« 2010年05月
| メイン | 2010年07月 »

2010年06月25日

【ホラーな作家たち】第2回 宇佐美まこと

東雅夫イチオシの、話題と期待の作家たちに、
人生や好きな本を語っていただく新コーナー【ホラーな作家たち】。
第2回にご登場いただくのは、
第1回『幽』怪談文学賞短編部門大賞を受賞された宇佐美まことさんです。



 宇佐美まことです。自己紹介というほどあらたまった、またきちんとしたものではないのですが、思いつくまま、私が今まで読んだり書いたりしてきたもののお話をさせてください。

 私は2007年に第一回『幽』怪談文学賞をいただいて、受賞作『るんびにの子供』を含む短編集でデビューさせていただきました。これは、人の一生にそっと寄り添うような、ささやかだけれどしんと怖い怪異を描いた物語でした。この短編は、私自身の幼少期の思い出――墓地とひと続きになった仏教系の幼稚園、平べったくて何もない田園地帯――が下敷きになっていなす。
 そこに当たり前に存在していたべったりと濃い闇、水の音、風の音、湿気、土の匂い、小動物の蠢く気配、何かが人知れずダメになっていく気配……。もしそれらの中に怪異が混じっていたとしても、それをより分けるのは困難であり無意味でした。ただ五感はかなり鋭敏だったと思います。
 ラヴクラフトは「恐怖は人間の最も古い最も強い情感だ」と言いましたが、恐怖を感じることこそが、人間を今日まで生きながらえさせてきたのです。原初の時代、自然の脅威から身を守るために人は自分の五感を伝ってやってきたものに恐怖心を抱くことによって、無防備にそれらに身をさらすことを避けてきたのです。私たちは、現代において鈍らせてしまい、またないがしろにされている恐怖する心に今こそ磨きをかけねばなりません。これが私が怖いものに惹かれる理由だといえば少々大げさですが、幼少期の環境が今の私の核をかたちづくったということは確かだと思います。
 もう一つ、この環境が私に与えてくれたものが空想する力です。私だけでなく、40年、50年前の子供は何もないところからモノを作りだす天才でした。あの頃の環境と読書体験は、私に空想力をもって変幻自在に形を変える術を与えてくれました。先日、第三回の怪談文学賞を受賞された岡部えつさんから、「宇佐美さんが書く小説って男性が主人公のものが多いですね」と言われました。自分では意識していなかったのですが、そういえばそうです。
 『るんびにの子供』に収録してある短編のいくつかは男性が主人公だし、三作目に書いた『入らずの森』も、鬱屈した感情を抱え込んだ男性が、山深い土地にわだかまる不定形の異形のものに同調し、取りこまれそうになる話です。私が自身を、男でも女でも大人でも子供でもないと認識しているのだろうと思います。つまりは私の中身は、未だ曖昧で定まらないということかもしれません。
 その私の読書体験についてお話します。私がダークサイドに足を踏み入れる(?)きっかけとなった本を一冊挙げるとしたら、ポオの『黒猫』でしょうか。忘れもしない、中学二年の時のテスト期間中でした。これ以降、私はポオとブラッドベリによって幻想と怪奇の世界へズリズリズリッと引きずり込まれることになるのです(いや、大喜びで頭からダイブしたというべきか)。


 ホラーの帝王スティーヴン・キングの洗礼も受けましたが、私がキングに惹かれるのは、小説そのものよりも、彼自身の生き方とか考え方なのです。それはキングが書いた自伝的エッセイ『死の舞踏』と『小説作法』を読んだことが大きかったと思います。私は本を読んでいて、気になるくだりがあるとメモしておく癖があるのですが、この二冊には特に感銘を受けた言葉が多かったように思います。
 たとえばキング曰く「私は生まれつき闇夜と賑やかな死体が好きなように出来あがっている。認めないと言われれば、肩をすくめるまでの話だ。私にはこれしかない」。私は今日に至るまで「何でそんなに怖いものとかが好きなの?」と問われるたび、うまく答えを返せませんでした。しかし、キングのこの一文ときたら! これほど明快に私の気持ちを代弁してくれたものがかつてあったでしょうか!





 とはいえ、読書に関してはホラーや怪談ばかりを読んできたわけではありません。雑食、大食の外来魚のごとく、大口を開けて何でも食らいつく濫読を重ねてきました。今も時折読み返している本は、トマス・H・クックの『緋色の記憶』です。これはクックの記憶三部作のうちの一冊です。三冊ともがどれも美しく、妖しく、恐ろしい物語ですが、特に『緋色の記憶』が持つ人間の性の哀しさ、業の深さには慄かずにはいられません。私は常々、どんな怪異よりも人間が恐ろしいと思っている一人なのですが、まさにそれを如実に表した小説です。
 ここからも一文引用させてください。
 「人の哀しいでたらめ、突拍子のなさ、人間の生が作りだす不可解な密林」


 古い本だけでなく、もう少し最近の、日本の土壌で生まれたしんと哀しくて怖い本も紹介します。小池真理子さんの『水無月の墓』、森見登美彦さんの『きつねのはなし』、三浦しをんさんの『むかしのはなし』、道尾秀介さんの『鬼の跫音』、荻原浩さんの『押入れのちよ』。これら小説の根底には、死の情景が静かに流れていると思うのです。生きている私たちが結局たどりつく恐怖とは「死」なのだと語ったのは、やはりキングだったのかもしれません。日本人というものは、死を忌み嫌うのではなく、近しいものとして受け入れて日常を過ごしているような気がします。だからこそ、ここに怪談文芸なるものが生まれたのではないでしょうか。最後に、そうして語り継がれてきた諸国奇談を現代によみがえらせた『怪談列島ニッポン』をおすすめしておきます。その土地土地に束の間現れては消えていく淡い怪異に惹きつけられることでしょう。














 真正面から見ていると平穏で明るいものも、角度を変えてみると全然別のものに見えてくることがあります。あるいははからずも入ってしまった亀裂から、得体のしれないものが溢れだしてくることもあります。それまで確固としたものの上に立っていたと思っていたのに、実はそれは錯覚で流砂の上で不安定にバランスをとっていただけだったとしたら?
 私はざっくりと切り取ったものを掲げて「ほら!」と切り口を見せたいのです。誰もが持っている暗い感情―憎しみ、嫉妬、怨恨、狂気、憤怒、嫌悪感、猜疑心―はやがて異界のものと呼応しあい、混じり合い、奇怪な音楽を奏で始めます。ある時を境にして、日常は非日常に、現実は幻に、正は邪に、くるりと反転するのです。
 油断していてはいけません。異界はあなたの足下にぱっくりと口を開けているかもしれませんよ。

usami.JPG

宇佐美まことの本















投稿者 coolmint : 2010年06月25日 20:13 | コメント (0) | トラックバック (0)

NHK真夏の怪談番組トリオ

 情報解禁されたようなので、正式に告知を。
 今夏、NHKの地上波とBSで、なんと三つの怪談番組が放送されます。
 地上波が「日本怪談百物語 その弐」、BSが「妖しき文豪怪談」(BS-hi)と「最恐!怪談夜話2010」(BS2)です。
 小生、何の因果か(笑)その三本すべてに、それぞれ全く別々の経緯で関わることになりました。

 「最恐!怪談夜話2010」と「日本怪談百物語 その弐」は、それぞれ昨年も放映されて好評だった番組の第二弾です。
 小生は「最恐!怪談夜話2010」には去年と同じく、蘊蓄担当で(笑)出演の予定。
 放映日は8月7日、時間帯と出演者などの詳細は、追ってまた。

 初参加の「日本怪談百物語 その弐」では、朗読作品(今年もなんと全100話!)の編纂・考証を担当しました。
 放映日時は、2010年8月15日の24時10分から27時40分。
 出演者は、奥田瑛二・野際陽子・中村獅童・富田靖子・水野美紀・荒川良々・平岩紙・湯澤幸一郎・與真司郎・水野絵梨奈(順不同)という10名の皆さんです。

 一方、「妖しき文豪怪談」には、昨秋の企画起ちあげ時点に、NHKエンタープライズの浜野プロデューサーから相談を受け、監修役として関わってきました。
 ちくま文庫版〈文豪怪談傑作選〉でもおなじみの文豪たちの怪談世界を、撮り下ろしドラマとドキュメンタリーで紹介するという画期的なシリーズ番組です。
 なにより画期的なのが、ドラマ・パートを担当する顔ぶれ。

 第1回が落合正幸監督による川端康成「片腕」
 第2回が塚本晋也監督による太宰治「葉桜と魔笛」
 第3回が李相日監督による芥川龍之介「鼻」
 第4回が是枝裕和監督による室生犀星「後の日の童子」

 以上、ちょっと眩暈を覚えるような凄い陣容が実現しました! 浜野さん、さすがです。
 放映日時は、8月23日から26日まで四夜連続で、時間帯はいずれも22:00から23:00の予定です。

 どの番組も、いよいよこれから制作の山場を迎えるところです。
 進行状況やトピックスを、このブログでも随時お伝えして参りますので、ぜひとも御注目のほど、よろしくお願い申しあげます!









投稿者 東 雅夫 : 2010年06月25日 06:56 | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年06月24日

「東雅夫のイチオシ棚」 更新

ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
大好評の『怪談実話系』、待望の4弾が遂に発売。充実の執筆陣です。
岩井志麻子の『現代百物語』第2弾「嘘実」も発売。パワーアップした怖さをお楽しみ下さい。
海外作品では
デイヴィッド・アーモンドの甘やかなファンタジー『ヘヴンアイズ 』新装版と
珍しいところでは
ロシアのシュルレアリスト、ダニイル・ハルムスの超短編集『ズディグルアプルル』 がオススメ。
『幽』でもおなじみの諸星大二郎の傑作『西遊妖猿伝 西域篇2』も出ました。













投稿者 coolmint : 2010年06月24日 10:18 | コメント (0) | トラックバック (0)

みちのく怪談も、始まってます!

 始まってしまったのは、『幽』や「てのひら怪談」関連ばかりではありません。
 「みちのく怪談プロジェクト」も、いよいよ本格始動……というか、小生が夏前の繁忙期でオタオタしている間に、地元東北各県では「荒蝦夷」+「東北怪談同盟」による広報活動が、驚くべき速度で拡がりと反響を見せているようです。
 精力的に東北各地を駈け回っている土方正志さんと荒蝦夷スタッフの皆さん、東北怪談同盟のサイトマスターとして奮戦中の黒木あるじさん、そして本プロジェクトの趣旨に御賛同・御協力を賜っております報道機関や東北各地の書店担当者の皆さまに、更めて御礼を申しあげます。

 さて、「みちのく怪談プロジェクト」って、何よ? という向きに、真っ先にオススメしたいのが、先ごろ発行された『仙台学』第9号です。

sendai09a.jpg

 「〈みちのく怪談プロジェクト〉いよいよ始動!」と銘打ち、小生と土方さんによる対談が掲載されております。

sendai09b.jpg
▲やたら偏った本のセレクトに土方さんの主張が感じられます(笑)。

 プロジェクト発動の経緯や、今後の展望など、率直に語り合っておりますので、ぜひ御一読を。
 他にも、こんな記事とか(笑)。

sendai09c.jpg

 特集の「宮城旅物語」には、高橋克彦、伊坂幸太郎、熊谷達也の各氏や、『響鬼探究』等でお世話になった神崎宣武さん、ホラ大の予備選で毎年御一緒する池上冬樹さん、先日のインタビュー取材でお世話になった山川徹さんなども登場。
 夏場の東北旅行を勘案中の向きにも最適な一冊ですぞ。


 そして最新の「みちのく怪談」情報を求める向きに必見なサイトが、このほど新設されました!

 「みちのく怪談コンテスト」専用ブログ
 http://d.hatena.ne.jp/michikwai/

 「みちのく怪談コンテスト」の選考委員を務める赤坂憲雄さんと小生のマニフェストや、黒木あるじさんによる「てのひら怪談」紹介記事、「みちのく怪談ブックフェア」開催書店様の情報などが、すでにアップされています。
 こちらもぜひ、定期的にチェックしていただきたいと思います。



投稿者 東 雅夫 : 2010年06月24日 05:05 | コメント (0) | トラックバック (0)

ヒガ鬼の全貌

 柳柄の専用風呂敷をほどいて、桐の箱を開けると……。

higaki12.jpg

 まずは、素敵な風合いの手漉き和紙で出来た説明書(!)が出現。

higaki11.jpg

 「山! 里! 海! 日本全国をめぐって鍛えに鍛えて、今、その男、関東の鬼となる……!」に始まる解説(天野行雄さん執筆)が熱いぞ。

higaki10.jpg

 裏には本プロジェクト(!?)のクレジットが。ほんの冗談で発した小生の一言が、まさかこんなアートワークに結実するとは!(「発売」等とあるのは、もちろん架空の設定です為念)

higaki9.jpg

 逸る心を抑えつつ、ウレタンをめくると!

higaki8.jpg

 専用台座まで! アンモナイトや頭骨のディティールに注目。

higaki7.jpg

 素顔用の眼鏡まで……(茫然)。

higaki6.jpg

 仮面の下はこんな顔。に、似てるような……(笑)。本物のマジョーラ塗装(!)の輝きにも御注目を!

higaki5.jpg

 見よ、この山下昇平さん造形によるハイパーディティール!
 そして天野行雄さんによる超絶彩色!

higaki4.jpg
higaki17.jpg

 ヒガ鬼愛用の音撃管「爆風」の造形も物凄い!

higaki3.jpg

 いやはや、「天野と山下」コンビの御好意と、徹底したモノ作りの情熱とこだわりに、深く深く感謝あるのみ……。

higaki2.jpg

 本当にありがとうございました!

higaki13.jpg

 カモ鬼とモン鬼にも御臨席賜った、お披露目&慰労会のレポートは、また後日。






投稿者 東 雅夫 : 2010年06月24日 03:06 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年06月23日

真夏の幽、始まりました!

 いよいよ今年も怪談シーズンの本番到来目前。
 メディアファクトリーでは、『幽』本誌および〈幽ブックス〉の集中投入へ向けて着々と準備が調い、早くも新刊攻勢が始まっています。

 まずは、祖父江慎さん入魂デザインの表紙も公開された『幽』13号。いよいよ7月2日発売です。
 編集長みずから断言しても説得力ないですが、今号のラインナップは本当に物凄いと思います。関係各位の御高配・御協力に心より御礼申し上げます。
 ビーケーワンでも特典付き予約が始まっておりますので、ぜひぜひ、よろしくお願いいたします!


 そして〈幽ブックス〉からは安曇潤平さん待望の新刊『黒い遭難碑』が。
 どうせ『幽』の連載をまとめただけだろ……と斜にかまえているそこの貴方、よーくお聞きなさい(笑)。
 ななな、なんと本書のための新作書き下ろしがドーンと7本も! なかには、潤平版「てのひら怪談」と呼べそうな800字の怖い話まで含まれているのです。実話作家としてのみならず、創作小説の分野での安曇さんの大いなる可能性を感じさせる一巻となりました。ぜひ御購読のほどを。






▲黒と赤――ダブルで読めば恐怖も二乗!

 さらに〈MF文庫ダ・ヴィンチ〉からは、『怪談実話系4』が早くも入荷しました。
 小生は巻頭言「十三年目の奇縁」を寄稿しております。

kjk4mihon.jpg
▲帯の惹句はもちろん、現代怪談実話の金字塔にしてガールズ怪談実話の先駆たる、
工藤美代子さんの名著へのオマージュです!

 今回は、『幽』に「日々続々怪談」を連載中のノンフィクション作家・工藤美代子さん、そしてSF・ホラー界のベテラン・牧野修さんが初参戦。それぞれに人生の年輪を感じさせる持ち味を発揮してくださいました。
 これを迎え撃つ常連組も気合い十分。特に今回はストレートな実話作品に収穫が多かったと思います。
 その一方では、加門七海さんの「浅草純喫茶」、岩井志麻子さんの自主連載企画(!?)「あの女のその後」といった異色きわまる作品も。
 この多彩な振幅が、現在の怪談文芸のキャパシティなんだと思っております。こちらも何卒じっくりと、御高覧くださいませ!



投稿者 東 雅夫 : 2010年06月23日 14:38 | コメント (0) | トラックバック (0)

拙著タイトル確定!

 やれ『怪談の生まれる場所』だの『遠野物語の怪談史』だの、さらには何故か『遠野 怪談の生まれる場所』(写真集かよ!?)だのと情報錯綜しました角川選書の拙著書き下ろし。
 このほどようやく『遠野物語と怪談の時代』に確定しました!
 決まってみれば、そのものズバリと申しますか、これ以上ないくらい内容を反映したタイトルとなりました。
 8月中旬発売予定、目下、校正作業の真最中です。



▲まずは、この特集で予習(!?)を。

 本書の表紙カバーには、写真家のMOTOKOさんが、『幽』11号の「怪談遠野物語」特集に際して、遠野で撮影された写真を使わせていただけることになりました。
 カバーデザインが上がってきましたら、こちらでもお披露目させていただきます。



▲MOTOKOさん撮影の現地写真も多数収録されている話題の縄文紀行本!

 ちなみに先日、『怪』次号の「遠野物語」特集の一環として、京極夏彦さんと『遠野物語』をめぐり、対談をさせていただきました。
 大極宮さんの記事はこちら→ http://www.osawa-office.co.jp/cgi/view_weekly.cgi#03

 京極さんは「妖怪」サイドから、小生は「怪談」サイドから、『遠野物語』と柳田國男が、民俗学界を中心に、いかにこれまで偏った見方で論じられたり紹介されたりしてきたか……という問題について、きわめて率直に忌憚のない意見を交わしております。
 『怪』発売の暁には、ぜひとも御高覧を賜りたく。



▲京極流『遠野物語』外伝が含まれていることにも御注目を。

投稿者 東 雅夫 : 2010年06月23日 12:46 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年06月18日

「東雅夫のイチオシ棚」更新

ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
入荷と同時にぐんぐん売上げを伸ばしているのが
『赤いヤッケの男』に続く山の怪談集、安曇潤平 『黒い遭難碑』と
澁澤龍彦も絶賛の橘外男『陰獣トリステサ』。
話題作の予約開始も続々。
宮部みゆきの時代怪談小説『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』。
須永朝彦の耽美小説集『天使』→購入者特典つき
『遊郭のはなし』で感動を呼んだ長島槙子の『色町のはなし』→こちらも購入者特典つき
立原透耶怪談実話集『ひとり百物語 2』。
妖しき名所案内、 小池壮彦『日本の幽霊事件』。
そして『コミック怪』最新号。
さすが豊穣の怪談の夏。
文庫イチオシは『久生十蘭ジュラネスク』。






宮部みゆき『あんじゅう』



須永朝彦『天使』



長島槙子『色町のはなし』



立原透耶『ひとり百物語 2』



小池壮彦『日本の幽霊事件』



『コミック怪 2010年 夏号』




投稿者 coolmint : 2010年06月18日 20:05 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年06月08日

双葉文庫版『魍魎の匣』@プチアンソロジー付き、発売!

 双葉文庫から人知れず(でもないか)延々と刊行されている〈日本推理作家協会賞受賞作全集〉という異様に長大な名前のシリーズの最新刊(なんと82・83巻)として、京極夏彦『魍魎の匣』が刊行されました。

moryo1.jpg

 よりにもよって……新書、文庫、文庫分冊、ハードカバー等々ありとあらゆる形式ですでに何度も刊行されてきた、京極さんの代表作を、ふたたび文庫版で刊行しようという、こういう趣旨の全集でなければ実現しえなかっただろう企画です。
 で、その解説を、編集部から依頼されました。
 早い話が小生の解説以外は、過去の版となにひとつ異なるところがないのですから、これは解説者の責任重大でありますな(笑)。

moryo2.jpg

 ……ということで解説に加えて、『魍魎の匣』に捧げるミニマム・アンソロジーまで、頼まれもしないのに勝手に編纂して、巻末附録として加えてしまいました!
 もう何度も読んだよ! という貴方も、ぜひ。






投稿者 東 雅夫 : 2010年06月08日 01:30 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年06月06日

てのトラ、絶讃発売中!

 ビーケーワン怪談大賞の開始と共にやってくる、爽やかな初夏の風物詩(!?)――『てのひら怪談 庚寅』が、いよいよ発売となりました。

 今回は例年以上に、大変なハイ・ボルテージ!
 なにしろ2年分の優秀作品の中から、選りすぐりの名作佳品を収録しているわけで。
 ……まあ、編者の一人である小生が力説しても、あまり説得力はないのですが(笑)。
 ぜひ、御自分の眼で、お確かめいただきたいと思います。

 京極夏彦さん、稲川淳二さんに続いて、今回の巻末解説をお願いしたのは、平山夢明さん。
 いつもながら勢いのある、そして鋭い洞察とユーモアに満ちた、素晴らしい解説を御寄稿いただきました。
 これを一読して励まされるてのひらーも多いのではないでしょうか。

tetrahira.jpg
▲なんと解説に加えて、平山夢明作の800字てのひら小説まで!

 また、山下昇平画伯の制作・撮影による装画写真の数々が、本書に得がたい彩りと潤いを添えているように思います。
 この妙に堂々とした面がまえの赤ん坊はナニモノ!? とか、このどこかで見たことのある古書店さんは、何処?
 ……等々の愉しみ方もあり(幽ツイッターをご覧の方なら、お分かりですな!)。

 今すぐビーケーワンでお買い求めいただきますと、入選作家による書き下ろし新作集という豪華特典も付きます。
 多くの皆さまに「てのひら怪談」の魅力を知っていただきたい、そのために最適最強のツールが今回、完成したなという手応えを感じています。
 ぜひ御高覧を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます!



投稿者 東 雅夫 : 2010年06月06日 14:51 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年06月04日

【ホラーな作家たち】第1回 勝山海百合

東雅夫イチオシの、話題と期待の作家たちに、
人生や好きな本を語っていただく新コーナー【ホラーな作家たち】。
第1回にご登場いただくのは、
第2回【『幽』怪談文学賞短編部門優秀賞、第4回ビーケーワン怪談大賞大賞を受賞された
勝山海百合さんです。



幻妖ブックブログを読んでいる皆さん、勝山海百合です。
今日は、私が創作のヒントにしたり、楽しみとして読んでいる本の中から、「北」にまつわる五冊(全集も一冊と数えます)を紹介させていただきます。(なぜ「北」かというと、私自身が本州北部、岩手県の出身だからです)




『日本の食生活全集』農山漁村文化協会
郷里の家で、お祭りのときに作る汁物がある。戻した干し椎茸、人参、大根、油揚げ、コンニャクを短冊に切り、干し椎茸の戻し汁に水を加えて煮る。味付けは醤油で、指先ほどの大きさの色つきの麩を入れ、仕上げに水溶き片栗粉でとろみをつける。名前は特にない。『日本の食生活全集 3 聞き書 岩手の食事』を読んでいたら、同様のものが「ざく煮」と紹介されていて驚いた。名前が付いていることではなく、我が家でざく煮というのは、別の料理だからだ。暮れに作って正月中食べる煮物で、干し椎茸、人参、牛蒡、馬鈴薯、コンニャク、油揚げ、豚肉、凍り豆腐を賽の目に切って煮る。味付けは酒と醤油で、火が通ったら仕上げに刻んだネギを加える。秋田にも似た煮物があるらしい。
このシリーズは読めばいつも何かしらの発見がある。創作のヒントだったり、夕飯のおかずだったり。




吉村昭『三陸海岸大津波』文春文庫
東北の災害と言えば、飢饉・冷害・津波である。わけても太平洋側の三陸地方は、歴史上何度も大津波に襲われている。津波で集落が丸ごと無くなってしまい、被害の全貌がわからないままのところもある。三陸地方に行くと、「津波がこの高さだった」とか「津波がここまで来た」という標識を目にすることが多々あり、波の大きさや強さを生々しく感じて怖ろしくなる。
吉村昭の『三陸海岸大津波』は、文字資料にあたり、体験者に取材して、近現代の三回(明治二十九年、昭和八年、昭和三十五年)の大津波を描き出したノンフィクション。明治二十九年の被災者にも話を聞いているが、今聞いておかねば記憶が失せるという吉村の気迫を感じた。
読んでしばらくは津波が怖くて仕方がなかったが、恐怖だけではなく、悲しみも多く含まれた良書。




布芸展『こぎん刺しの本 津軽の民芸刺繍』文化出版局
こぎん刺しは、江戸時代に麻しか身にまとえなかった津軽の農民が、少しでも暖かくするため、補強のために麻布を糸で縫った(縫い糸には木綿を使ってもよかった)のが発祥と言われている。一見するとクロスステッチ風で、現在ではたいへん洗練された刺繍として知られる。同じ状況にあった隣の南部藩で誕生したのが菱刺しで、両者は似ているが、こぎん刺しは奇数の目を拾い、菱刺しは偶数の目を拾って縫うところが大きな違いである。

津軽は寒冷地のため綿の栽培に適さず、木綿布は贅沢品として農民は触ることも禁止された土地だった。そこで麻を栽培して繊維を取り、糸にして、機織りして、やっと麻布は完成する。その貴重な麻布を暖かく丈夫にするための工夫から出発して、同じ糸を刺すなら美しくしたいと望んで到達した成果がこぎん刺しや菱刺しである。しかし、針をもてるのはいくぶんでも余裕がある家の女で、それさえもかなわない家があったことも知っておきたい。
本書では、伝統的な柄のこぎんを、現代の日常に取り入れる試みが面白い。セーターの肘や靴下の踵に刺したり、ストールに刺したり。モデルの長い黒髪の美少女(入夏)が古い野良着を着ていて似合っているのにも感心したが、古着に細やかに施された刺繍の質の高さにも驚いた(去年、吉祥寺のギャラリーで開催された布芸展で実物を見た。裏も見せてもらった)。




堀井和子『北東北のシンプルをあつめにいく』講談社
北東北の民芸品には北欧デザインにも通じる素朴な美がある、と東京の人(堀井和子)に言われて嬉しいような、恥ずかしいような気持ちになる。自分のことを褒められたわけでもないのに。
人に知られていなくても、手を抜かずにきちんとものを作っていれば評価する人は現れるのだと思った。
堀井の秋田に住む義母が料理上手で、その写真も美味しそうだし、義父が秋田の郷土菓子の諸越を両面焼きで特注していた話も気になった(両面焼きの諸越は既製品を見つけたときに実際に買って食べてみたが、一般的な諸越より香ばしかった)。




ミカエル・ニエミ『世界の果てのビートルズ』新潮社クレストブック
一九六〇年代のスェーデンはパヤラ村が舞台。そこはフィンランド国境に近い北極圏で、住民はフィンランド語を話す。主人公の少年の父親も父親の兄弟も屈強な樵夫。素朴な人々が穏やかに暮らすおとぎ話みたいな物語を期待すると、肩すかしをくらわされる。この当時ビートルズの音楽が世界を席巻しつつあり、女子高生はヘアスプレーで髪を固め、ミニスカートにブーツを履き、タバコを吸いながら氷点下の通りを闊歩する。環境が過酷なため、住民は心身ともに強さが必要で、強さを求めるあまり男は「クナプス(男らしくない)ではない」ことにこだわる。兄弟は殴り合いをし、近所同士で罵り合い、サウナに入りすぎてふらふらになり、意識不明になるまで大酒を飲むことになる。
喜びや諍いのある人間の暮らしが少年の目から描かれて興味深いが、主人公が住んでいる場所がすごく寒いというだけで、どこにでもありそうな話であり、だから共感もする。
北欧はムーミンとサンタクロースとオーロラだけではないことを知る一冊。

00.JPG
画像は、フィンランドのロヴァニエミ(北極圏の入り口)にある世界最北のマクドナルド。ここでハンバーガーを食べると、世界最北のマクドナルドと書かれたポストカードが貰えます。
外観を写真に撮っていたのはちょうど下校時間で、近くのバス亭に高校生が大勢いて、こっちを見て、「観光客、またマクドナルドの写真撮ってるぜ」と笑われたような気がした、思い出の一枚。
"Coffee " と言ったらココアが出てきたのも良い思い出です。

勝山海百合の本























投稿者 coolmint : 2010年06月04日 18:00 | コメント (0) | トラックバック (0)

『幽』13号、ビーケーワン予約開始!

 ただいま制作真最中の『幽』次号の特典付き予約が始まりました。
 下記のとおり、常にも増して物凄い充実ぶりです。
 編集長の小生も、愕然とするほどです(笑)。
 ぜひ御予約・御購読のほど、よろしくお願い申しあげます。

『幽』第13号/内容予告

第一特集 女たちの百物語
実録・百物語怪談会――十名の女性怪談作家による恐怖の宴
 伊藤三巳華、岩井志麻子、宇佐美まこと、勝山海百合、神狛しず、
 加門七海、宍戸レイ、立原透耶、長島槇子、三輪チサ
百物語の作法 加門七海
虚構の「百物語」――鴎外「百物語」関連の新資料を紹介しつつ 中島次郎
百物語文学史&ガイド 東雅夫
女流怪談文学史&ガイド 朝宮運河

第二特集 二百一年目の上田秋成
幻の怪異小説、復活!「山霧記抄」上田秋成/鷹西鉄男訳
怪談作家・秋成を語る 岩井志麻子+堤邦彦+東雅夫
秋成の復活――ポストモダンとしての『雨月物語』 高田衛
墓ふたつ――上田秋成の故地を訪ねて 東雅夫
秋成怪談読書案内 東雅夫

第三特集 書き下ろし競作〈平成・雨月・物語〉
雀野日名子 vs 谷一生

待望の本誌初登場!
恒川光太郎「ニョラ穴」――沖縄怪談/第1回
連載開始記念企画「恒川光太郎と沖縄を歩く」

驚異の新連載攻勢!
京極夏彦、立原透耶、中山市朗、南條竹則
怪談実話コロシアム(雨宮淳司 vs 黒木あるじ vs 松村進吉)

衝撃の文豪怪談実話、解禁!
工藤美代子「三島由紀夫の首」

怪談小説
綾辻行人、小野不由美、有栖川有栖、山白朝子

怪談実話
福澤徹三、平山夢明、小池壮彦、安曇潤平、加門七海

怪談漫画
花輪和一、諸星大二郎、高橋葉介、押切蓮介、伊藤三巳華

インタビュー/エッセイ
「スポットライトは焼酎火」山ン本真樹
唐沢俊一、高原英理、東雅夫、山田誠二ほか



▲特典付き予約受付中。発売と同時にお届け!

投稿者 東 雅夫 : 2010年06月04日 10:52 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年06月02日

「東雅夫のイチオシ棚」更新

ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
遂に出ました『てのひら怪談 庚寅』。怪談の夏はこの一冊なくして語れません。
購入者特典にも注目です。
怪談専門誌『幽』最新号も予約始まっています。
荻原 規子の人気作『RDG』の3巻が入荷。
東北の出版社・荒蝦夷からは内藤正敏『遠野物語の原風景』が刊行。
海外文学では、『モレルの発明』で知られるアドルフォ・ビオイ=カサーレスの
『パウリーナの思い出に』に注目を。
星野之宣の大傑作『宗像教授異考録』の第13集も発売です。












アドルフォ・ビオイ=カサーレス著『パウリーナの思い出に』





投稿者 coolmint : 2010年06月02日 10:23 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年06月01日

第8回ビーケーワン怪談大賞、公募開始!

 ハッと気がつけば、早くも6月に突入。
 そして6月といえば……そう、ビーケーワン怪談大賞、今年も堂々の開幕です!

 目下、文筆モードが非常に切迫した状況ゆえに(汗)多くは語りませんが、まずは下記専用サイトを熟読のうえ、今年の秘策をめぐらしていただきたいと思います。

 http://blog.bk1.jp/kaidan/

 投稿規定に関して若干の変更がありますので、くれぐれも御注意ください。
 常連の皆さんはもちろん、新規参入を勘案中の方も大歓迎です。
 魅惑の800字怪談文芸の世界へ、さあ、御一緒に!



▲そして『てのひら怪談 庚寅』も特典付き予約受付中!

投稿者 東 雅夫 : 2010年06月01日 00:24 | コメント (0) | トラックバック (0)