« 2009年10月 | メイン
| 2009年12月
»
2009年11月29日
鬼が笑いそうな話とか 『幽』の校了明けには毎度のことなれど、いま机上の正面には、宮部みゆきさんの大作『楽園』が、右手には『山田野理夫 東北怪談全集』のゲラが、左手には『鏡花全集』その他が、机の下には田辺青蛙『魂追い』(解説は恒川光太郎!)のゲラが、手ぐすねひいて待ちかまえているのであった……嗚呼。

![]()
上記は緊急の締切仕事だが、来年へ向けて鬼が笑いそうな打ち合わせも続々と。
書店さんミーティングの前には、本郷の角川学芸出版にうかがい、『江戸東京 怪談文学散歩』に続く書き下ろし単行本企画の打ち合わせを。
詳細はまだ公表できる段階ではないのだが……やっぱり東北に呼ばれてるのか、俺(笑)。この冬は頻繁に「はやて」や「やまびこ」のお世話になりそうで、それはそれで愉しみではある。
ひょんなことから別件のアンソロジー企画も提出することになり、こちらも実現したら嬉しいこと限りなし。

![]()
一方、ポプラ社の斉藤〈祝ダイナー3刷!〉尚美さんからは、てのひら怪談シリーズについて、海外の版元から翻訳の打診があった旨、連絡をいただく(最近、海外づいてるのか、俺!?)。
いろいろクリアすべき問題もあるようなので、先行きはまだ不透明だが、関係者の御理解・御協力を得て実現できたら、これまた愉しいことになりそうである。
斉藤さんからは、てのひら怪談とは別立てのアンソロジー企画の御用命も頂戴していて、これも来年お目にかけられたら幸いなり。

![]()
ちなみに斉藤さんの豪腕発揮で(笑)驚くべき早さで単行本にまとまった平山夢明さんの長篇『ダイナー』は、怪談でも幻想怪奇でもないけれど、物語に身をまかせて一気呵成に突っ走る快感を満喫させてくれる、凄味のある傑作だった。
こういう極上のドライブ感を味わわせてくれる才能は、近年では小説よりも漫画や映画の分野に輩出している気がして(ちょうど必要あって藤田和日郎を読みかえしたりしていて余計にそう感じたのかもしれんが)危機感を抱いていたのだが、まだまだ小説も捨てたもんじゃないぞという嬉しい手応えを感じさせてくれたことであるよ。
本物のエンターテインメントとはいかなるものか、読者を愉しませる書き方とはいかにあるべきかを会得するためにも、必読だろう。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月29日 16:04 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月28日
『怪談実話系3』も始動!ちなみに『幽』関連出版物の新春第1弾は、大好評シリーズ展開中の『怪談実話系3』――今回から編集担当が、多忙すぎるにも程がある編集〈舞台監督〉Rから新鋭編集μにバトンタッチされ、何かこう清々しい気分で始動した次第である(笑)。
今回の目玉は、夏の幽イベントの打ち上げ旅行で宿泊したホテルの巨大浴場で起きた仰天戦慄の怪異体験を、事件の当事者である怪談三姉妹(加門七海、立原透耶、伊藤三巳華)+宇佐美まこと@三姉妹と同室が、それぞれの視点から描く迫真のドキュメンタリー競作特集「恐怖の竜宮城ナイト(仮)」。
実力派の4作家がひとつの事件をめぐり競作するというだけでも空前の企画だが、点景として登場する(かもしれない)脇役陣も超豪華――京極夏彦、平山夢明、木原浩勝、安曇潤平、黒史郎、水沫流人、勝山海百合、真藤順丈、松村進吉、山下昇平……さらには小生や吸血キッシー、そして何故か脱衣場と間違えて下駄箱で全裸となっていた某Rも、もしかしたら顔を出すかも(笑)。
その他の執筆陣にも、要注目。イベントの舞台上でも予告したように〈超怖〉の法燈を継承する新星・松村進吉のMF初見参となる衝撃作あり、あっちの巨匠がこっちの巨匠の実話を作品化する驚きの話題作あり、こ、こんなナマナマしくもシャレにならない体験談を速攻作品にしちゃっていいんですかと思わず確認してしまった仰天作あり、アッと驚く取っておきの隠し球もあり……「1」「2」とはまた趣を変えた、清新なラインナップを準備中。
2月下旬発売へ向けて目下、参加作家諸氏は鋭意執筆中(中にはすでに入稿された方も!)ゆえ、これまた御期待あれ!

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月28日 23:39 | コメント (0) | トラックバック (0)
書店の皆さんと語らう 『幽』次号の入稿作業真最中の某日、いつも何かとお世話になっている首都圏大手書店さんの文芸書担当者諸氏を中心とする有志をお招きして、メディアファクトリーの会議室で開催された特別ミーティングに、小生も『幽』編集長モードで出席する。
今回の議題は、来春発売が予定されている京極夏彦さんの短篇集『冥談』と、ダ・ヴィンチ文学賞を受賞した朱野帰子さんの『マタタビ潔子の猫魂(仮)』の2冊である。
本と読者が出逢う最前線の現場で、日々奮闘されている書店の皆さんの率直な御意見をうかがい、本づくりやパブリシティに活かそうという目論見だ。
小生は大学時代の4年間、地元横須賀の平坂書房本店でアルバイトをしていた。店の奥で仕入の補佐をすることが多かったので、本の流通に関わるあれこれを実地に学ばせていただいた。
いや、出版に限らず、プレ社会人一年生として、人生に必要なことの多くを平坂書房さんで学ばせてもらったように感じている。
大学卒業後、青銅社に勤務していたときも、独立して『幻想文学』を起ちあげたときも、新刊を出す前には首都圏の主要書店を沿線ごとに営業して歩いたものだ。
おかげで、東京の主だった駅前について、ひととおりの土地勘を得ることもできた。新刊書店営業の合間に、古書店探索にも余念がなかったのはナイショだが(笑)。
さすがにここ十数年は、仕事で書店さんに顔を出すような機会がほとんどなくなってしまったので、今回のミーティングはもとより、近くのダイニングバーで開かれた懇親会の席でも、古くからお世話になっている八重洲ブックセンター本店の望月店長さんをはじめ、現場で活躍されている皆さんのお話を久方ぶりに拝聴させていただき、とても有意義なひとときとなった。
なお『冥談』は3月上旬発売で制作進行中ゆえ、乞う御期待!
同書を核とする「怪談文芸=ダークサイドの文学」を、来年はますます盛り上げていきたいものである。
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月28日 14:53 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月26日
『Kaiki: Uncanny Tales from Japan』いよいよ第1巻が発売に!前々から触れております小生編の英訳日本怪奇小説アンソロジー『Kaiki: Uncanny Tales from Japan, Vol. 1 - Tales of Old EDO』が、ついにというか、ようやくといいますか、某アマゾンで予約が始まっています。

米国アマゾンではすでに発売されているようでして、著名なアンソロジスト/評論家のロバート・ワインバーグ氏が下記のとおり、驚くほど好意的なレビューを、わざわざ寄稿してくださっています(感激)。
KAIKI: UNCANNY TALES FROM JAPAN Volume 1 - Tales of Old Edo is a wonderful collection of weird and unusual stories written by Japanese authors from the past several hundred years. This book is must reading for anyone interested in the history or development of horror and fantastic literature. Before publication of this book, next to nothing was known about Japanese weird fiction. Because of the difficulty translating stories from Japan, very few supernatural or occult stories were reprinted in the United States. This book, the first of a series of three, will hopefully correct that oversight. For fans of the bizarre and unusual, this book is a rare treat. I was lucky enough to have read this volume before publication and write the introduction to it. Having read thousands and thousands of horror and supernatural stories in my many years of editing, I assumed these stories would be typical weird tales, nothing very unusual. I was utterly amazed at the quality and strangeness of the fiction. The tales in this book are very, very different than British, European, or American horror. I won't spoil any of the stories by describing the plots, but I will mention that my personal favorite was "Where Had She Been" by Kyogoku Natsuhiko. What a wonderfully weird story! This book is a gem and obviously highly recommended.
どうやら京極夏彦さんの「どこに居た」(『旧怪談』所収)が、たいそうお気に召した模様ですな(嬉)。
小生としても、いわゆる「Jホラー」映画のハリウッド上陸といった昨今の状況を横目で眺めるにつけ、真に優れた本物の日本ホラー/怪奇小説が海外に紹介され、その真価が認められる必要性をかねてから痛感しておりましただけに、今回の試みが成功することを願ってやみません。
追って国内発売された暁には、ぜひとも御購読を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。
英語で読むホラー・ジャパネスクってのも、なかなか乙なものですぞ!

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月26日 23:53 | コメント (0) | トラックバック (0)
『幽』怪談文学賞の選考会を終えて とっくに旧聞に属してはおりますが、去る11月9日夕刻より、新宿の某ホテル会議室にて、第4回『幽』怪談文学賞の選考会が開催されました。
今回から新たに、皆さまもよく御存知の南條竹則氏に選考委員に加わっていただくことに。小生と南條氏とは共に1958年生まれ、大学時代からの知友でありまして、東大に在籍していた南條氏が『金羊毛』創刊号(1980年6月発行)を見て、早大の幻想文学会に参加して以来の付き合いです。
翌81年3月(私が大学卒業した年ですな)発行の『金羊毛』2号では早速、南條氏鍾愛の英国作家リチャード・ミドルトンの特集を組むことになりました。
まさかあれから30年近く経って、よりにもよって怪談の賞の選考に、こうして共に携わることになろうとはねえ……(感慨)。
悠揚迫らぬ筆致のファンタジー小説から平井呈一翁の衣鉢を継ぐかのごとき練達の怪奇小説翻訳まで――とりわけ欧米と中国の怪談文芸に造詣深い南條氏の加入によって、『幽』怪談文学賞の選考は、和漢洋の怪談全般にわたり抜かりのない布陣を敷くことができるようになりました。
これは他の文学賞には類を見ない、本賞だけの特色であり強みではないかと考える次第であります。
選考会の模様は、まもなく発行される『幽』12号にリポートが掲載されますので、是非そちらを熟読していただきたいと思います。
全体の印象としては、短篇よりも長篇作品について、厳しい意見が集中したように感じます。そのことは、短篇部門からWで大賞が出たことからも裏づけられるでしょう。
京都の町家を舞台に、グロテスクとアラベスクの妖奇なホームドラマが展開される、神狛しず氏の「おじゃみ」。
沖縄の民宿を舞台に、奇妙にして密やかなサイキック・バトルが繰りひろげられる、谷一生氏の「住処」。
どちらも過去の受賞作とは異質な魅力を湛えた逸品です。
もちろん長篇部門のレベルも、以前に較べると格段に上がってはいるのですが、やはり怪談文芸としての方向性の点で、疑問符のつく作品が目につく結果となりました。
来年こそは、選考委員に「参りました」と云わせるような(!?)長篇応募作が出現することを願ってやみません。
なお今回から新たに「佳作」が設けられました。
これは、大賞・優秀賞・特別賞には「未だし」ではあるけれど、落選とするには忍びない将来性を感じさせる作品と書き手に対して、今後のさらなる研鑽を奨励するために授与されるものです。
長篇部門佳作「蛸地蔵」の藤原葉子氏、短篇部門佳作「葦の原――ありふれた死の舞踏」の金子みづは氏――お二人の今後の精進に大いに期待したいと思います。
選考会終了後は、食通としても知られる南條氏にチョイスしていただいた新宿の中華の名店(でもリーズナブル!)で打ち上げを。美味しい料理に一同、大いに舌鼓を打ちましたとさ。
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月26日 05:15 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月25日
『幽』12号(ほぼ)校了!鏡花研究会大会と鏡花文学散歩(詳しくは追ってまた。愉しかったー)終了後、金沢から富山の氷見に流れて、小生以外に泊まり客が無い……どころか深夜は宿の人間すら不在となる(らしい)海辺の民宿に単身こもって『幽』次号のゲラ読みに集中する。
トンネルを抜けた国道沿いにぽつんと建てられた一軒宿、窓の真下はすぐ海、富山湾の彼方に聳える立山連峰まで見晴らす限り海また海、おまけに宿の前で国道が急カーブしており、洗面所の棚にはなぜか盛り塩があるという……『幽』のゲラを読むには最適のロケーションであったことよ。

▲部屋の窓から居ながらにして眺める夜明け前の富山湾。
水平線上に見えるのは雲ではなくて立山連峰だ!

▲美事な御来光に『幽』次号の成功を祈念する。
東京へ戻ったら、連休前に原稿が届いていなかった、あの方とかこの方とかその方も無事に入稿完了とのことでホッとひと安心。
……というところで、いよいよビーケーワンでの予約も始まった『幽』第12号の特集ラインナップを!
【第一特集】稲川淳二スペシャル
新作書き下ろし怪談「隣の奥さん」稲川淳二
対談「思いやりと気配の怪談」京極夏彦vs稲川淳二
特別エッセイ「私と稲川さん」岩井志麻子/伊藤潤二/大野尚休/平山夢明/つまみ枝豆
立体構成「稲川怪談クロニクル」朝宮運河+秘蔵写真多数
論考「怪談「生き人形」の衝撃――稲川淳二とその時代」東雅夫
描き下ろし稲川漫画「怪奇現象のはなし」永久保貴一
書き下ろし稲川小説「聖域」雀野日名子
日本怪談紀行「稲川怪談の故地を訪ねて」東雅夫
怪談巡礼印象記「水と炎のボーダーランドにて」加門七海
【第二特集】決定! 第1回『幽』怪談実話コンテスト&第4回『幽』怪談文学賞
第1回『幽』怪談実話コンテスト選考会リポート 加門七海/木原浩勝/平山夢明/福澤徹三/東雅夫
受賞作掲載「黒四」巫林檎
第4回『幽』怪談文学賞選考会リポート 岩井志麻子/京極夏彦/高橋葉介/南條竹則/東雅夫
受賞作掲載「おじゃみ」神狛しず/「住処」谷一生
【第三特集】エロ怖い怪談(書き下ろし競作)
「悪魔の帽子」宇佐美まこと
「蟷螂と擂り粉木女」黒史郎
「両国水妖譚」長島槇子
表紙とグラビアは、こーんな感じになる模様(笑)。

ビーケーワンでも特典付き先行予約が始まりました。
今回も皆さまの御予約をお待ちしております!

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月25日 21:02 | コメント (0) | トラックバック (0)
栗田ひづるさん朗読会以前『幽』のイベントでも怪談の朗読をお願いした声優・栗田ひづるさんの朗読会が、下記の日程で開催されます。
ノラ茶話会 Vol.10『栗田ひづるの朗読』
【出演】栗田ひづる(朗読)
【日時】11月28日(土)開場13:30 開演14:00
【木戸銭】1,500円(ワンドリンク)
【演目】「大鐘の霊」ラフカディオ・ハーン著、田代三千稔訳(『続怪談・奇談』角川文庫より)
「白」芥川龍之介著(『トロッコ・一塊の土』角川文庫より)
【会場】ギャラリーバー「ノラや」
〒166-0003 東京都杉並区高円寺南3-69-1 電話 03-3310-2020
※お手数ですが下記の「ノラや」ホームページにて、事前予約をお願いいたします。
http://www.noraya.jp/
※お電話でのご予約も下記にて承っております。
電話03-3310-2020(営業時間:19:00―25:00 定休日:毎週水曜日・日曜日)
ハーンの怪談はもちろんのこと、龍之介の童話「白」も、怪談ではありませんが、一読(一聴?)忘れがたい、不思議な感銘を残す佳品です。ナイスなチョイスですな。
お時間のある方は、ぜひ!
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月25日 00:54 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月24日
「東雅夫のイチオシ棚」更新ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
『幽 第12号』が待望の予約開始。今回の第一特集は何と「稲川淳二スペシャル」。
ご購入の方には、東雅夫による特製メルマガを配信致します。
神話や伝説、ファンタジーのお好きな方にはこの3点がオススメ。
トニー・アラン著 『世界幻想動物百科』 、ジョナサン・エヴァンズ著 『ドラゴン神話図鑑』
ジョイス・ハーグリーヴス著 『ドラゴン 神話の森の小さな歴史の物語』。
挿入図版もきれいです。
そして三島賞受賞作家・小林恭二の『麻布怪談』にもご注目。

![]()
投稿者 coolmint : 2009年11月24日 21:53 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月21日
アンソロジスト冥利ポプラ社の斉藤さんから『新刊ニュース』11月号(トーハン発行)が送られてきました。

開けてビックリ。「人気の著者がオススメする この秋読みたいこの3冊!」というアンケート特集の中で、なんとまあ、北村薫・山田太一の両氏が、小生編『文豪てのひら怪談』を、それぞれ3冊の中にセレクトしてくださっているではないですか!
北村氏は『文豪てのひら怪談』について、「編者を(略)読む楽しみ」と、実にウィットあふれるコメントを記され、山田氏からは「よくまあこんなことをなさったなあ、と編者に敬意。恐怖、驚異、不可思議の100編です」と、これまた身に余るコメントを頂戴しました。
北村氏も山田氏も、本業のみならずアンソロジストとしても、それぞれ卓越したお仕事を手がけていらっしゃることは御存知の向きも多いでしょう。
敬愛する先達でもあるお二人に、『文豪てのひら怪談』を認めていただけたことは本当に光栄ですし、心底、嬉しく思います。アンソロジスト冥利に尽きるとは、このことです。
北村薫さん、山田太一さん、ありがとうございました。

![]()

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月21日 15:57 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月16日
1888年の鬼狂言『幽』次号の入稿作業も、いよいよ大詰めに。小生も、一特の稲川淳二論や「日本怪談紀行」「怪談マガジン採訪」の原稿を次々と書きあげ、ホッと一息ついたところです。とはいえ今週末をはさんで校了作業が待ちかまえているうえに、週末には金沢で開かれる鏡花研究会の大会に出席するため、予断を許さない状況は相変わらずなのですが……(汗)。
さて、光文社古典新訳文庫版『ジーキル博士とハイド氏』の見本が届いております。

小生は解説を寄稿しています。
古典新訳文庫の解説といえば、たいていは翻訳者御自身か、その分野を専攻する学者さんが執筆するのが通例ですな。
で、英文学者でもない小生のもとに依頼が舞い込んだということは……当然のことながら、そっち方面からの解説を所望されているのであろうということで(笑)、リクエストにお応えするべく色々と趣向を凝らしてみました。
なにせ『ジーキル博士とハイド氏』といえば、過去にも山のように各社から翻訳が出ており、それぞれに解説が付されてもいるわけで、ここはイチバン、今まで誰も取りあげていない大ネタはないものかと関連文献を渉猟するうち……興味深い資料に逢着しました。
福沢諭吉門下のジャーナリストを振り出しに、実業家、茶人として多彩な業績を遺した高橋義雄が、1890年(明治23年)に上梓した『英国風俗鏡』に収録されている「鬼狂言」という一文です。
実はこれ、田鍋幸信編『日本におけるスティーヴンスン書誌』に照らせば、『ジーキル博士とハイド氏』に言及した本邦初の文献でありまして、滞英中の著者が、当時ライシアム劇場(『ドラキュラ』のブラム・ストーカーが支配人を務めていた劇場でもあります)で公演されていた『ジーキル博士とハイド氏』の舞台、すなわち「鬼狂言」を見物したときの印象をつぶさに記した観劇記なのであります。
なかなかユニークな着眼が認められる、歴史的にも意義ある面白い文献なので、解説のおしまいに原文を丸ごと復刻収録させてもらいました(小生の型破りな申し出を、ふたつ返事で御快諾くださった担当編集者のH氏に感謝!)。
小生のヨタ解説はさておき、この「鬼狂言」復刻だけでも御高覧の価値ある一巻になったのではないかと思います。
あ、もちろん村上博基氏による清新で親しみやすい新訳が、本書最大の「売り」であることは、いわずもがな、ではありますが(笑)。
ひとつ蛇足を付け加えておきますと、「鬼狂言」の前の章は「羅生門」(凄いネーミングセンスだよ)と云いまして、なんとこれ、当時まさにロンドンで連続していた「切り裂きジャック」事件に関するリアルタイムのリポートなのです!
おそらく同事件に関する国内初の文献ではないかと思うのですが、そのへんはリッパロロジストの皆さまに確認していただければ幸いなり。

![]()
前後関係を整理しておきますと、先に『ジーキル博士とハイド氏』が出版され、それが戯曲化されて上演されている最中に、切り裂きジャック事件が続発した……ということになります。
そんなわけで、近ごろ話題の『フロム・ヘル』で、切り裂きジャックとその時代に関心を抱いた人にとっても、本書は必読の一冊であることを申し添えておきましょう!

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月16日 07:41 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月15日
映画『吸血』一般公開が決定!以前このブログでも紹介した吉本直紀氏の監督作品『吸血』が、下記の日程で一般公開されることになりました。

独特な映像美学で、ジャパネスクな吸血鬼幻想を追求した意欲作です。
是非この機会に、御高覧のほどを!
【日時】
第1回 11月14日(土)開場16:30―/上映17:00―
第2回 11月15日(日)開場16:30―/上映17:00―
【会場】すみだリバーサイドホール ミニシアター
東京都墨田区吾妻橋1―23―20
【料金】1000円
※詳しくは『吸血』ホームページ http://kyuketsu.is-mine.net/ を参照。
※会場の都合上、前売予約制とさせていただきます。
※下記のアドレスに来場日と氏名、人数を明記のうえ送信してください。両日とも当日午前11:00まで受け付けております。
予約受付メールアドレス stavrosfilm@gmail.com
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月15日 04:13 | コメント (1) | トラックバック (0)
2009年11月14日
「東雅夫のイチオシ棚」更新ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
ル=グウィンの傑作ファンタジー『ラウィーニア』が遂に発売!
東雅夫の解説も光る、光文社古典新訳文庫版『ジーキル博士とハイド氏』。
評論では、小野 俊太郎著『フランケンシュタイン・コンプレックス』にご注目を。
『澁澤龍彦日本作家論集成』も読み逃せません。
人気絶頂の桜庭一樹最新作『製鉄天使』、設定のユニークさにシビレます。
そして綾辻行人の待望の新刊2点。
学園ホラー『Another』と『京都魔界地図』

![]()
投稿者 coolmint : 2009年11月14日 14:43 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月09日
「快遊展」絶讃怪催中!『妖怪文藝』や『響鬼探究』をはじめとして小生も多々お世話になっている天野行雄@日本物怪観光さんと、『てのひら怪談』文庫や学研クトゥルー計画ほかでこれまたお世話になりっぱなしの山下昇平さん――現代日本の妖怪/怪談アート・シーンを代表する「旬」なアーティストというべきお二人の合同展示会が、下記の日程・場所で開催中です。

天野行雄+山下昇平「快遊展」
天野行雄と山下昇平の/自分たちが遊ぶための/適当モノオキ
【開催期間】2009年10月14日(水)―2009年11月9日(月)
【開館時間】平日9:00―20:00/土・日11:30―19:00
※定休日 火・木定休
【開催場所】東京中野 G*cafe
〒164-0001 東京都中野区中野3-48-21 CMD+Gビル1F
電話03-5385-2982
ホームページ http://www.gcafe.jp/pc.html
先日の『幽』怪談ノ宴でも、舞台美術にロビーアートに物販グッズにと、本当にフル回転で、文字どおり献身的な御協力を賜ったお二人の卓抜なアートワークを、身近なスペースで体感していただける催しです。
ぜひ皆さま、お誘い合わせのうえ御来場のほど、お願い申しあげます!
【追記】先ほど天野山下さん(これってサイクロンジョーカーとかルナメタルとか、あんな感じですか!?)からいただいたコメント中に注目の最新情報が! これは気になるぞー!
快遊展特別メニュー『お化けプリン』登場!
人魚&ぬっぺっぽう
土日限定 1日各5食

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月09日 19:33 | コメント (1)
2009年11月08日
サプライズ続きのホラ大授賞式 巡礼団取材の翌夕は、東京會舘で開催された第16回日本ホラー小説大賞の授賞式に出席。
会場に着くと程なく、今回の受賞者による挨拶が始まった。
大賞の宮ノ川顕氏は、年長者らしい落ち着いた、しかしヒトクセありげな(!?)物腰で、受賞決定後、東京駅で不審尋問を受けた際、職業を問われて「小説家です」と応じ、事なきを得た逸話を披露。
ユーモラスな中に作家デビューの念願を果たした慶びをにじませた、洒落た味わいのスピーチであった。
ちなみにたまたま小生のすぐ近くに、不審尋問にかけては業界随一というべき福澤徹三さんが立っていらしたので、おかしきこと限りなし。

![]()
続いて登壇した短篇賞の朱雀門出氏は、受賞作のタイトルが「寅淡語怪録」から「今昔奇怪録」に変更された背後に、実は怪異現象の頻発がありまして……と、単刀直入に怪談話を語り始めるではないの。(こ、これはッ!?)と内心、舌なめずりする怪談専門誌編集長(笑)。
受賞決定後、次々と朱雀門氏の御一家を見舞った変事の数々が明かされるたびに、聴衆からどよめきが起き、会場が異様な興奮に包まれた直後、ポーカーフェイスで「と、いうのはフィクションでありまして」と鮮やかに落としてみせた手際に、感心させられることしきりであった。
ホラ大受賞作家は数あれど、授賞式のスピーチで「実話にもとづく創作怪談」を披露してみせた新人は、他にない。見上げた怪談作家魂ではないか。

![]()
サプライズは、こればかりではなかった。
角川歴彦理事長から、ホラ大4人目の選考委員として、『黒い家』『新世界より』の貴志祐介氏が新たに加わることが突如発表され、これまた会場からどよめきが起きる。
さらには、角川文化振興財団主催の「山田風太郎賞」創設の報告も。赤川次郎、京極夏彦、桐野夏生、重松清、筒井康隆という特濃な選考委員の顔ぶれに、こちらも期待大である。
パーティの席には、なぜか「幽」や「てのひら」関係者が、あっちにもこっちにも(笑)。

▲祝〈粘膜〉シリーズ絶好調の飴村行さん(左)と、祝二世誕生な黒史郎さん(右)。
その背後にも、どこかで見たような顔が……(笑)。

▲マリ・イラストリアスのコスプレをした田辺青蛙さん(左)と、コスプレではない福澤徹三さん(右)という、なんともはや形容を絶する(笑)取り合わせの2ショット!
しかし肝心の受賞者の写真を撮りそこなうとは……。
祝賀パーティと二次会では、受賞された御両人(長篇賞の三田村志郎氏は所用で欠席)や、来年から『幽』で待望の小説連載をお願いすることになっている某氏(誰かな誰かな!? 乞御期待!)をはじめ、多くの方々に御挨拶させていただいた。
新しい編集者も加わり、いろいろと意欲的に新展開を模索している感じが伝わってくる角川ホラーの今後が、大いに愉しみである。
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月08日 18:24 | コメント (0) | トラックバック (0)
水天宮前にて
水天宮前の交差点に面した某喫茶店は、二階窓際の席から斜向かいの水天宮さんが一望できる好立地で、おまけにいつも程よく空いていて、しばしば原稿書きに利用させていただいているのだが、たまたま下記で紹介した種村季弘さんの『江戸東京《奇想》徘徊記』を参照しながら「巡礼団」の原稿を書き進めていたら、次の一節に目が留まった。
水天宮のお宮本体は階上にあって、ブリヂストンタイヤの創業者の寄進した獅子の石像に護られた石段を登って行かなければならない。そこに行くまでの表通り地上一階に、駄菓子屋だの、おでん屋だの、おもちゃ屋だのが何軒か店を並べている。水天宮というとまずあの小店を思い浮かべ、それから千歳飴の紙袋をぶら下げた七五三の子供たちを思う。つまりわたしの勝手な分類では、水天宮は子供の領分ということになるのだ。
(種村季弘『江戸東京《奇想》徘徊記』所収「人形町路地散歩」より)
そこまで読みさして、ふと目を上げれば、水天宮前を行き交う七五三の親子連れの姿が。
そうか、もう七五三の時季なのか……と不思議な偶然をゆかしく思いながら、原稿書きに戻る。
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月08日 15:27 | コメント (0) | トラックバック (0)
稲川怪談の故地を歩く 降霊、じゃなくて恒例の『幽』怪談巡礼団。今回は第一特集「稲川淳二スペシャル」にちなんで、稲川さんが生まれ育った恵比寿から渋谷、中目黒方面の探訪である。
この一帯は、南を流れる目黒川と北を流れる渋谷川に挟まれた丘陵地帯であり、それゆえ「坂」や「橋」、「辻」や「塚」といった怪しい境界領域のメルクマールがそこ此処に点在する、怪談的にはなかなかオイシイ地域でもあるのだ。

▲イナジュンゆかりの馬頭観音
恵比寿銀座の商店街を抜けてすぐ、目黒方向へ登る坂の途中、馬頭観音の古祠が今も路沿いに残る辺りに、稲川さんが生まれ育った家があったという。
坂を登り切ると早速、雰囲気たっぷりの古跡に遭遇。

▲別所坂の上で。右手に見えるのは庚申塔群。
そう、ここはかつて「目黒の新富士」と呼ばれた景勝地で、丘の上にはミニチュア版の富士山が築かれ、富士信仰の一大拠点となっていたのである。

▲富士の上から富士を眺めるという、この奇計よ!
しかも同所の地下からは、富士講信者が、富士の胎内洞窟を摸して建造した地下遺跡が発見されているのだとか……なんだか香山滋の『怪異馬霊教』を彷彿せしめるようなエピソードではないか!
そして目黒側へ下る急峻な「別所坂」で、われわれが目にしたものは?

▲これか? これなのか!?
『幽』第12号の怪談巡礼団に、御期待ください!

![]()
▲目黒新富士界隈については、タネムラ大人に達意の探訪記がある。
ぜひ御一読を。
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月08日 03:20 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月07日
国文学研究と怪談といえば…… 昭和文学会が編集発行する研究誌『昭和文学研究』第59号の「研究動向」コーナーに、国文学者の清水潤氏が「ホラー」という括りで研究展望を寄稿されています。
お堅い学会誌に「ホラー」などという項目が立てられたこと自体、画期的ですが(黒幕はどうやら某一柳氏の模様/笑)、冒頭いきなり「ホラー小説のブーム的様相を牽引する存在」として小生の名前が挙げられて、「ホラー・ジャパネスク」とか「文豪怪談」の文字が躍っているのには、真に驚愕かつ恐懼いたしました。
他にも〈ナイトメア叢書〉の業績や高橋敏雄・谷口基両氏の批評活動についてなど、近年の国文学界におけるホラー・ジャンルへの関心の高まりが手際よく紹介・分析されています。
ちなみに清水氏は、先日ひらかれた小生の明大講演会にわざわざお運びいただき、抜き刷りを御恵与くださいまして、これまた恐縮至極でした。
実はその前に、チーム猛士・名古屋支部の威吹鬼こと島田氏からも情報をいただいており、先日の座談会の席で一柳氏からもコピーを頂戴するというトリプルな事態に(笑)。皆さまの御厚意に深謝です。
怪談とかホラーをキイワードに国文学研究を志向される方には必読の文献ですので、機会があれば御高覧を賜りたく。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月07日 11:38 | コメント (0) | トラックバック (0)
2009年11月06日
【速報】第1回『幽』怪談実話コンテスト選考会、開催される!すでにウェブ幽でも速報されているように、5日午後4時よりメディアファクトリーの会議室にて、第1回『幽』怪談実話コンテスト選考会が開催された。
これまでも『幽』では怪談実話の振興に力を入れてきたが、さらなる実話シーンのレベルアップ、〈新耳袋〉や〈「超」怖い話〉の次代を担う才能輩出のためには、やはり斯界の第一人者たちを選考委員に迎え、豊富な経験と実績に裏打ちされたプロの眼で評価をおこなう、実話怪談に特化したコンテスト開催が不可欠だろうと考えた次第である。
選考委員として御参集いただいたのは、加門七海、木原浩勝、平山夢明、福澤徹三、そして小生の5名。果たしていかなる選考会となるものか、期待と不安が交錯するなかフタを開けてみれば……
ブンまわす平山夢明!
ツッコむ木原浩勝!
キレる加門七海!
苦笑する福澤徹三!
まとめまくる東雅夫!
……と、いうわけで、なかば予想されたとおり、選考会そのものが一種のエンターテインメントと化していたような!?
その一部は『幽』12号に大賞作品とともに掲載されるが、来年刊行予定のMF文庫版実話コンテスト作品集に、全長版を併録しようかな、とも思ったり。
来年の怪談実話シーンは、ますます面白くなりますぞ!

![]()

![]()

![]()

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2009年11月06日 19:39 | コメント (0) | トラックバック (0)











