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【ホラーな作家たち】第3回 朱雀門出
東雅夫イチオシの、話題と期待の作家たちに、
人生や好きな本を語っていただく新コーナー【ホラーな作家たち】。
第3回は、
第16回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞された朱雀門出さんです。
幻妖ブックブログをご覧の皆様。
はじめまして、朱雀門出と申します。
デビューしたての新人ですので、言葉に重みはありませんが、私なりに当幻妖ブックブログに即しているであろうと思われる、オススメの怪奇幻想関連の作品を、拙い読書歴などをまじえながら紹介いたします。
☆『透明人間』H.G.ウェルズ;岩波文庫
H.G.ウェルズの作品はSFとして捉えられていますが、発表当時は怪奇小説として書かれていたと思います。江戸川乱歩の「怪談入門」をあてはめますと、りっぱに怪談にカテゴライズされると思います。
特に、モロー博士の島、透明人間などは、そうではないでしょうか。
ここで取り上げました『透明人間』は、小学生の時に講談社のふくろうの本で読みました。
当時は妖怪ブームで、私もその波に乗って水木しげる著の入門書だけでなく関連本をよく読んでおりました。
ふくろうの本ですと、『きみはなにがこわい? : おばけとたましいの話 』
(松田道雄著)や『おばけを探検する』(北川幸比古著)などがあり、その延長として、『透明人間』も妖怪・オバケの本の一つとして読みました。当時の私の認識も透明人間はオバケの一種なんですね。そういえば、「怪物くん」でも透明人間はモンスターとしてでてきていたと思います。
第一印象はオバケの本でしたが、大人になって読みなおしても良いホラー小説だと思います。
勿論、SFとしても読めるのですが、本作は、科学的アイディアよりも、おどろおどろしさや恐怖をとても大事にしていると思うのです。科学的アイディアをメインにするならば、そういう発明をするところから話が始まるような「科学者目線」があると思うのです。しかし、『透明人間』は怪しげな包帯男の出現から始まり、そういった出だしと怪しげな謎が読みどころなんです。ここが、ホラー小説として楽しめます。

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☆『夢のかたち』澁澤龍彦;河出文庫
妖怪本にハマった子供は、澁澤龍彦に行き着くのではないかと思っております。
違っていたらすいません。ただ、少なくとも私は同じ方向性を延長した先として行き着きました。
澁澤龍彦の著作はどれも好きです。『黒魔術の手帖』などのエッセイや『高丘親王航海記』などの小説、どれもオススメしたいのですが、その澁澤龍彦のアンテナにひっかかった言葉を集めた物というのが、今私がこちらでやっている本の紹介と若干リンクしているという面白さもあって、(言葉の標本函)をオススメします。
『夢のかたち』は、その(言葉の標本函)シリーズの一つで、夢に関する”惹かれる”文章が文学作品や歴史的な著作から二百編以上も集められています。シリーズには『オブジェを求めて』『天使から怪物まで』があり、それぞれオブジェ、怪物をテーマとして同様な収録が行われております。
妖怪本にハマった子供が行き着く先という本文の流れからすると、怪物テーマの『天使から怪物まで』がオススメちゃうんかというツッコミがあろうかとは思いますが、想像の自由さ、意外さ、それらの多様さから、一冊を選ぶとしたら『夢のかたち』です。

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☆「乳母車」氷川瓏
『怪奇探偵小説集 1』鮎川哲也編;ハルキ文庫
『怪奇探偵小説名作選 氷川瓏集 』ちくま文庫……などに収録
私はウェブサイトを持っているのですが、そこで毎週一冊分の読書感想を百回、修行のようにアップしておりました。今は恥ずかしくて隠しているのですが、そのページの延長で「怖さの感覚が麻痺した自分が、再読しても怖さを感じる作品がある。それらを3編挙げる。」として、紹介したのがこの「乳母車」です。
(あとの二つは「憑依教室」大原まり子と「怪魚知音」飯野文彦)
「乳母車」はどぎつさはなく、静かに上品に展開する作品ですが、ぞっとする切れ味の鋭い良作です。
『怪奇探偵小説集 1』は取り寄せに少し時間がかかりますし、『怪奇探偵小説名作選 氷川瓏集』は購入できませんになっており、紹介す
るのは恐縮いたします。ただ、『怪奇探偵小説集 1』は「探偵小説集」とはありますが、他の収録作もホラーとして面白いものが多いです。

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☆『おさる日記』和田誠;偕成社
絵本は必ずしも子供だけの読み物ではないと思っております。
『おぞましい二人』(エドワード・ゴーリー著;河出書房新社)などの、人の心が持つ不気味さや狂気に怖くなるような、明らかに大人向けの絵本もございます。
こちらの幻妖ブックブログでも『こっそりどこかに』(軽部武宏著;長崎出版)が紹介されていましたし、絵本であっても充分に紹介に足る作品はあると思います。
中でもこの『おさる日記』は、一見子供向けの絵本ながら、タイトル、文章、ストーリー、オチとすばらしいものです。
『おさる日記』に限らず、本を紹介することによって、身構えたり、期待が膨らんでハードルが上がるということがよくあり、ここでもその点を怖れるので、あまり突っ込んだことは申しませんが、『おさる日記』は大変良い作品です。

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☆『ザ・聊斎志異 大活字版 聊斎志異全訳全一冊』蒲松齢(柴田天馬
訳);第三書館
愛読書である角川文庫版の『聊斎志異』全四巻を挙げようと思ったのですが、現在は古書としてしか購入できないようなので、同じ柴田天馬訳であります、本書を挙げました。
聊斎志異自体は、平凡社ライブラリーや岩波文庫(ワイド版も)などでも出ているのですが、私が好きなのは柴田天馬訳です。
簡潔な和文に混じって原文が顔を覗かせているのですが、それがなんとも雰囲気が出ていて良いのです。その原文もルビで邦訳が付いているのですが、その表現法はうまいと思います。
例をあげますと、「……と言って老人は挙手相揖(あいさつをかわ)した。」
などの言い回しは状況が鮮やかに浮かんできますし、「近巫蠱(まじないみたい)な事」など、怪奇趣味をくすぐる表現にはグッときます。
日本の怪談を時系列的に遡っていきますと、分岐はあるでしょうが、一端として中国志怪に行き着くように思うのです。
過去の名作を楽しみだけでなく執筆の参考に読むことがありますが、効率を考えると多くの作品を取り上げたものは、ネタ本として適しています。
時代的に近いものですと、『田中貢太郎 日本怪談事典』(伝奇の匣6;東雅夫編;学研M文庫)などは私のネタ本的な位置にあります。
さらに遡ると江戸期の随筆などは興味深く、この時代ですと『奇談異聞辞典』(柴田宵曲編;ちくま学芸文庫)などはネタ本として優れています。それから、柴田宵曲著ですと、『(正・続)妖異博物館』(ちくま文庫)もオススメです。
ちなみに、『てのひら怪談 庚寅』に録っていただいた拙作「やまんぶの帯」にでてくる怪物”やまんぶ”は『奇談異聞辞典』や『妖異博物館』に掲載されている、あるエピソードを元に考え出したものです。
日本のものばかりを挙げましたが、中国ものも面白いですし参考になるんですね。前述の『続 妖異博物館』でも志怪ものから録り上げられていますが、名作の原点と思われるようなエピソードに出会えたりもします。品切れ状態で恐縮ですが『鬼趣談義』(沢田瑞穂著;中公文庫)はオススメです。
今回紹介しました『聊斎志異』もある意味ネタ本的な存在ではあります。そういった意味では同時代の『閲微草堂筆記』も同じような位置にあります。
ですが、『閲微草堂筆記』の各話が体験・事実の記載・記録的なのに対し、『聊斎志異』の各話は(中には短くて記録のようなものもありますが)小説であり物語としての面白さがあります。それもあって、ここでは『聊斎志異』をオススメいたします。

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……思い入れのあるオススメ本といえば、まだまだ紹介し足りなくもありますが、最後に、これだけは挙げておかなければならない本をご紹介いたします。
『今昔奇怪録』(朱雀門出著;角川ホラー文庫)です。
大変、重要なことなので、もう一度申します。
よろしければ、『今昔奇怪録』をお手にお取り下さい。

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ウェブにはあまりふさわしくない長文ですが、最後までお読み下さり、誠にありがとうございました。
投稿者 coolmint : 2010年07月18日 01:48
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コメント
初めまして。
書名で検索して見つけました。
よかったらご覧ください。
http://fusho.exblog.jp/14333200
投稿者 仰天思考 : 2010年09月16日 13:45

