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2010年12月22日

「東雅夫のイチオシ棚」 更新

ビーケーワンの辻です。
「東雅夫のイチオシ棚」 更新しました。
好評の『怪談実話系』の第5弾が発売。
角川ホラー文庫では
田辺青蛙待望の最新作『皐月鬼』と福澤徹三の傑作短編集『怪談熱』に注目。
ホラーではありませんが、福澤さんはサスペンス『汝、隣人を愛せよ』も刊行されています。
西崎憲『蕃東国年代記』は摩訶不思議な異世界ファンタジー。
そして好評予約受付中の荒蝦夷の2冊
木瀬公二『100年目の『遠野物語』 119のはなし』と『仙台学 vol.10』 。



















投稿者 coolmint : 2010年12月22日 11:23 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月21日

荒蝦夷から新刊ゾクゾク

 いまや「みちのく怪談」出版社といっても過言ではない陣容を着々と調えつつある仙台の荒蝦夷から、またまた注目の新刊が2冊、年末に登場します。


 『100年目の「遠野物語」 119のはなし』は、岩手県遠野市に移住した朝日新聞記者の木瀬公二氏が、遠野物語百周年を迎える地元の日常風景の中から、『遠野物語』の世界に通ずるトピックスを足で拾い蒐めた119のコラム集。『朝日新聞』岩手版に連載されて話題を呼んでいたものです。現代の遠野の日常に息づく怪異も見え隠れする興味深い内容ですので、怪談/妖怪系の皆さんも御注目のほどを。

 そして噂の『仙台学』次号「みちのく怪談」特集も、いよいよ来週発売。
 東北地方以外では入手が難しいのですが、ビーケーワンなら発売と同時に、お手元に届きます。
 なにやら愉しみな特典も付く模様ですので、ふるっての御予約をお待ち申しあげております。



▲『仙台学』の「みちのく怪談」大特集号!
全入選作掲載のほか、黒木あるじと勝山海百合対談ほかも。

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▲『仙台学』次号の書影が到着!

投稿者 東 雅夫 : 2010年12月21日 16:48 | コメント (0) | トラックバック (0)

100話目の怪談を、どうぞ!

 『幽』編集部編『怪談実話系5』が、MF文庫ダ・ヴィンチから発売になりました。
 小生はいつものように序文を寄稿しております。

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 今回の「実話系」は、ひと味ちがいます。
 大反響をいただいている『女たちの怪談百物語』から誕生した、スピンアウト企画といってもよい競作集だからです。
 百物語では、最後の百話目をあえて語らないことで、本物の怪異が起きるのを未然に防ぐという作法があります。
 先日の百物語でも、この法式に則ったのですが、その「語られなかった最終一話」を、参加作家全員に「実話系」作品として書き下ろしていただくというのが、今回のコンセプト……我ながら、よくぞ閃いたものであります(笑)。

 果たして、常にもまして、気魄のこもった作品が勢揃いしました。
 語られる怪談と、文字に書かれた怪談との違いを、如実に感得できるという意味でも、貴重な読書体験を得られる本になったのではないかと自負しております。
 聖なる夜に、怪談シスターズからの恐怖の贈り物を、どうか御堪能くださいませ!






投稿者 東 雅夫 : 2010年12月21日 16:14 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月14日

「視点・論点」に出演

 NHK教育テレビ(再放送は総合テレビ)の「視点・論点」という論説番組で、「遠野物語100年」というお題で話をしてほしいと依頼があり、本日、渋谷の放送センターで収録がおこなわれました。
 まあ、このテーマで、よりによって小生にお声がかかるということは(笑)……当然のことながら、怪談文芸の視点から眺めた百年目の『遠野物語』をめぐって、約10分間、お話しさせていただきました。

 12月15日(水)の夜22:50から教育テレビで、翌16日の朝04:20から総合テレビで、それぞれ放送される予定です。

 「視点・論点」への出演は初めてでしたが、なんとこの番組、撮った当日に放送されることも間々あるのだそうで、広いスタジオ中央に設けられた演壇に待機して、スタッフの皆さんがテキパキと、小生が持参した関連資料本やポスター(みちのく怪談コンテスト!)を黒い台に並べて撮影するなど準備に余念がない様子をじっくり拝見できたのは、興味深かったです。

 しかも、収録した映像の編集は一切なし。これは論者の見解をありのまま、制作サイドの恣意を交えず伝えるためなのだとか(政見放送と同じ?)。
 それゆえ、放送時間にうまく収まるように話さねばならず緊張しましたが、スタッフの好アシストのおかげで何とか大過なく語り果せることができました。

 今年は「妖しき文豪怪談」やら「最恐!怪談夜話」やら「日本怪談百物語」やら……何かとNHKさんと御縁のあった一年でしたが、その締めくくりに、「怪談文芸」や「怪談実話」や「みちのく怪談」について、思いのたけをお話しすることができて、本当に嬉しく思います。
 年末の忙しい時期ではありますが、御高覧いただけましたら幸甚です。









▲『遠野物語』100年と三島由紀夫没後40年を鑑みるための三点セット!

投稿者 東 雅夫 : 2010年12月14日 00:45 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月12日

レオ・ペルッツの全貌

 『第三の魔弾』や『最後の審判の巨匠』で幻想文学ファンにはおなじみのオーストリアの作家レオ・ペルッツの邦訳が、なんと法政大学出版局の〈叢書・ウニベルシタス〉から上梓されました。
 装幀も、パッと見、ウニベルシタスとは気づかない装いに(笑)。
 本書『ウィーン五月の夜』は、ハンス・ハラルト・ミュラー編纂によるアンソロジー形式の作品集で、1906年から1939年の間に執筆された、ペルッツの短篇小説・紀行文・文芸評論などが収録されています。
 ペルッツの短篇作品というと、亡き前川道介翁による『独逸怪奇小説集成』所収の「月は笑う」くらいしか、すぐに読める既訳はなかったかと記憶するので、有意義な新刊といえましょう。ちなみに「月は笑う」は、小生編のアンソロジー『書物の王国4 月』にも採らせていただいた、好きな作品です。












投稿者 東 雅夫 : 2010年12月12日 12:59 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月10日

【増刷記念】真冬の百物語本まつり!

 小生監修『女たちの怪談百物語』が、シーズンオフの今の時期にもかかわらず、早くも増刷決定しました!
 夜を徹して渾身の怖い話を御披露くださった10名の参加作家の皆さん、必殺見届人を務められたばかりか本書巻末に特別寄稿を頂戴した京極夏彦さん、愛らしくも妖しい素敵なデザインに仕上げてくださった装幀の名久井直子さん、表紙にカットにカワコワイ装画の数々を描き下ろしてくださった(参加者の一員でもある)伊藤三巳華さん、突貫作業でテープ起こしから構成まで御担当いただいた門賀美央子さん、編集担当の信陽堂Tさんほか制作販売に尽力いただいたメディアファクトリーの皆さま、そしてなにより、御支援を賜った読者諸賢に深謝いたします。

 思えば小生にとって最初の百物語本となった『文藝百物語』は、後に角川ホラー文庫に収められて地道に版を重ねていますし、ちくま文庫版『文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会』も、シリーズで一、二をあらそう好成績を上げています。
 そういえば拙著『百物語の怪談史』(角川ソフィア文庫)も珍しく(笑)重版かかってましたな。
 ……というわけで根強い人気を誇る百物語ドキュメント本の数々を掲げてみました。
 冬の夜長に炬燵で怪談会本を愉しむのも、オツなものです。ぜひ、おためしあれ!



▲増刷御礼!



▲8名のホラー作家が語り明かした恐怖の一夜。



▲明治の文人墨客名優たちによる百物語本を復刻。



▲鏡花とお化け好き仲間たちが催した怪談会を集大成。



▲近代最初の百物語本を復刻した貴重な一巻。



▲内外の百物語の歴史を通覧した研究書。

投稿者 東 雅夫 : 2010年12月10日 15:26 | コメント (0) | トラックバック (0)

黒鳥忌に

 1993年12月10日の午後、日野市の病院に入院中だった中井英夫さんをお見舞いした。
 ちょうど制作中だった『幻想文学』40号の校正刷(『虚無への供物』を50回は読み返していると語る奥泉光氏の取材記事)を、病床に横たわる中井さんにお目にかけたことを覚えている。

 その夜おそく、晩年の中井さんの助手を務めていた本多正一さんから容態急変の連絡が入り、ほどなく逝去の知らせがあった。
 本多氏に「今日は『虚無への供物』幕開けの日でしたよね……」と昏い声で告げられ、あまりの暗合に愕然としたものだ(詳しくは『幻想文学』40号の追悼特集「眠れ、黒鳥」を参照)。

 そこから仮通夜に至るまでの細かい記憶が見事に飛んでいるのだが、ひとつだけ鮮明に記憶していることがある。
 事務所に戻って緊急の雑事を片づけ、喪服の用意なども済ました後、ぽっかり空き時間ができた。
 ふと思い出したのが、その日が東宝映画『ゴジラvsメカゴジラ』の公開初日だったこと。
 ふらふらと(喪服姿で)銀座マリオンにおもむき、映画館のシートに茫然と腰を下ろして、伊福部昭作曲による重厚なメインテーマ曲が鳴り響いたとたん、強烈な喪失感がこみあげ、はからずも闇の中で落涙していた。



▲『ゴジラvsメカゴジラ』は、翼竜愛に満ちた映画としても有名。
劇中に登場する「趣味は……プテラノドン」は、翼竜史に残る名台詞。

 だから今でも小生は『ゴジラvsメカゴジラ』を観たり、あのテーマを耳にすると、あの日のことを思い出すのであります。



投稿者 東 雅夫 : 2010年12月10日 15:02 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月09日

鏡花の水脈としての『流跡』

 双葉社の『小説推理』1月号が発売中です。
 新年号にふさわしく、今回から表紙デザインが一新されています。

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 「小説の話をしよう。」というのはキャッチフレーズというかスローガンみたいなもの(?)らしく、別にそういう特集とか企画が組まれているわけではありません(笑)。

 さて、今月の「幻想と怪奇」時評では、朝吹真理子『流跡』について、ついつい熱く語ってしまったため、取りあげている冊数は、山尾悠子『夢の遠近法』との2冊だけになっちまいました、いやはや。
 『流跡』のどこがそんなに面白いのかというと、随処に看取される鏡花世界へのオマージュなのですな。
 詳しくは時評の現物を是非とも御高覧いただきたいのですが、作中に鏤められた特徴的モチーフの数々といい、水際立った文体、語り癖といい、これは鏡花へのラブレターではないのかと思えるくらい。
 いや何よりも、無限変容する〈水〉のイメージさながら、絶えず形を変えて先へ先へと流れ続ける作品のありようそのものが、鏡花幻想の世界と通底しているように感じられてならないのです。
 各処で称讃の声を聞くわりに、そうした点について言及されている方が意外に少ないようなので、あえて贅言を費やしてみた次第です。






投稿者 東 雅夫 : 2010年12月09日 17:38 | コメント (0) | トラックバック (0)

東西怪獣怪物怪人画廊

 怪獣の本といえば、先ごろ刊行された『世界の怪物・魔物文化図鑑』に載っている、この絵(左ページ)をご覧あれ。

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 カミーユ・フラマリオン『人類創生以前の地球』のために描かれたモッティの装画「現代の都市にあらわれた先史時代の怪物」だが、このワクワクするような感覚こそ、『キングコング』から『ゴジラ』に至る怪獣映画の原点といえそうではないか!
 ちなみに本書には大きな特色がある。
 西欧圏のみならずワールドワイドな視点から怪物画や驚異博物誌の図像を渉猟し、しかもそれを意図的に、東西を対比させる形で展覧している点だ。
 たとえば、こんな具合に――。

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 こうした東西幻想絵画の積極的対比は、かつて澁澤龍彦によって、いちはやく先鞭がつけられていたことを想起される向きも多かろう。
 ややお値段は張るものの、入手して後悔しない一巻ですぞ。






投稿者 東 雅夫 : 2010年12月09日 17:01 | コメント (1) | トラックバック (0)

思いがけない東宝特撮関連本など

 今年の年間マイベスト3にも選んだ『杉村顕道怪談全集 彩雨亭鬼談』(荒蝦夷)をはじめとして、このところ、思いもよらない本が刊行されて、嬉しい驚きを味わわせてくれる傾向にあるのは、実に悦ばしいことだと思う。
 今日も今日とて、たとえばこんな本が刊行されていることを、ツイッター経由で知った。


 怪談文芸ファンには「逗子物語」「蒲団」などの名作幽霊譚でおなじみの橘外男の自伝的長篇で、生前は代表作のひとつに数えられていた作品である。
 自伝としての信憑性には、いささか疑問符もつくのだが、そこはフィクションと割り切ってしまえば、波瀾万丈な一種の暗黒小説として愉しむこともできる。

 続いては、この本。


 日本特撮の父にしてゴジラやモスラやラドンの生みの親となった特技監督・円谷英二が書き残したエッセイの類を集大成した一巻。円谷関係の文献資料蒐集に執念を燃やす竹内博さんでなければ、到底なしえなかった仕事だろう。
 小学校低学年の頃、自発的にファンレターを円谷プロ気付・円谷英二様で郵送(著名人にいきなり手紙を送りつけたのは、後にも先にもこれ一度きりの椿事)したことのある小生としては、見逃せない好企画である。

 ちなみに円谷/東宝の特撮関係では最近、マニア向けの好著が相次いでいる。





 上は、円谷監督を「オヤジ」と慕ってやまなかった東宝撮影所の特殊技術課スタッフが、それぞれに往時を回顧したドキュメント集。現場で仕事をしていた人たちならではのナマナマしい証言の数々に思わず引き込まれる。
 下は、円谷との名コンビで『ゴジラ』に始まる東宝特撮映画の本編を監督した本多猪四郎が、みずからの映画人としての歩みを回顧した談話録。これまた思いがけない復刊となった。

 円谷英二、本多猪四郎とくれば、もうひとり欠かせないのが、あまりにも有名な「ゴジラのテーマ」や「怪獣大戦争マーチ」等々、東宝特撮映画の音楽を担当した作曲家の伊福部昭。
 その伊福部に始まるゴジラ映画音楽の歴史を丁寧な取材を重ねて跡づけ、さらには音楽とそれぞれの時代史とを交錯させるという魅力的な構想で書かれた次の本も、今年の大きな収穫といってよかろう。


 ちなみに本書の著者と小生は同い年なので、その論旨を離れたところでも、あれこれ思い当たるくだりがあって(なぜカバー写真がモスゴジのあのスチルなのか、とか)、とても面白く読んだ。

投稿者 東 雅夫 : 2010年12月09日 06:12 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月08日

FKB座談会 in ダ・ヴィンチ

 今月の『ダ・ヴィンチ』ではもう一件、「幽・怪談通信」のコーナーに掲載されたFKB座談会でも司会役を務めております。
 なお、記事のリード部分に「鼎談」とありますが、鼎談は3人でやるもの。今回のは黒史郎、黒木あるじ、松村進吉という怪談実話の精鋭3名に、監修役の平山夢明さんも加わった四人衆ですから、鼎談ではなく座談会ですね。謹んでお詫びし、訂正します(小生がチェックしたときには、この語は無かった気がするんだがなーおかしいなー)。

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▲対談終了後に近くの稲荷社で撮影した四人衆。
しかし揃って好い面構えをしてますなあ(笑)。

 竹書房文庫で刊行開始された新レーベル〈FKB〉は、現代怪談実話のリードオフマンとして活躍してきた平山夢明さんが、「こいつなら怪談実話の次代を託せるんじゃないか」と見込んだ新進作家たちとそれぞれタッグを組んで、新感覚の怪談本をつくりあげるという注目すべき試みです。
 しかもその第一陣に黒史郎氏、第二陣に黒木あるじ氏と、共に「てのひら怪談」と『幽』から巣立った両新鋭が起用されたことは、小生としても歓びに堪えませんし、全面的に応援していきたいと思っています。近く刊行される松村氏の『異聞フラグメント 切断』、黒氏の第2弾『人間溶解』(笑)も愉しみです。

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▲撮影のあとでメディアファクトリーに戻り、福澤徹三さんも加わって、
東京ガベージコレクションのための収録もおこなわれた。

 果たして今回の座談会でも、出席の黒々としたトリオに限らず、怪談執筆に志す若い人たちの参考になり、励みにもなるような発言が次々と飛び出し、まことに充実した内容となりました。
 これではとてもじゃないが、「幽・怪談通信」の見開きページでは収まらない。
 ……かくして一計を案じ、来年メディアファクトリーから刊行されるある本に、今回の座談会を丸ごと収録する腹づもりでおりますので、乞御期待!

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▲坊主・髭・眼鏡の怪談三点セット!












投稿者 東 雅夫 : 2010年12月08日 16:28 | コメント (0) | トラックバック (0)

今年のマイベスト3 in ダ・ヴィンチ

 『ダ・ヴィンチ』新年号が発売になりました。
 今年も年末恒例「BOOK OF THE YEAR」に小生も参戦。今年の収穫ベスト3を選んでみました。
 結果的にホラー系、幻想文学系、怪談系から各一冊という、なかなかバランスのとれたチョイスになりましたが、これはあくまで偶然です(笑)。
 今年は他にも挙げておきたい本が多々あって悩みました……。








 驚いたことに、今年は『アナザー』がミステリー評論家の佳多山大地さんと、『歪み真珠』が純文系文芸評論家の清水良典さんと、重複チョイスになっていました。
 両書が卓越した出来映えであることはもちろんですが、同時に怪奇幻想文学というものの浸透が着実に進んでいることを実感しますな。



投稿者 東 雅夫 : 2010年12月08日 15:49 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月07日

『幸田露伴集』のお伴に『漢文法基礎』をどうぞ

 シーズンオフにもかかわらず先週から何かとバタついていて、今日になってやっとリアル書店をゆっくり徘徊することができた。
 ウェブ書店、とりわけ我がビーケーワンは至便この上ないけれども、やはり定期的にリアル書店を巡回しないことには如何ともしがたいのは人情というものだろう。
 『ハイパーホビー』購入のついでに文芸誌売場を眺めると、噂の創刊誌群が平台にズラリ。
 〈女性〉あり〈推理〉あり……色々とコンセプトに趣向を凝らしているはずなのだが、サテ、こうして居並ぶと、なんとなーく似たり寄ったりの印象に見えてしまうのは、どうしたことか。
 あ、そうか、皆さん、かの『yomyom』を意識しているのかな、と気がついた。
 シンプルで、読みやすく、おしゃれな誌面。
 小生みたいに古い人間は、もっと混沌としてパワフルなたたずまいこそ雑誌の身上だと思うのだが、そういうのは当節、流行らないのかしらん!?
 まあ流行り廃りなんてのは振り子の運動みたいなもので、そのうち揺り戻しがくるのだから……と、『幽』は独り我が道を往くのである(笑)。
 今号も、表紙からして混沌とした妖気を発散しておりますよ(予約好調御礼!)。

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 ぐふふふふふ、このコじゃれた平台の一角に、もうすぐ妖しい最新号が乱入するのか……と、ほくそ笑みながら文庫売場に足を向けると、アッと驚く書名が目に飛び込んできた。
 知る人ぞ知る漢文入門の名著、いやむしろ畏敬をこめて奇書と呼ぶほうがふさわしい、二畳庵主人(その正体は儒教研究の泰斗・加地伸行氏だったことが、今回はじめて本人によりカミングアウトされた)著『漢文法基礎』。なんと講談社学術文庫から、待望の文庫化復刊である。


 もともと高校生向けの大学受験参考書として書かれたものだが、とにかく語り口が尋常ではない。

 「文末の助字と言えば「兮(けい)」というものがある。伝統的な解釈では、「歌末の余声」。「歌末」であるから、歌謡の一区切りのあと、ということである。ま、てっとりばやく言えば、おはやしのことである。月ガ出タ出タァ……サノヨイヨイ、の「サノヨイヨイ」と同じである。「兮」という字を見て、高級なことを連想しては誤り。要するに、実際に歌を歌ったとき、あとにくっつける「調子」と考えればよい。現代詩は文学芸術作品とやらで、完全に言語のみに頼っているが、その昔の漢詩は、本来、歌と切っても切れない関係にあった」

 ……といったような調子で、二畳庵先生、飛ばす飛ばす(笑)。
 それでいて肝心な要点、漢文読解の基本もキッチリ押さえられているのだから、鬼に金棒である。
 参考書というよりもむしろ消閑の読み物として、寛いで愉しむにふさわしい。
 たとえば『文豪怪談傑作選 幸田露伴集 怪談』で、みずからの漢文読解能力に忸怩たるものを感じた向きには、恰好の漢文再入門の案内役となるだろう一冊でもあるのだ。






▲『幽』次号は特典メルマガ付き予約受付中!

投稿者 東 雅夫 : 2010年12月07日 04:50 | コメント (0) | トラックバック (0)

『海の志願兵』について

 佐藤さとると横須賀といえば、「父と子の飛行機の話」というエッセイの中に、次のような一節があります。

 「昭和のごく初期、ようやく物心ついたころの私は、横須賀の谷戸(やと)の奥の町に住んでいた。岡の斜面を少し削って家をのせたようなところだった」

 丘の上に拓けた新興住宅地から谷戸を抜けて小中学校に通っていた小生など、これを読んだだけで、ああ、横須賀だなあ、と感じ入ってしまいます。
 それはさておき、佐藤一家が横須賀に暮らしていたのは、父親の完一氏が海軍に勤務していたからでした。実は小生の父も予科練で終戦を迎え、戦後もそのまま横須賀の海上自衛隊に入隊、復員局で働いていた母と知り合い結婚して小生が生まれたわけで、まあ軍港横須賀なかりせば、佐藤さとるのファンタジー世界も、『幽』や『幻想文学』も無かったかもしれないということですな(笑)。

 それまたさておき、今年6月に刊行された佐藤の『海の志願兵 佐藤完一の伝記』は、敬愛する父が残した大量の手記などをもとに、その半生を跡づけた評伝小説です。
 北海道の屯田兵村に生まれ、17歳で横須賀海兵団に志願、機関科兵として昇進を重ね、ミッドウェー海戦で空母「蒼龍」と共に45年の生涯を閉じた……と記すと、いかにも武張った話に思われるかも知れませんが、著者が活き活きとした筆致で描き出すのは、貧しい生い立ちながら向学心に富み芸術を愛する青年の成長物語であり、その背景をなす大正という時代ののびやかな空気です。
 横須賀に生まれ育った小生としては、往時の当地の風俗人情が、主人公の眼を通して活写されているのも、たいそう興味深いところでした。特に関東大震災直後の港や町の描写など迫力満点で、貴重な記録でもありましょう。

 テレビドラマ化で話題の『坂の上の雲』が「明治の海軍」を英傑たちの視点から描いた物語とするなら、こちらは「大正の海軍」を、無名の一兵卒一庶民の視点から、そしていかにも大正的な空気感とともに描いた物語であるともいえそうです。
 著者はあえて、日本が太平洋戦争に突入する前の小春日和のような時代で、筆を留めているのですから。
 久しぶりの休暇を家族とともに過ごす完一が、原っぱで子供たちに逆立ちをしてみせるラストシーンに続く「追記」には、次のように記されています。

 「この場面が、実のところ私の生涯最初の記憶となった。前後のことはいっさいわからない。しかし、このときの明るい空、やわらかい草原の感触、そして目の前でさっと上下逆さまになった父の姿を、私はくっきりと覚えている」

 そう、本書は佐藤さとる自身にとっての〈始まり〉の物語なのだともいえるのではないでしょうか。
 最後にもうひとつ、版元のホームページに掲載された著者メッセージの中から、こちらも横須賀絡みでとても印象的な一節を引いておきます。

 「海軍の機関兵だった父との別れは、今も鮮明に覚えている。私が旧制中学3年生(14歳)のとき、二人でプラットホームに立ち、別々の方面に向かう電車を待っていた。先にきた上り電車に乗った私は、いつもの癖でガラス越しに、父に挙手の礼をした。すると、ふだんはうなずくだけの父が、白い手袋をひらめかせ、さっと年季の入った海軍式の敬礼を返してくれた。これが、父を見た最後だった。父は下り電車に乗って横須賀に行き、ミッドウェーに出撃して、もどらなかった」



投稿者 東 雅夫 : 2010年12月07日 00:19 | コメント (0) | トラックバック (0)

2010年12月06日

懐かしの平坂書房

 所用あって久しぶりに横須賀の実家に戻ったら、母親が最近タンスの抽斗で発掘したという昔の写真を持ち出してきました。

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 ひいいいいい!
 裏にメモされた日付は昭和53年(1978)8月――当時アルバイトしていた横須賀中央の平坂書房本店で撮られた勤務中の姿です。
 時に小生、ちょうど二十歳(笑)。
 それはともかく、背後に写っている当時の本店奥の書棚があまりに懐かしいので、お披露目させていただきます(本店の建物があった場所は現在、大型商業施設に様変わりし、平坂書房はそのワンフロアに移転しとります)。

 向かって右手は宗教・哲学関係書、奥は人文書と常備契約版元の棚、写真には写っていませんが左手には文芸書が並んでいました。
 右手奥に見える非常口には狭くて急な階段がついていて、学参時期には在庫の詰まったダンボール箱を4階の倉庫まで担いで運び上げるのが大仕事でした。
 それ以外は、写真に写っているように返品本の伝票記帳と荷造りが主要業務で、この時期に出版界の裏側を少しだけでも垣間見ることができたのは、後々の活動に大いに役に立ちました。
 当時の小林社長や木田店長、社員の皆さん、パートのお姐さま方には、本当にお世話になりました(深謝)。
 社会人としての生活に必要なことの多くを、小生は平坂書房で学んだといっても過言ではないくらいなのであります。



▲横須賀を代表する幻想文学作品といえば、こちら。
起伏のある地形に家々が点在する風土が鮮やかに描き出されています。



▲そして先ごろ梨木香歩の解説付きで再文庫化されたこちらも!

投稿者 東 雅夫 : 2010年12月06日 21:16 | コメント (0) | トラックバック (0)