« 2010年02月 | メイン
| 2010年04月
»
2010年03月31日
うおおおおおお! 加門七海さんの新刊『「怖い」が、好き!』(理論社)の『ダ・ヴィンチ』取材に途中から同席。たんにその後、ほぼ同じメンバーによる『幽』の打ち合わせその他があったからですが。
で、理論社の担当編集者Sさんから、出来たてほやほや(発売は4月2日とか)の新刊本を頂戴して、早速パラパラやっていたら……思わず「うおおおおおお!」と絶叫して、インタビュアー役の門賀美央子さんから氷のような微笑じゃなくて視線で睨まれてしまいました。ううう、すみません。
だって……コレですよ、コレ!
これが叫ばずにいられるかってんだ。

▲「一之巻―二十九之巻」に爆笑!
プロフィールの著書紹介が『響鬼探求』になっていたけど、ユルス(笑)。
もちろん肝心の内容のほうも、とてもユニークな着眼の、しかも今まで待望されながら、なぜか誰も正面切って手をつけることのなかった大切な問題を、分かりやすく、注意深く、率直に、なにより面白く語り尽くした名著だと思います。しかし「恐怖教育」って凄いな(笑)。
ティーンエイジャーのみならず、怪談やお化けに(肯定否定を問わず)関心を抱く総ての方に読んでいただきたい本です。全力で推奨。

![]()
▲ただいま予約受付中。祖父江さんの装幀もナイスですよ!
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月31日 23:12 | コメント (0) | トラックバック (0)
2010年03月23日
『ヴィクトリア朝の寝椅子』 英文学者で作家・稲生平太郎としても活動されている横山茂雄さんから、先日ひさしぶりに御連絡をいただいた。
近く新人物往来社から〈20世紀イギリス小説 個性派セレクション〉という翻訳叢書が、横山さんと佐々木徹さんの責任編集として発刊される。その第一弾は、かつて『幻想文学』の連載「不思議な物語」で紹介したマーガニータ・ラスキの『ヴィクトリア朝の寝椅子』なので是非よろしく、という、思わず小躍りしたくなる嬉しい文面だった。
横山さんが『ヴィクトリア朝の寝椅子』を紹介されていたのは、奇しくも「不思議な物語」の連載第1回で、掲載は1985年3月15日発行の『幻想文学』第10号――すなわち、ちょうど四半世紀を経て、邦訳が実現したことになる。当時、連載原稿の入稿作業をしながら、大いに興味をそそられたことを懐かしく想起した次第。

▲懐かしの『幻想文学』10号「石の夢・石の花」とともに。あれから四半世紀か……。
病床にある現代女性の意識が、19世紀ヴィクトリア朝のロンドンで生活していた若い娘の肉体に転移するという不思議な体験を描いた同書について、横山さんは連載中で、作者ラスキの精妙な文体を讃えて、「ヴィクトリア朝ロンドンの陰鬱な空気が病室に吹きこんでくるのさえ、僕たちは肌で感じとることができるのだ」と記している。これだけでもワクワクするではないか(笑)。
かくして、本が到着するやいなや、むさぼるように読了。ちゃんとした書評は、追ってどこかに発表するので、ここでは一言、横山さんの上記の評価が実に的確であったとのみ、記しておこう。
あまり先入観をもたずに、色々と驚きながら(!?)読み進めていただきたい類の作品でもあるしね。

▲柴田元幸さんも本気で推奨されています。
ちなみにこの叢書、後続のラインナップも、凄まじい。
シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー『フォーチュン氏の楽園』
マックス・ビアボーム『ズリイカ・ドブソン』
パトリック・ハミルトン『孤独の奴隷』
イーヴリン・ウォー『卑しい肉体』
19世紀末から20世紀前半の英国小説に関心をお持ちの向きなら、気になる名前ばかりではないか! ぜひとも順調な刊行を望みたいものである。

![]()
【急告】横山さんから本書と〈20世紀イギリス小説 個性派セレクション〉について、
緊急特別寄稿を頂戴しました。この書影をクリックして、ぜひ御高覧ください!
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月23日 16:55 | コメント (0) | トラックバック (0)
怪談名著復刊の機運について『女性自身』(光文社)3月16日号の「BOOK「わき道」情報」という囲み記事で、「怪談の名著が次々と復刊!“洗練された恐怖”が魅力」と題して、小生と服部滋さん@ウェッジ文庫の談話および小生セレクトによるオススメ本3冊が紹介されております。

よくぞマア、こんな小さなスペースに、これだけの情報量を詰め込んだものよ、と、ほとほと感嘆いたしました。担当編集者Oさんの書物愛を感じます。
とはいえ、なにぶんにも限られた紙幅ゆえ、やや舌足らずな発言になってしまった点もあります。小生が取材の際に作成しておいたメモから補足する形で、Q&Aの形にまとめておきたいと思います。
【Q1】なぜ、怪談本の復刊ブームがやってきたのですか?
怪談自体はこの五年ほど右肩上がりで関心が高まっています。その流れの中で、読者の「本物志向」が一段と強まり、これまでさほど関心が高くなかった歴史的な名作にも、ようやく目が向けられるようになってきたのではないでしょうか。
また若い人だけでなく最近は中高年層にも「怪談の愉しみ」に目覚める読者が増えたことも要因として挙げられるように思います。『幽』怪談文学賞の応募者を見ても、四十代以上が珍しくありませんし、往々にして人生の年輪を感じさせる良い作品をお書きです。
【Q2】名著の復刊本の良いところとは何ですか?
なんといっても、良質で洗練された日本語で書かれたり語られているため、読んでいて、怖さや妖しさと同時に「心地よさ」の感覚をもたらすところですかね。文学的至福の境地(笑)。怪談の極意が語り口/文体にあることを、時の流れに磨かれた名著は雄弁に教えてくれるはずです。
【Q3】ここ半年以内で出版されたもので、おすすめの復刊怪談本を3冊ご推薦下さい。
泉鏡花ほか『文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集』ちくま文庫
怪談名著復刊ブームの呼び水のひとつとなった〈文豪怪談傑作選〉シリーズの一冊。泉鏡花ら大正期の文豪や名優が催した怪談会のドキュメンタリーと、そこから生まれた名作怪談を収録。文豪たちが怪談に熱中した時代の熱気と怪しさが伝わってくる。
平山蘆江『蘆江怪談集』ウェッジ文庫
大正文壇の怪談ブームを仕掛けた一人であるジャーナリスト作家が遺した怪談小説集。花柳界を舞台にした色っぽい話から「泣ける怪談」まで、古き良き時代の人情風俗に取材した作品12編とエッセイを収録。粋な老爺の夜語りを、間近で聴くような愉しさがある。
杉村顕道『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』荒蝦夷
仙台で医療福祉事業に献身するかたわら、多彩な文業を遺した著者の怪談作品を、史上初めて集大成した画期的な一巻。まさに「幻の怪談作家、復活!」と呼ぶにふさわしい好企画である。次女・杉村翠さんへのインタビュー「父・顕道を語る」には、著者の人間味あふれる逸話が満載。
……というわけで、この問題について更めて考える契機を与えてくださった『女性自身』のOさんに深謝いたします。

![]()

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月23日 03:24 | コメント (0) | トラックバック (0)
2010年03月22日
新聞書評二題 まずは『日本経済新聞』3月14日付朝刊読書面に、京極夏彦『数えずの井戸』(中央公論新社)書評が掲載されました。
古風な怪談話が、いたって今日的な魂の悲喜劇へと一変する鮮やかな手際をめぐって。

ちなみに『数えずの井戸』といえば、このほど「井戸端組」と名のる怪しげな団体が突如結成されて、下記の専用サイトを根城に色々と策謀を始めている模様です。
http://www.chuko.co.jp/special/kazoezu/idobata.html
参加すると何やら良いことがあるらしいので、京極ファンは要注目かと(小生も知らぬ間に組員にされていた模様……)。

![]()
続いては『山形新聞』3月14日付朝刊読書面に掲載された『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』(荒蝦夷)の書評。怖さや不思議さの背後に、常に人肌の温もりが感じられる、顕道怪談の妙味について記してみました。

▲拙文のすぐ下には、毎年ホラー大賞予備選で御一緒する池上冬樹さんの『コロヨシ!!』書評も。
この書評が掲載されてまもなく、著者の次女・杉村翠さんから、丁重な御礼のメールを頂戴しました。翠さんへのインタビュー取材には小生も立ち合わせていただきましたが(当ブログのエントリー「『信州百物語』の著者は、杉村顕道だった!」参照)、荒蝦夷の土方さんの手でまとめられ、本書の巻末に収載された「父・顕道を語る」は、顕道の人間的魅力が随処に感じられる卓抜な回想記となっています。
先のメールの最後に「父が黄泉でどんなに喜んでいることか……。/いいえ、最近は黄泉ではなく、ここら辺りに居て、喜んでいるのが良く分かります。」とあったのにも、一読深い感銘を受けました。この父にして、この娘あり!?

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月22日 12:27 | コメント (0) | トラックバック (0)
『ラブ@メール』見参 続いては『幽』怪談文学賞から飛び出した黒い一番星・黒史郎の書き下ろし長篇『ラブ@メール』(光文社文庫)。
突如発情し、ゾンビさながらの狂態をさらしながら死に至る人々……「愛」によって滅びゆく人類という何とも皮肉きわまる(いかにもケータイ小説風のタイトルも確信犯でしょうな)設定のもと、辛うじて罹患を免れた人々がたどるサバイバルの行方には? 絶望の果てにたゆたう希望を見すえた、パニックSFホラーの怪作/快作であります。
「今度は〈愛が全滅〉か。スゲェな黒史郎!」と平山夢明さんも帯で絶讃(笑)。

▲帯裏にも解説からの抜粋が入ってますな。
小生は巻末の解説を寄稿しています。ホラー界期待の新星という点をアピールよろしく! という編集部というか某中西さん(『ホラーウェイヴ』……。『ジゴマ3』…………。)のリクエストにお応えして、話のマクラの部分で、ゼロ年代から現在へといたる日本のホラー・シーンを駆け足で総括してみました。
怪談文芸興隆の気運が、ホラー小説全般の再興へとつながっていけば、なによりなんだが。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月22日 10:20 | コメント (0) | トラックバック (1)
『別冊太陽 泉鏡花』降臨このところ『幽』ツイッター(http://twitter.com/kwaidan_yoo)に注力していて、更新が遅れ気味です。すみません。ちなみにツイッターでは、ブログとはかなりモードを変えて、リアルタイムな情報をお伝えしておりますので、フォローしてみていただけると幸いなり。
まずは溜まっている仕事関係の紹介から。
『別冊太陽 泉鏡花 美と幻影の魔術師』は、読む者に美的至福をもたらすことにかけては近現代文学史上に比肩するものなき巨匠・泉鏡花の文学世界を、「別冊太陽」のお家芸というべき美麗豪奢なヴィジュアルとともに総展望する、贅美を凝らした一巻です。

▲河野利彦氏撮影のイメージ写真の数々により鏡花の原風景が浮上する……。
小生は「鏡花のてのひら怪談」という、冗談なのか本気なのかよく分からないタイトルの一文を寄稿しております(寄稿の経緯については、当ブログの「鏡花のてのひら怪談」のエントリーを参照)。最近、機会があれば試みているアンソロジー風エッセイ(いや、エッセイ風アンソロジーかな!?)であります。

▲小生のページに、ちくま文庫『鏡花百物語集』でも復刻した
「幽霊と怪談の座談会」の写真が使われていてちょっと感激。
ちなみに小生のお隣に、つい先だって仙台でお目にかかった赤坂憲雄さんの「鏡花と『遠野物語』」が載っているのにはビックリ。あたかも「みちのく怪談」の今後の展開を予見させるかのような……「別冊太陽」編集部おそるべし(笑)。
また、「麗しき鏡花本の世界」ほかで大活躍の吉田昌志先生はじめ、泉鏡花研究会の皆さんが総力をあげた伝記・ガイド・資料面での充実ぶりにも御注目のほどを。
鏡花入門には最適の一冊であると同時に、戦前の出版文化の豊饒さ(電子化では再現不能な「オブジェとしての書物」の圧倒的存在感ですな)を目の当たり実感できるムックでもあります。ぜひとも御購読たまわりたく。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月22日 09:35 | コメント (0) | トラックバック (0)
2010年03月16日
『てのひら怪談 庚寅』収録予定作家、発表6月発売予定のポプラ文庫版『てのひら怪談 庚寅』の収録作品全108篇が、このほど確定しましたので、発表いたします。
【あ行】
青井知之「田舎の風景」「トイレを借りにくる者」
青木美土里「姉妹」
我妻俊樹「百合」「蛾」
葦原崇貴「楽光師匠最期の高座『死神』の録音テープ」
阿丸まり「啼く魚」
綾倉エリ「パッチン留め」「故郷の思い出」
有井聡「あじさい山」「三柱」
いーちゃん「分岐点」
五十嵐彪太「ランデヴー」
石居椎「でいだら」
石川彦士「父に見えるもの」
岩里藁人「美醜記」
ウェル冥土「蟇」
宇津呂鹿太郎「遺髪」
烏本拓「波動」
太田工兵「告訴状」
小瀬朧「冥福を祈る」「九十八円」
【か行】
カー・イーブン「いただきます」
貝原「妖精」「漬物」
影山影司「祟りちゃん」
ガタリ「人魂」
勝山海百合「NOU―能生―」「うざね」
金子みづは「燈火星のごとく」
亀井はるの「下町怪異譚」
川合ないる「未遂」
北詰渚「カチンコチン」
君島慧是「樹械」「球体関節リナちゃん」
金魚屋「祈り」「八百年」「お兄ちゃんの夜」
クジラマク「スクランブル」「自然薯」
崩木十弐「腹話術」
国木映雪「ぼくと新しい神さま」
黒木あるじ「おまもり」「ならわし」
黒史郎「床相撲」「歯科呪医」
告鳥友紀「うつる」
小島モハ「柿をとる人」
紺詠志「梨園のマネキン」
【さ行】
再生モスマン「マーくんのごちそう」
サイトウチエコ「この家につく猫」
酒月茗「常連」
沙木とも子「本家の欄間」「視線」
櫻井文規「ハーメルン」
さとうゆう「さくらの咲くあさ」
皿洗一「〇×歯科」
沢井良太「をとめトランク」
椎名春介「月間四〇センチ」
斜斤「遊び」
白縫いさや「傘の墓場」「東の眠らない国」
添田健一「磯女」
朱雀門出「線香花火」「やまんぶの帯」
【た行】
高山あつひこ「四月一日霧の日の花のスープ」
武田若千「市松人形」
立花腑楽「肉色の森」
田辺青蛙「がんばり入道」「古い隧道」
珠子「かいもの」
炭酸水「坂をのぼって」
都田万葉「水無月に嫁す」
飛雄「朝の予兆」「ワゴンの乗客」
友井燕々「涼み売りと三毛猫」
鳥太「縁起もん」
【な行】
内藤了「踏まれる」
仲町六絵「鳥の家」「水晶橋ビルヂング」
猫吉「古本奇譚」
埜木ばにら「鈴」
野棲あづこ「夏の記憶」
【は行】
葉越晶「山羊の足」
葉原あきよ「狸の葬式」
ヒモロギヒロシ「さらばマトリョーシカ」「トロイの人形」
蕗谷塔子「タマコ」
不狼児「夏の最期の晩餐」
【ま行】
間倉巳堂「道蓮柳の言い伝え」
松音戸子「海外フェスの話」
松村佳直「カメラ」
松本楽志「明滅する家族」「ゆびおり」
松本浄「戦友の光」
圓眞美「たまゆら」
御於紗馬「苦断」
皆川舞子「布団」
峯岸可弥「天狗」
明神ちさと「炎天」
室津圭「カーブミラー」
【や行】
屋敷あずさ「つゆはらい」
yuAxe「遅れた死神」
湯菜岸時也「ママ」
夢乃鳥子「約束」「にらめっこ」
吉野あや「丑三つ時に」
よっちゃん「百人腐女」
以上。掲載予定の方には、近日中にポプラ社編集部より連絡をさしあげますので、よろしくお願いいたします。
なお、応募時点から転居などによりメールアドレス、住所などに変更がある方は、急ぎポプラ社もしくはビーケーワンのアドレス宛て、御連絡をお願いいたします。
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月16日 23:13 | コメント (0) | トラックバック (0)
2010年03月13日
『日本幻想作家事典』編著者+担当編集者座談会100年、200年後まで残る「怪奇・幻想」の大事典

2010年2月某日、ビーケーワンに『日本幻想作家事典』の中心人物三人が訪れた。1000ページを超える大著はいかにして作られたか? どんな使い方があるのか? などについて語り合っていただいた。
構成=タカザワケンジ
――今日は『日本幻想作家事典』の編著者の石堂藍さんと東雅夫さん、出版元の国書刊行会の礒崎純一編集長にお集まりいただきました。まず、まだ『日本幻想作家事典』をご購入いただいていない方のために、いくつか質問させてください。一つめの質問ですが、『日本幻想作家事典』が網羅している怪奇幻想作品と、そうじゃないものとの境界は、どのへんにあるんですか?
石堂■一言で言えば、超自然的な内容が書かれているかどうかですね。雰囲気的になんとなくファンタスティック、という作品は含めていません。SFも入ってますけど、基本は超自然的なもの。たとえば、お花がしゃべったり、幽霊が出てきたりするものですね。幽霊は超自然でいいのよね、東さん。
東■あ、あたりまえじゃないですか!(笑)いわゆる幽霊・妖怪談すなわち怪談というものは原則的に、現実を非現実が侵犯する恐怖に主眼を置いた物語であるわけで、怪奇幻想文学という分野の根幹に位置づけられるものだと思っています。
――「武田鉄矢」って項目があって驚いたんですけど、収録されている作家が幅広いですね。
石堂■幅は広くはないんです。怪奇幻想に含まれる作品を書いている作家に限っていますから。武田鉄矢はファンタジー作家なんですよ、実は。子供向けのファンタジー作品から大人向けのSF風作品まで幅広く書いてます。
ライトノベルや江戸の黄表紙本の作者はかなりがんばって網羅しましたが、それも怪奇幻想的な内容を書いている作家がそれだけいたから。でも、官能小説のほうは不案内なので入っていないとか、偏りはあると思います。たまたま調べていたら見つけたという作家もたくさんいました。東さんも、ずいぶん書き加えていましたね。
東■もう校了直前、ギリギリになって新事実が偶然に判明したりとかね。たとえば『怪奇伝説 信州百物語』という著者不詳の本が、実は仙台の怪談作家・杉村顕道の著作だということが、たまたま荒蝦夷で進められていた復刊作業の過程で御遺族の証言で明らかになり、それをたまたま私が耳にすることになって滑り込みセーフとか。こういうたぐいのことは挙げていったらきりがないし、実はまだまだ判明していない事実が潜んでいるのだと思います。そのあたり、もしもこの事典をご覧になって、お気づきになった向きは、ぜひ御教示を賜りたいと思います。
まあ編纂方針としては、可能な限り多くの作家を網羅しようという方向と、この事典でしか取り上げないだろうというトリビア的な内容を充実させようという二つの方向があったと思いますね。
礒崎■この事典の特色は、それをたった二人でやったこと。ふつう、こういう事典は人海戦術を使って100人くらいで作るのがふつうですから。少人数でやるのと大勢でやるのと、どっちのやり方がいいとは言わないけど、今回はこのやり方にしたことで、内容もだいぶ違ってきていると思いますね。
東■たまたま編者両名は「幻想文学」(1982年創刊/2003年終刊)という専門誌を長年一緒にやってきたので、幻想小説、怪奇小説、ファンタジー、ホラー、怪談等々のタームについても一応の共通了解が出来上がっていたから、なんとかやれたというところはありますね。こうした用語とかジャンル区分というのは、研究者とか愛好家の間でも驚くくらい認識に隔たりがあって、たとえば怪奇小説のアンソロジーに狭義の幻想文学的なファクターを求められたりとか(笑)トンチンカンなことも間々ある。実際われわれ二人の間ですら、細かいところでは食い違いもあって、「えーッ!?」というところもないわけではなかったけど。これを大人数でやったら、どんどん基準が曖昧になり混乱をきたして、収拾つかないことになったのではないかな。だからといって、単独でやるのは逆に主観に傾きすぎる気がするので、相互に監視・牽制のできる今のスタイルがちょうど良いのじゃないかと思います。そして何より、こうして一定の基準のもとに作家作品を網羅してはじめて、幻想文学というものの総体が客観的に見えてくるわけですからね。ここまで来たらあとは、先に触れたようなアンソロジーの形で、代表的な名作佳品を提示していけばいい。怪奇小説のそれはすでに『日本怪奇小説傑作集』などで手がけたので、次は幻想文学をコンセプトにしたアンソロジーを某社で準備中です。
――『日本幻想作家事典』にはどんな使い方がありますか? おすすめの使い方を教えてください。

東■『日本幻想作家事典』の元になった、「別冊幻想文学」の『日本幻想作家名鑑』(1991年)は、本や作家を探す手引きにしてくださった本好きな方がけっこういらしたみたいです。
石堂■いちばん「使った」別冊幻想文学だっておっしゃっていただいたこともありますね。
東■古書店巡りの伴侶(現物を携帯するのはツライでしょうが……)にもなれば、読書のガイドにもなるし、卒論のアンチョコにしていただいてもいいし。使い方はいろいろあると思いますよ。
礒崎■枕にもなる。厚いから。
石堂■殴るのにも(笑)。
東■ひいいい!(と頭をかかえる)
石堂■面白いなと思った作家がいたら、出版社に作品集を出してもらいたいとリクエストするとか。「私は怪談を書きたいのだ!」が口癖だった作家って誰だっけ。
東■『民俗怪異篇』の磯萍水ですね。そうだ、(礒崎さんに)次は『磯萍水全集』をやりましょう!
礒崎■…………(窓外を見やる)。
石堂■この間、亡くなった伊藤人誉もそうですよね。登山小説や、芥川賞候補になった「幻の猫」とか。もっと手に取りやすいかたちになるといいですね。
――いまの時代、なぜ、紙の事典で出版したんでしょうか。
礒崎■いろんなところに情報が分散しているインターネット的なものと、こうして1000ページの一冊の本にまとまっているのは、やっぱり違うと思うんだよね。
東■たしかに全文検索とかで素早く必要な情報を得られるという点では、電子化された事典のほうが便利でしょうし、いずれはそういう方向での展開も必要だとは思います。ただ紙の事典にはアナログならではの良さがあると思うんですよ。単純な話、寝っ転がって、それこそ枕代わりにしたりしながらね(笑)気の向いたときにパラパラ無作為にめくって、意外な項目にぶつかったりする面白さ。それと本書には「引く事典」であると同時に「読む事典」としての側面もあると思うので、それには紙のほうが適していると思います。モニタの画面で長時間、文章を読むのって疲れるし、なにより味気ないじゃない、アナクロ人間としては(笑)。それと付箋をつけたりとか余白に書き込みをしたりとか色んな媒体に載った関連記事を挟み込んでおいたりとか……自分のものとして勝手気ままに使い倒すための機能が、電子出版物でストレスなく行なえるようになるのは、まだまだ先の話だと思うし。石堂さんはどう思います?
石堂■紙にした理由? そのうち、電気がなくなるでしょ?(笑)100年、200年のちに本のかたちになって残っていることが大事なんだと思います。

投稿者 : 2010年03月13日 10:34 | コメント (1) | トラックバック (0)
2010年03月09日
ただいまの断然推奨本いま、ハタと気がついたのですが、このブログ上部に掲示している「断然推奨本」コーナーの現在の並びが、なにげに凄いラインナップになっていますな。
センターの『怪談実話系3』は、まあ自前の競作集なのでさておき(笑)、『冥談』『南の子供が夜いくところ』『歪み真珠』という現代怪奇幻想文学の最尖端に位置する傑作3冊と、先ごろ奇蹟の復活を遂げた『杉村顕道怪談全集』の取り合わせは、このうえなく刺戟的であると思います。
なにより、それぞれに横溢する「文体」の魅力に陶然とさせられます。
本当に良質な小説、本物の文学を読みたいと思う方、特に若い読者の方には、上記の4冊をぜひ連続してお読みになることをお勧めいたします。
で、そうした怪奇幻想文学の原郷というべき仄暗いボーダーランド――日常と超自然が危うく接触する瞬間を、ひたむきに追求したのが『怪談実話系3』の諸作品ということになるわけですな!(笑)
春の宵、絢爛たる幻想と怪奇の世界に存分に浸っていただきたいと思います。
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月09日 11:07 | コメント (0) | トラックバック (0)
2010年03月08日
怪談実話コンテスト受賞作家座談会4月下旬発売予定で鋭意制作中の『怪談実話コンテスト傑作選 黒四』展開の一環として、「黒四」で同賞の大賞を受賞した三輪チサ(巫林檎改め)さん、「真夜中のギター」で優秀賞受賞の岡野皆人さん、「壁」で同じく優秀賞受賞の宍戸レイさんの上位入賞者3名に御参集いただき、メディアファクトリーの会議室で座談会を収録しました。
スタッフも含めて全員が初対面ということで、最初は司会役の小生が、お三方に順にインタビューする形で始めたのですが、もう出るわ出るわ(笑)、三人三様のアプローチで怪談探究に精励していらっしゃる実態が次々と明らかに。ちなみに、三輪さんは主婦、岡野さんは高校の国語教師、宍戸さんは六本木でダンサーとして活動するかたわらパフォーマンス・ユニット「maneater」に所属……と、それぞれまったく異なる環境に身を置きながら、地縁血縁あるいは職場での人脈などをフル活用して怪談実話の蒐集をおこなっている模様で頼もしい限りでした。

▲右から岡野さん、三輪さん、宍戸さんです。
緊張がほぐれるにつれて、御自身の怪異な体験談まで飛び出して、予想どおりというべきか、座談会なのか怪談会なのか分からない展開に。さらには会議室の窓辺に、背の高い黒スーツ姿の闖入者が顕れたようで……(例によって小生やRには見えませんでしたが)。
座談会終了後は、山下昇平画伯制作の記念品(それぞれ一点物なのだ!)を手に、写真撮影をおこない、近くの飲食店に場を移して、ささやかな打ち上げを。怪談実話のニューウェイヴ到来へ向けて、確かな手応えを感じたひとときとなりました。
この模様は『ダ・ヴィンチ』来月号などに掲載の予定ですので御期待ください。
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月08日 23:53 | コメント (0) | トラックバック (0)
「東雅夫のイチオシ棚」更新ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
あの『幽談』に続く京極夏彦の傑作集『冥談』が遂に発売。
恒川光太郎最新作の『夜の子供が夜いくところ』も入庫されました。
ファンタジー小説では、朱川湊人『銀河に口笛』 と湯本香樹実『岸辺の旅』がオススメ。
SF好きの方は『日本SF全集 2 1972〜1977』 が要チェック。
そして出ました! ユニークな大著、和田寛『河童の文化誌』。
山口直樹『妖怪ミイラ完全FILE』も楽しい一冊です。

![]()
投稿者 coolmint : 2010年03月08日 21:11 | コメント (0) | トラックバック (0)
小生。 『怪談文芸ハンドブック』といえば、同書の装幀をお願いした名久井直子さんが、最近はエッセイストとしても活躍されていることは御存知の向きも多いでしょう。
このほど発売された『群像』4月号掲載の「私のベスト3」というコラムで、名久井さんは「あこがれの一人称」と題して、使いたいけど巧く使えない「うらやましい一人称たち」のベスト3を挙げていらっしゃいます。面白い着眼ですよね。
で、第3位がなんと「小生」でして、その使用例として、拙ブログにおける小生(!)のケースに言及されているのでした。「神話や怪談のお話とも雰囲気がぴったり」だそうな。なんだか気恥ずかしいですが、光栄なことです。
ちなみに小生の場合、オンラインでの一人称は「小生」、オフラインというか紙媒体で文章を書くときは「私」に、ほぼ統一して使い分けております。
これは何故かと申しますと、ネットで文章を書き始めた頃に、ああ、これは話し言葉と書き言葉の中間に位置するようなメディアなんだな……という感触を抱いたからなのですな。それで幾つか試してみたなかで、「小生」がいちばん、ネットでの発言のスタンスにフィットしたというわけです。まあ、あくまで自分の中の感覚的な問題ではあるのですが。
なお、名久井さんのベスト3――2位は「うち」、1位は「ヤツガレ」で、それぞれに思わず肯いてしまうような選出理由が付されていますので、ぜひ御一読のほどを。
しかし「ヤツガレ」を使う度胸は……さすがにまだ無いなあ。

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月08日 20:51 | コメント (0) | トラックバック (0)
2010年03月06日
ノミネート御礼 久々の更新です。昨年メディアファクトリーから上梓した拙著『怪談文芸ハンドブック』が、このほど第63回日本推理作家協会賞の「評論その他の部門」候補作としてノミネートされました。『ホラー小説時評』に続く二度目の御指名となりますが、まったく予想していなかったので、驚くやら嬉しいやら。
なにより、本づくりにあたって御苦労をおかけした担当編集者の岸本亜紀さん、ブックデザインの名久井直子さん、装画のいとう瞳さんら関係者の皆さんに、ほんの少しだけ御恩返しができたかな、と歓んでおります。あまりミステリーとは関係のなさそうな本書を選んでくださった推理作家協会の関係各位に、篤く御礼申しあげます。もちろん、本書をお読みくださった読者の皆さまにも、深謝。
今回のノミネートには、もうひとつ嬉しいことがあります。同じ「評論その他の部門」に、『幻想文学』の主要メンバーの一人だった長山靖生さんの『日本SF精神史』、やはり『幻想文学』に御寄稿いただいたことのある谷口基さんの『戦前戦後異端文学論』、小森健太朗さんの『英文学の地下水脈』と、所縁の皆さんの力作や貴重な労作が勢揃いしている点です。これなら誰が受賞しても嬉しいじゃないですか(笑)。
そして、忘れちゃいけないもう一人――『厠の怪』に素晴らしい怪作短篇を御寄稿いただいたばかりのホラーの新鋭・飴村行さん『粘膜蜥蜴』も、「長編及び連作短編集部門」にノミネートされています。こちらも結果が愉しみでなりません。
もしも未読のノミネート作品があれば、是非この機会に御購読のほど、お願い申しあげます!

![]()

![]()

![]()

![]()

![]()
投稿者 東 雅夫 : 2010年03月06日 10:06 | コメント (0) | トラックバック (0)
2010年03月05日
『怪談実話系3』刊行記念! 「伊藤三巳華×東雅夫」対談(お試し版)
「幽霊が視える生活ってそんなに苦痛ではないし、普通ですよ。楽しそうだなと思ってくれたら、私としてはうれしいですね」
『怪談実話系3』の目玉はなんといっても怪談三姉妹(加門七海さん、立原透耶さん、伊藤三巳華さん)+宇佐美まことさんがそれぞれの視点で描いた「あるできごと」の顛末。三姉妹の末娘である伊藤三巳華さんにその裏話、また、伊藤さんが怪談漫画を描くまでのライフ・ストーリーについてうかがいました。
構成=タカザワケンジ
写真=冨永智子
★彼らの怖がらせ方が
一流なだけです(笑)
東■昨年九月、『幽』創刊五周年記念イベント「怪談ノ宴」のあとの打ち上げで起こった「事件」について、『怪談実話系3』では、その事件に遭遇した当事者である怪談三姉妹と宇佐美まことさんに、それぞれの視点から書いていただきました。しかも、あえて事前や事後のすりあわせをしていないので、それぞれの視点で記憶違いがあったり、印象の濃淡があるのが、却ってリアルでとても興味深かったですね。
三巳華■ほかの方たちがどんなふうに書いているのか、私も楽しみです。
東■打ち上げの前にも、「怪談ノ宴」のイベント中にステージから「白いモノ」が飛び交っているのが見えた、と宇佐美さんが書いているんですが、三巳華さんはそれ、お気づきになりましたか?
三巳華■私や加門さんは「女の人(の霊)がいるよね。こんなイベントやってるから寄ってくるんだよね」的なトークをしてました。いたのはわかっていましたけど、漫画のネタになるほどとは思っていなかったので気にしてませんでした。『幽』十一号、十二号で描いたエピソード(注:TV局主催のホラーイベント)でもそうだったんですけど、そのときはあとで、漫画にするためにもう一度見に行ったんです。
東■そのときも「視た」のですか?
三巳華■「彼女」を探すのは難しくて、結局、見つけられなかったんですけど。
東■そういう特定の場所に行くと、普通に「視える」ものなんでしょうか?
三巳華■時間枠をずらして「入る」んですよ。その場所にいちばん焼き付いている時間に入って歩くと、違う世界に入っていけるんです。
東■焼き付いている時間というのは?
三巳華■たとえば、大空襲のあとのような時間ですね。
東■なるほどそうか。つまり、過去の、その土地が有する歴史の中で特に濃い時代=時間ということですね。
三巳華■私がいちばん入りやすいのが、そういう濃い時代です。あと、幽霊の視た目の雰囲気や、伝わってくる感じに合わせて入っていくこともあります。そうするといろいろとわかることがあるんです。
東■面白いですねー。タイムスリップしているような感覚ですか?
三巳華■そうですね。空襲の後かどうかははっきり言い切れませんけど、焼け野原に崩れかけた建物が建っていたりするので、たぶんそうじゃないかと思います。そこに視えている人たちも途方に暮れている感じでしたね。
別の件で、秋葉原のほうに行ったときに、東京大空襲のあとに「入って」、人捜しをしたことがあるんです。幽霊に「狐に尋ねてください」って言われて、その近くにあった祠(ほこら)に行きました。その祠にはなにがしかの人がいて──神様じゃないと思います。そんなに偉い人は出てこないので──尋ねたら、「みんな迷ってる。こんな大人数は対処できないから、一人一人の話は聞けない」ってきっぱり言われました。だから、私も「彼女」を見つけられなかったけど、それは仕方ないことなんだなあ、と思いました。
東■「視る」ときの感覚というのは、この漫画(『濡れそぼつ黒髪』)に描かれている描写に近いんですか?
三巳華■できるだけ視たままに描こうとしています。でも、なかには、おどかそうとする幽霊とそうじゃない幽霊がいるんです。幽霊もベテランになればなるほど、人をおどかそうとするんです。とんでもなく大きな顔で出てきてみたり(笑)。人がいちばん怖がることを何かで学ぶんでしょうね。
東■『濡れそぼつ黒髪』に収録されている「肝だめし」に出てくる、天井いっぱいの大きな顔のインパクトはすごいですね。『稲生物怪録』もビックリ(笑)。
三巳華■ベテランで、しかも子供の幽霊がいちばんタチが悪いんですよ。遠慮がないんです。大人だともう少し遠慮があるんですけど。子供の幽霊は、挑発すると乗ってくるので、いちばん危険です。
東■三巳華さんの作品には、読んでいるこちらも、思わずぞわっと背筋が寒くなる異様なリアリティがありますね。
三巳華■それは、私の漫画が上手いんじゃなくて、彼らの怖がらせ方が一流なだけです(笑)。見て欲しい、気づいて欲しいから、驚かせるのが上手くなったと思うんです。幽霊になりたての頃は、何か訴えたくてそういうことを始めたと思うんですけど、それがだんだんわからなくなってきて、人を自分と同じ目に合わせたり、怖がらせて事故に遭わせたりすることが楽しくなってきているんでしょうね。

……いかがでしたか? このあと、さらに打ち上げで起こった出来事の裏話や、三巳華さんが怪談漫画を描くようになるまでの軌跡などをうかがっています。残りは今回公開している分のざっと3倍のボリュームです。ぜひ、2010年4月20日(火)までにビーケーワンで『怪談実話系3』をお買い上げいただき、特別対談の完全版をお楽しみください。(配信時期は2010年4月下旬を予定しています。また、モバイルビーケーワンよりご購入のお客様で特典をご希望の方は、gensou@bk1.co.jpまでご連絡下さい)こちらをクリック!↓

![]()
*ヒガシ編集長&三巳華さんの連載が読める日本唯一の怪談専門誌↓

![]()
投稿者 : 2010年03月05日 09:57 | コメント (0) | トラックバック (0)









