、おひとりで行かれるのですか!?」と心配そうな顔つきで返される。「お清めの塩とか、持って行かれたほうがいいですよ」って、お姉さん、そのマニアックなアドバイスはもしかして(笑)……親身な対応ぶりに、津軽鉄道を心から応援したくなるひとときであった。

▲走れメロス号
さて、金木駅に到着後、観光客でにぎわう斜陽館には目もくれず、一路、地蔵堂を目指す。ひと駅先の芦野公園駅で降りてもよかったのだが、太宰が生まれ育った金木の町からの距離感と地勢を、自分の足で歩いて確認したかったのである。
一面に田畑の広がる長閑な道をたどること十数分、いきなり目についたのが、コレである。

なんという不穏な名前の踏切であることか、まるで鬼太郎の「ゆうれい電車」が通過しそうな……などと高まる期待に足を速める。老人介護施設に続いて金木町斎場、その向かいには「葬送ききょう館」と、人の世の儚さを痛感させる並びの建物が連なる道をゆくことしばし(しかし夜中にこの道をたどるのは、かなりの度胸が要りますな……)、前方左手の緑蔭に見え隠れするようにして地蔵堂の赤い伽藍が姿を顕わした。

おずおずと堂内に参入して、驚いた。左手の壁沿いに設けられた座席に、寺院の関係者の方がズラリと待機されているではないか。慣れた様子の参詣者が、その前に進み出て、読経を受けている。
そこで初めて、今日が秋の彼岸の中日であることに気づいて、愕然とする。よりによってまー、なんという日に……。堂内の奥には、死者の形代となる人形や遺品がびっしりと安置されており、静謐な空気の重みに圧倒される。
粛々と退出し、地蔵堂の裏手に廻ってホッと息をついたのも束の間、傍らに立つ「蛇塚の由来」の説明書きに慄然。それによればここ川倉の賽の河原は、天明の大飢饉による大量の横死者を埋めた「イゴク穴」の跡地なのだとか。しかも、明治16年より19年にかけて(!)赤い蛇の群れが出没しては近寄る人を威嚇したため、イタコに口寄せを頼んだところ、埋葬された無縁仏が供養を願って蛇となり顕われたものと判じられた。そこで塚を築いて菩提を弔い、以来この付近を「蛇塚」と呼ぶようになったのだという。
追われるようにして裏手の坂道をくだる途中、道沿いに居ならぶ石の地蔵尊に、一体一体、供物の菓子を供えてまわる老婦人とすれちがった。死者と生者との距離の近さを如実に感じさせる光景だった。

▲蛇塚付近。左手に見えるお堂が無縁仏の供養碑である。
地蔵堂の西側に広がる沼沢地は、現在は芦野公園として整備されており、遊歩道や釣り橋、キャンプ場や動物園が広大な敷地に点在する行楽地となっている。抜けるような蒼天のもと快調に歩を進め、そのまま金木の町を縦断して、中心部へと戻ってきた。
幼い日の太宰が地獄絵を眺めたという雲祥寺や斜陽館を見学した後、午後早めの列車で今夜の宿泊地である浅虫温泉へと向かったのだった。 (つづく)

▲斜陽館向かいに設けられた観光物産館には太宰本のコーナーも。
ちなみに『文豪怪談傑作選 太宰治集』は……置いてなかったorz

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月30日 01:45 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月28日
青森怪談紀行(一日目)念願の「妖怪展」を堪能して、サテ、昼飯でも食べようかと、青森駅前のメイン・ストリートをぶらついていたら、下記の看板が目に入り、思わずドキッとする(笑)。長年の習性とは、げに怖ろしきものかな。

名物のホタテ貝焼き定食を食して後、まず足を向けたのは、郷土館からも程近い安方地区の善知鳥神社。ここは、謡曲「善知鳥」や読本「善知安方忠義伝」の素材となった怪異譚の伝承地であり、境内には往時の安潟の名残りだという「善知鳥沼」と呼ばれる旧蹟も現存する。

▲ここが善知鳥沼。この地に廃流された善知鳥中納言安方夫妻が、没後、雌雄の鳥と化し、
雄が「ウトウ」、雌が「ヤスカタ」と鳴き交わしたという。
繁華街の一隅とは思えないほど幽邃な面影を留めた広大な境内には、龍神の湧水やら、頂上に善知鳥、基部に霊亀を配する変幻燈やら、妙に心惹かれるオブジェが点在していた。

▲神社裏手にある龍神の池。この池畔の石と緋鯉の泳ぐ池の取り合わせ、何かに似ている
……と思ったら、山下昇平画伯えがく『文豪てのひら怪談』の表紙画ではないか!(笑)

そろそろ陽が翳ってきた市街を散策していたら、その名も善知鳥山安方院一念寺というお寺さんを発見。縁起には、善知鳥にまつわる次のごとき怪異談が記されていた。
曰く――あるとき、猟師が雌雄の鳥の雄を誤って射殺してしまう。「それ以来、雌鳥は人々を苦しめるようになり、その猟師は気が狂い、雌鳥に突き殺されてしまった。このため里の人々は、雄鳥の霊を慰め、雌鳥の怨念を和らげるために祠を建てたのが一念坊といわれる」
真横は高層ホテル、裏手すぐにラブホテルがひしめく目抜き通りに、古怪な伝承を今に留める寺院がしっかり鎮座している光景は、どこか微笑ましくもある。

心地よい北国の秋風に吹かれながら、ハイテクなピラミッド形の観光施設アスパムや、青森ベイブリッジが林立する湾岸エリアへ。夜空に三日月が浮かぶ公園には、早くも人影はまばらである。
今は記念館となっている青函連絡船「八甲田号」の横手に、石川さゆり(同い年である)が歌って大ヒットした「津軽海峡冬景色」の歌碑があった。おー、持ち歌だよ、と喜び勇んで駆け寄ったとたん、大音量で鳴り始めるおなじみのイントロ! どうやらセンサー感知によって自動的に曲が流れる仕組みになっているらしい。

ひとけない宵闇の公園で、思わずフルコーラスを熱唱してしまう小生であった。(つづく)
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月28日 03:51 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月20日
「東雅夫のイチオシ棚」 更新ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
「奇想コレクション」シリーズの最新刊ジョージ・R.R.マーティン著『洋梨形の男』の
“奇妙な味わい”は当ブログの読者の好みにぴったりでしょう。
小池 壮彦著『怪談』は緊張感溢れる作品集。
「日本のグリム」と呼ばれた佐々木喜善の“もうひとつの遠野物語”『遠野奇談』。
百鬼夜行絵巻43作品をフルカラーで収録『百鬼夜行の世界』。
世界天文年の今年にふさわしい神話事典『天空の世界神話』。

![]()
投稿者 coolmint : 2009年09月20日 01:30 | コメント (0) | トラックバック (0)
乱歩と蜘蛛と怪人と 角川ホラー文庫〈江戸川乱歩ベストセレクション〉の最新刊『蜘蛛男』の見本が到着。
小生は巻末解説を寄稿しています。

このシリーズでは、すでに多くの方が乱歩について様々に語っていますし、小生自身も乱歩については色々な場で書かせていただいているので、今回は「乱歩と蜘蛛とホラー」というテーマに絞って、考察してみました。
文中でもチラリと触れたのですが、「仮面ライダー」の記念すべき第一作は「怪奇蜘蛛男」の巻で、平成仮面ライダーの第一作「仮面ライダークウガ」の第一話にもズ・グムン・バと呼ばれる蜘蛛怪人が登場、さらに「仮面ライダー響鬼」第一話に至るや、巨大な魔化魍ツチグモが登場と、アンチ・ヒーローの象徴としての蜘蛛怪人の伝統は現代にまで脈々と息づいているのですな。そういえば、ショッカーの秘密基地って、なんとなくパノラマ島をはじめとする乱歩魔界風な気も……。

▲この画像と本文とは特に関係はありません。(C)京極夏彦
乱歩流怪奇スリラーの第一作である『蜘蛛男』を、ぜひこの機会に再読していただきたいと思います。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月20日 01:09 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月19日
みちのくからも朗報が! 昨年、仙台での小生の講演会に際してお世話になった出版社/企画編集プロダクション「荒蝦夷」の土方氏から、嬉しい連絡を頂戴した。
まだオープンにしてよいものか微妙なので詳細は伏せるが、東北にゆかりの深い2人の怪談作家の著作が、同社から近く復刊のはこびになるとのこと。
そのお一方については、小生もほんの少しだけ縁結びのお手伝いをした機縁により、今回の復刊にあたり寄稿依頼の御相談をいただいたのである。
先のウェッジ文庫の件と同じく、こうしたオファーは本当に嬉しいものなので、速攻快諾させていただいた次第。
いずれ正式に発表された暁には、全力で応援していきたいと思っている。
しかも、もうお一方について、「いやーそれは快挙ですよー」云々と話が弾むうち、『日本幻想作家事典』でギリギリまで粘って調べがつかなかった件が、あっさり氷解、ばかりか、アッと驚く新事実まで明らかになるというエキサイティングこのうえない展開となった(ああ、早くここでも報告したい!)。
幸い(というと殴られそうだが)作家事典は土壇場の作業で遅延が生じたらしく、連休明けに最終データ入稿となったため、先の蘆江「悪業地蔵」の件と合わせて、奇蹟的に訂正が間に合う模様(発売は10月23日で確定とか)。善哉善哉。
さるにても、このところ、ウェッジ文庫の『蘆江怪談集』や国書刊行会の『幕末明治 百物語』、そして荒蝦夷の新企画と、マニアライクな怪談作家や埋もれた名著の復刊が同時多発的に実現しつつあることは欣快に堪えない。
〈伝奇ノ匣〉や〈文豪怪談傑作選〉あるいは〈幽クラシックス〉などで、小生が細々と展開してきた「怪談温故知新」路線に、頼もしい併走者が次々と加わってくれているような胸のときめきを覚える。やはりこうした営為は、点から面へ――燎原の火の如く拡がりをみせて初めて、時代を動かす力たりえるのだから。
若い力、新たな才能の輩出と、古典名作の復権。この両輪がバランスよく機能してこそ、真の怪談黄金時代の幕が開く。その実現へ向けて、小生も及ばずながら、よりいっそう微力を尽くしていきたいと思っている。とにもかくにも、面白い展開になってきましたぞ、これは!

![]()

![]()
▲『東北学』から『高城高全集』まで、
荒蝦夷のレパートリーは幅広い!
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月19日 02:40 | コメント (2) | トラックバック (0)
2009年09月18日
パンツかパンダか!?赤いパンツをはいたパンダらしき生き物が、なんとも脱力系のパフォーマンス(?)を繰りひろげる、へんてこりんな4コマ漫画の本『パンツダ。』が届きました。

ムラマツエリコさんとなかがわみどりさんによるユニット「k.m.p.」の作品です。
たんなる4コマ漫画集ではなくて、随処に遊び心の感じられる、愉快に和める本になっています。

▲「描き方練習」と「きせかえ人形」のコーナー
実はこれ、角川書店在職中に、小生の『黒髪に恨みは深く』や『火星の運河――江戸川乱歩のホラー読本』を担当してくれた編集Eさんが、新天地で手がけた本なのですな。
怪談やホラーとは何の関係もありませんが(笑)、こういう系がお好きな方は、ぜひ御注目のほどを!

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月18日 01:59 | コメント (0) | トラックバック (0)
「悪業地蔵」の衝撃 ウェッジ文庫版『蘆江怪談集』(10月下旬刊行予定)の著者校正ゲラが、速達で到着。
最近はpdfファイルで送られてきたりすることも珍しくないのだが、やはり真っ新(さら)な紙のゲラに目を通す気分は格別である。
ところが、ゲラに添えられた担当編集者・服部滋氏からの手紙を一読するや、ひっくり返りそうなくらい驚いたのなんの! 以下に原文を引用させていただこう(どういうわけか毎回、服部さんの文面を引用する巡り合わせになっているような……)。
「悪業地獄」は、原著のとびらのみに記載されてい、目次および「縛られ塚」のリード文は「悪業地蔵」で、また内容も「地蔵」が相応しいので、「悪業地蔵」としました。
なんとまあ、これまで「悪業地獄」の名で知られていた収録作の一篇は、実は「悪業地蔵」が本来の表記だったのである。
作品の扉にでかでかと「悪業地獄」と書かれていることもさることながら、小生が「地獄」と「地蔵」の異同に今の今まで全く気づかなかった最大の要因は、この作品が1974年3月、雑誌『幻想と怪奇』第6号の「幻妖コスモロジー/日本作家総特集」に復刻掲載されることで、戦後世代の読者の目にふれた初めての蘆江怪談であり、しかもその際、タイトルが「悪業地獄」とされたため、以後、蘆江関係の文献すべて(推定)が、この誤植タイトルを踏襲してきたことにある。

▲右が伝説の「幻妖コスモロジー」特集号。
左は蘆江の名作「うら二階」所収の『現代怪談傑作集』。
いやはや、げに怖ろしきは、最初の刷り込み、思いこみであることよ。
おそらく、『幻想と怪奇』世代で蘆江怪談ファンの皆さん(日本全国でン十人くらい!?)は、小生の驚愕に同意してくださるのではあるまいか(笑)。
今回の復刊によって、長年の錯誤が正されることは望外の喜びである。
…………あッ、『日本幻想作家事典』!!!!!!!!!orz

![]()

![]()
▲ウェッジ文庫の新刊2点。『作者部屋から』解説の鴨下信一さんによる復刊秘話も感銘深い。
かくも思いのこもった本を毎回のように送り出すウェッジ文庫やおそるべし……。
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月18日 01:04 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月16日
波津彬子さんの幻想文学漫画集 鏡花といえば、その郷里である金沢に長らくお住まいの波津彬子さんが、このほど上梓された『幻想綺帖・一』は、あえて「幻想文学漫画」とでも銘打ちたくなる嬉しい趣向の一巻であります。

![]()
泉鏡花、サキ、芥川龍之介、モンゴメリ、中島敦……、
随筆『耳袋』、中国奇談……。
洋の東西から集めた名作、幻想奇想譚を流麗な筆致で描きつくした、九編の妖しくも儚く美しい世界。
中島敦の「山月記」に始まり、モンゴメリ「スモーキー島のハウス・パーティー」(さすがの炯眼!)、サキ「開いた窓」、泉鏡花「第二菎蒻本」(しぶい!)……そして『幽』に御寄稿いただいた泉鏡花「化鳥」、芥川龍之介「椒図志異」、『耳袋』より「幽霊、恩を謝する事」といった小品も収録されております。
瑰麗耽美な表紙画には、書物から揺らぎ立つ妖気が描かれていますが、まさに本書は、古今東西の妖しの書の数々と、波津ワールドとの出逢いから生まれた別乾坤といえるのではないでしょうか。巻末には懇切な「あとがき」が付されていて、幻想文学方面になじみのない読者への入門ガイド的な役割を果たしています。ぜひぜひ御一読のほどを!

▲あとがきに、こんな一コマも。(C)波津彬子
波津先生、ありがとうございます!

![]()
▲この巻には小生が「鏡花の縁」と題する巻末解説を寄稿しています。
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月16日 16:45 | コメント (0) | トラックバック (0)
早速朗報!昨夜は神田須田町の美味しいダイニングバーで、装画の金井田英津子さんとデザインの山田英春さん、編集担当の喜入冬子さん、それに小生の四人で〈文豪怪談傑作選〉の打ち上げをおこないました。
今回の刊行分が無事に発売の運びとなったお疲れさま会の予定だったのですが、直前になって『文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁』の3刷が決定。望外の祝賀会となりました!
これで〈文豪怪談傑作選〉では、川端康成集、泉鏡花集、百物語怪談会の3点が揃って3刷目――重版はさほど珍しくないものの3刷となると、昨今の出版状況ではなかなか達成できません。本シリーズが着実に浸透・定着している何よりの証左かと思います。
毎年熱心に御支援くださる読者の皆さまに、更めて御礼申しあげます。

![]()
▲鏡花流の怪談実話系作品集といった趣もある一巻です。
未読の向きはこの機会にぜひ!『鏡花百物語集』との相性もバッチリだ。
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月16日 11:57 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月15日
文豪怪談傑作選2009、堂々完成! もろもろ追いまくられていてブログでの紹介が遅れてしまいましたが、今夏の〈文豪怪談傑作選〉のトリを飾る『折口信夫集 神の嫁』が発売されました。
ご覧のように、今年の〈文豪怪談傑作選〉トリオ、堂々の揃い踏みであります。

こうして並べてみますと、今年はいずれも装画に女性の姿が、それも揃って顔の見えない女性像が描き込まれていることに気がつきますね……。
さて、思わず「ほう」と吐息の漏れそうな青天白雲をバックに、黒き女神さながらの女性が浮遊する『折口信夫集』のカバー紹介文は、下記のとおりです。
巫者に憧れ、河童と戯れ、まざまざと異界を幻視した折口信夫は、近代日本が生んだ大いなる学匠詩人にして稀有なる霊媒(ミーディアム)であった。文学と民俗の両面にわたる深遠幽暗な折口学の根底には、常に彼方への視線、人外のモノへの共感がひそめられており、それはしばしば怪談文芸の領域へと肉迫する。知られざる名作怪談「生き口を問う女」や「稲生物怪録」ほかの創作と論考を一巻に!
本巻には、通常の巻とは異なる趣向が用意されております。
巻頭を飾る、金井田英津子版「画本・稲生物怪録」の試みです。

ご覧のように、金井田さん描くキュートなモノノケたちが、折口信夫による戯曲版「稲生物怪録」の余白に飛び跳ねているのです!

怪談文芸に志す向きには必読の、折口信夫による実作と怪談論の数々を、じっくりお愉しみくださいませ。
もちろん、既刊分も合わせて、くれぐれもよろしく。
今夏の売れ行き次第で、来年も続刊できるかが決まりますので。
また、例によって御感想やリクエストなども、お待ちしております!

![]()

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月15日 12:12 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月14日
もろもろ完遂! この週末は、夏前から専念していたもろもろの大きな宿題が、一挙に完遂する大変な巡り合わせとなりました。
イベント当日の朝までかかって何とか原稿を書きあげたり、打ち上げで宿泊したホテルでも確認作業に追われたり……と綱渡り状態でしたが、愉しくもありました。
まずは、幻想文学研究家モードでの『日本幻想作家事典』最終チェック。
青息吐息の状態で、どうにかこうにか最終段階まで漕ぎ着けました。
細かいところでは色々と問題も残されているのですが(汗)、ま、そのへんは今後の課題ということで!

▲1000ページを超えるゲラの迫力を見よ!
次に、『幽』編集長モードでの、怪談ノ宴2009開催。
出演者の皆さんや関係スタッフ、そして何より雨天にもかかわらず御来場くださいました多数のお客さまのおかげで、盛況のうちに何とか大過なく開催することができましたことを、心より感謝し、御礼申しあげます。ありがとうございました!
なお、舞台美術やグッズ製作に多大な御協力を賜った天野行雄さん@日本物怪観光と山下昇平さん、パンフレット制作に御協力いただいた門賀美央子さん、そして遙か福井の地より御本人の名代として沢山の差入品を頂戴した雀野日名子さんの4氏には、特にお名前をあげて御礼を申しあげます。

▲特に右上に注目!(笑)雀野さん、御馳走さまでした。
そして文芸評論家モードでの、ウェッジ文庫版『蘆江怪談集』解説。
このブログがきっかけとなって実現した、奇蹟の復刊企画です。解説者という形で、その一翼を担わせていただき光栄でありました。
気合いが入りすぎて(笑)予定をはるかに超過する枚数の原稿を書いてしまい、サテどこをざっくり削るべきか相談かたがた、担当編集者の服部滋氏におそるおそる送稿したところ……
「通常の2倍強の分量ですけど、このまま掲載させていただきます。横紙破りのウェッジ文庫(笑)なので」
という望外のお返事が。いやー、こういう心意気、嬉しいですなあ!

▲『蘆江怪談集』原本とウェッジ文庫版『東京おぼえ帳』。
てなわけで、よううううやく一区切りつけましたので、今年後半から来年へかけての新たな仕事と企画の仕込みに入りたいと思います(もちろん新規の企画オファーも大歓迎ですので、お気軽に御相談くださいませ)。
今後はさらにパワフル(!?)に、怪談文芸やホラー・ジャパネスクに邁進して参りますので、どうか引き続き御支援を賜りますよう、謹んでお願い申しあげまする。
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月14日 15:05 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月11日
とてつもなく面白い!(笑)
えー、この写真中央に写っている怪しげなDVDは何かといいますと、いよいよ明日に迫った「怪談ノ宴2009」で披露される、全出演者の紹介映像なのですな。
制作を担当されたのは、かの京極夏彦さん、その人であります。
司会役の編集長特権で、ひと足先に映像を拝見したのですが、これが物凄い出来映え!
この乏しい素材でここまでやりますかー、というくらい、視覚効果・音響効果・ナレーションと、総てにおいてハイパーなのであります。
いやーこれを鑑賞するためだけでも会場に足を運ぶ価値あり、と断言いたします。お愉しみに!
今回はインフルエンザ対策も兼ねまして、いつもより三倍くらい大きな会場――1000人収容の大ホールを借りておりますので、お席の余裕は充分にございます(笑)。
当日券も販売しますので、首都圏にお住まいの向きで、まだチケットをお求めでない方は、ぜひ明日、ふらりと見物にいらしていただけたら幸いです。
京極さん特製映像の他にも、アッと驚く趣向が満載ですぞ。
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月11日 23:18 | コメント (0) | トラックバック (0)
「東雅夫のイチオシ棚」更新ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
大好評の「文豪怪談傑作選」の最新刊『折口信夫集 神の嫁』が遂に発売。
ラヴクラフト関連の良書が2冊。
『新編真ク・リトル・リトル神話大系』の完結巻と
ラヴクラフトが恐怖の本質について語った傑作評論『文学における超自然の恐怖』
どちらも絶対のオススメです。
そして、既に「絶対推奨本」に張り出していますが、
あの物議を醸した怪作『粘膜人間』の著者・飴村行の第2作『粘膜蜥蜴』。
想像を絶する斬新さです!

![]()
投稿者 coolmint : 2009年09月11日 18:50 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月09日
国文学界でも怪談ブーム!? 『ダ・ヴィンチ』10月号が発売中です。
小生、今月は「幽・怪談通信」コーナーに、みずから志願して(笑)書評を寄稿しております。

取りあげたのは、一柳廣孝・近藤瑞木編『幕末明治 百物語』と谷口基『怪談異譚』――近現代文学の研究者が、怪談文芸と本気で向かい合った好著2冊です。
勢いあまって(!?)同じく発売中の『小説推理』10月号の「幻想と怪奇」時評でも、『幕末明治 百物語』をメインで、別の切り口から論じております。
怪談アカデミズムの動向は、『幽』でも引き続き注目していきたいと思っています。来年あたり、何か仕掛けるかもしれません(笑)。
ちなみに今月の『小説推理』には、田辺青蛙さんのシネマ・エッセイや朱川湊人、恒川光太郎両氏の新作なども掲載されていて、読みどころ満載です。
ぜひとも合わせて御購読のほどを……。

![]()

![]()

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月09日 15:33 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月05日
怪談福袋2009!?イベント当日へ向けて、各方面で着々と準備が進められていますが(関係者の皆さま、お疲れさまです!)、吸血キッシーも、ごそごそと怪しい動きを(笑)。
なんと「怪談福袋2009」と銘打たれた、会場限定の特別ブックフェアが、急遽、開催されることになりそうです。
これは60点にのぼる『幽』関連本の中から、多彩なテーマ別にセレクトした書籍を何点かずつセットにして、お得に販売するというもの。
しかも、福袋の名に恥じぬ、アッと驚くプレミアなオマケ(参加作家のサインそのほか一点物グッズなど)が封入されることになりそうです!
小生も目下、書庫や倉庫をせっせと漁って、おまけグッズになりそうなものを物色中ですので、お愉しみにー。
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月05日 19:01 | コメント (0) | トラックバック (0)
東海道品川宿は招くよ!いよいよ一週間後に迫った「怪談ノ宴2009」ですが、当日もしくはその前後に余裕がある方は、ぜひ足を伸ばしていただきたい怪談系スポットと参考書籍を御紹介します。
会場の最寄り駅はJRおよび東急の大井町駅ですが、その東側――JRと平行して走る京浜急行線の新馬場と北品川という南北ふたつの駅をつなぐ商店街の一帯は、かつて東海道品川宿として発展した地域であり、今もわずかながら往時の面影を留めています。
この地に生まれ育った国文学者でエッセイストの岩本素白「東海道品川宿」から、怪談風情ただよう一節を引用してみましょう。

![]()
春の終りや秋の末など、空に行く雲の多い季節になると、ふと日が翳って暗くなるかと思えば、また明るくなり暗くなり、何か心の滅入るような日が多いものである。そんな時、昔のこの町の人達は、またいやな物が通りそうな日だと呟いたものだと云う。いやな物というのは、罪状を記した立て札を先にして、晒し物の首を担いだ非人たちがこの町を通るのである。ここからは鈴ヶ森の仕置場も遠くない。それにまたこの品川という宿場のはずれ、南馬ン場の奥には、当時「溜め」と呼ばれた囚人の病檻があった。(略)
南北品川の境の小さな橋を渡って、少し行くと西へ曲る横丁がある。それが南馬ン場で、むやみと寺の多い町である。明治中期頃はこの横丁のはずれがもう東海寺田圃で、田圃に沿って南へ、今の大井町駅の方へ行く一と筋道の東側を、俗に新長屋と云った。(略)私の少年時代になっても、未だ腐った出来物のように苔むした低い小さな草ぶき屋根が残っていて、気味の悪い所であった。維新前まではそこで死罪なども行われたらしい。いずれにしても陰惨な影の残っている所であった。(ウェッジ文庫版『東海道品川宿 岩本素白随筆集』所収「東海道品川宿(三)」より)
冒頭の一文をお読みいただければお分かりのように、素白は大変な名文家であり、また怪を嗜んだ人でもあったようです。右に引用した箇所以外にも、たとえば「物日や祭のひどく客の立て混んだ晩に限って現れるという、薄紫の「しかけ」を着た器量の好い女」なんぞという、鏡花小説の中から抜け出てきたかのごとき艶っぽいお化けをはじめとして、古い宿場町ならではの街角の怪異を懐かしく叙したくだりを、代表作のひとつである「東海道品川宿」の随処に認めることができるのです。
この町の隅々には未だ古い化け物が消え切らずに残っていた。今行って見ればまことに狭い町の真ん中の寺で、当時は花相撲が掛かったり曲馬が掛かったりする、法禅寺というやや広い境内を持つ寺の墓地に火柱が立つという噂、その火柱の倒れた方に大火事があると子供達はこわがったものである。また天王さまの女坂に――当時は今のように山が削られないで、左手に緩く女坂が繞っており、石段の左右には躑躅が茂っていた。そこへはお歯黒婆が出るという。また緒明横丁という新しく開けた住宅地――天王さまの北で元は御殿山続きであったのを切り開いたらしい。そこへ出る化け物は、すれ違いに勘定が足りないと呟くと云う。(前掲「東海道品川宿(九)」より)
嬉しいことに、右の文中に出て来る法禅寺や天王さま(現在の品川神社)は、今もメルクマールとして健在であり、それらを手がかりに附近を散策していると、昔ながらの路地の外れから、ひょいと古びた寺院の裏手に抜けられたり、海沿いの地であったことを示す石垣の名残に遭遇したりして、まことに興趣尽きぬことであります。

また、品川神社の広壮な神域には、都内でも有数の富士塚(山頂まで登攀可)や、「一粒萬倍」の御利益があるという霊泉が滾々と湧き出る幽暗な阿那稲荷社など、江戸の民間信仰の名残を偲ばせる史跡が点在しております。

表通りの商店街には、天ぷらの名店「三浦屋」さんをはじめ、海産物を扱う飲食店なども多いので、『東海道品川宿』を片手に、食事と散策を兼ねて探訪してごらんになることをお勧めいたします。

▲ちなみに品川宿の北端にかかる陸橋付近は、初代ゴジラの上陸地点としてあまりにも有名。
こうして周辺地図にもちゃんと記載が(笑)。怪談&怪獣ファンは此処も要チェック・ポイントだ!
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月05日 14:23 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月04日
内容見本、完成なんとか10月発売で間に合いそうな(まだ予断は許しませんが……)国書刊行会版『日本幻想作家事典』の内容見本パンフレットが、ドサッと到着しました。

▲この内容見本に、小生と国書刊行会の礒崎編集長のサインを施した特製パンフを、
怪談ノ宴2009会場で限定配布予定!礒崎ファンの皆様も、ぜひ御来場ください。
なんでも、この秋の最重点商品ということで(笑)、国書さんも気合いが入ってる模様。ありがたいことです。

紀田順一郎、金原瑞人の両氏からお寄せいただいた推薦文は、下記のとおり。
金字塔的な出版
◆紀田順一郎
東雅夫・石堂藍編『日本幻想作家事典』が、いよいよ刊行される。十八年前の『日本幻想作家名鑑』の増補改訂版だが、この間に目眩くような飛躍を遂げた幻想文学の全体像を網羅した点において、あるいは情報の詳密さにおいて、まことに画期的な内容である。
アーサー・マッケンの『輝ける金字塔』は、辺境に姿を現した、小さな、あまり注意を惹かない記号や表象に、想像外の意味が発見され、それが急速に拡大して遂には日常世界を脅かすにいたるという筋立てであるが、考えるまでもなく、これは幻想文学自体のアナロジーでもある。この十数年間、ホラー、ファンタジー、メルヘンを中心に伝奇小説、SFなど、かつては境域の文学にすぎなかったものが、幻想怪奇文学という概念に収斂し、それによって大きな意味と存在感を獲得、新たなる創造世界をリードするにいたった。本書はその格好の見取図である。広く現代文学に関心ある読者に、座右の書として推奨したい。
21世紀までもつ傑作
◆金原瑞人
18世紀、ノヴァーリスは人類のあらゆる知識を網羅した『百科全書学』を作ろうとして、ほとんど構想の段階で挫折したけど、21世紀、日本のあらゆる幻想作家を網羅した事典はこの通り実現してしまった。幻想文学愛好家にとって、かゆいところに手が届きっぱなしの一冊。労作というよりは傑作というべきだろう。この『日本幻想作家事典』を増補・改訂していけば、21世紀末まで十分もつと思う。東雅夫と石堂藍が、現代日本にいて初めてなしえた奇跡を、心から言祝ぎたい。
いやはや、身に余るお褒めの言葉を頂戴して、恐縮至極でありまする。
ただいまビーケーワンでも、特典付き予約受付中。いささか値が張りますが、次の改訂版刊行は20年後くらいの予定かと思われますので(笑)ぜひこの機会に購入を御検討くださいませ。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月04日 14:01 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年09月02日
粗筋集ではありません! 写真家で、『月の家族』『ケンムンの島』をはじめとする多くの著書でも知られる島尾伸三さん――幻想文学読者ならば、あの島尾敏雄の御子息として先刻御承知でしょう――が、8月30日付『西日本新聞』朝刊に「怪!百人百話で残暑お見舞い」と題して、『文豪てのひら怪談』および「てのひらムーヴメント」を紹介する、長文のレビューを御寄稿くださいました。
(同社のウェブサイトでも閲覧できます。http://www.nishinippon.co.jp/nnp/book/review/20090830/20090830_0001.shtml)
阿刀田高「白い腕」、江戸川乱歩「こわいもの」、明恵上人・澁澤龍彦訳「人形変じて女人となる」、稲垣足穂「追っかけられた話」、泉鏡花「人妖」、知里真志保「へっぴりおばけ」など、夏の夜の小話にもってこいの数々が星のごとく輝きます。
……といった具合に、とても好意的に取りあげていただき、感謝に堪えません。
ただ、「過去の小説の粗筋だけを書き出して」「勝手に筋だけ抜いたような作りに、文体を大切にする引用された文豪たちにしてみるなら、憤懣(ふんまん)やるかたないかもしれませんが、これは便利です」等々、本書の内容を、粗筋を抜き書きした本というふうに紹介されているのは、まったく事実と異なります。
『文豪てのひら怪談』を御一読いただいた方ならお分かりでしょうが、本書の編纂コンセプトは、和漢の文芸作品の中から800字前後に収まる文字数の作品を、全文再録もしくは一部を抄録することにあります。
抄録の場合も、あくまで該当部分を丸ごと収録することにこだわり、途中の文章を略したりなどは一切しておりません。
ましてや、粗筋だけを勝手に抜き書きしたような収録作は、一篇も含まれておりません。
これひとえに、収録作家それぞれの文体を敬愛し尊重し、原文の妙味をそのままに味わっていただきたいという編纂趣旨によるものです。
せっかく好意的にお取りあげいただいたものに異を唱えるのは甚だ心苦しいのですが、アンソロジストとして、ここは譲れない一線ゆえ、また、これからお買いあげくださる読者の皆さまに誤解を与えるのは忍びないこともあり、あえて一言させていただきました。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月02日 08:04 | コメント (0) | トラックバック (0)
パンフレットが凄いことに! いよいよ9月に入り、『幽』怪談ノ宴2009の準備も急ピッチで進んでおります。
今回は久しぶりに、当日会場でしか手に入らない特製パンフレットも制作・販売することになりまして、先日もお伝えしたように「江戸東京 城南怪談図会」と題する怪談地図も収録されます。
パンフレットのデザイン総指揮は、もちろん祖父江慎さん。
編集μや山下昇平画伯を交えての打ち合わせが先日おこなわれたのですが、次々に祖父江さんから打ち出される斬新なアイディアにより、実にとんでもないパンフが誕生することになりそうです。
ちょいと制作途中の画像を覗いてみますと……

これはまさに絵地図! 山下画伯、渾身の大作です(笑)。
近寄ってみると……

会場となる大井町きゅりあん周辺には、どこかで見たような容貌の妖かしたちが!(笑)
他にも、出演作家たちへの特別アンケートとか、メディアファクトリーの怪談本の歩みが画像データとともに一望できる資料集など、小冊子ながら、お値打ちの内容となっております。
なにしろ会場でしか入手できませんので、欲しくなった方は、万難を排して9月12日、大井町きゅりあんへ、ゴー!(当日はパンフ制作担当の編集μが、花売り娘ならぬ怪しいパンフ売り娘と化して会場でスタンバイするとかしないとか……!?)
http://www.mf-davinci.com/yoo/index.php?option=com_content&task=view&id=1453&Itemid=35
▲チケットの御購入方法など、詳細はこちらから!
投稿者 東 雅夫 : 2009年09月02日 07:29 | コメント (0) | トラックバック (0)








