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幻妖ブックブログ座談会企画「2011年のおすすめBOOKS」3/3

★怪談文芸の新しい流れ

辻■今年は東日本大震災の影響もあって、怪談の本はあまり出版されないのではと危惧していたんですが、7月過ぎてから意欲的な作品が続々登場しましたね。ここでいくつか挙げておくと、『怪談実話コンテスト傑作選2 人影』(MF文庫ダ・ヴィンチ)、竹書房のFKBシリーズ、FKBにも入っている黒木あるじさんのがんばりが印象的で、『無惨百物語』(MF文庫ダ・ヴィンチ)は質量ともにすばらしい怪談本だったと思います。『怪しき我が家』(MF文庫ダ・ヴィンチ)は競作集。福澤徹三さんの『怪談歳時記』(角川ホラー文庫)は小説集。怪談実話漫画に「エッセイ」風という新しいジャンルを切り開いた伊藤三巳華さんの第二弾、『視えるんです。2』(メディアファクトリー)も好評でした。加門七海さんの世にも奇妙な猫オカルト・エッセイ『猫怪々』(集英社)、工藤美代子さんの『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』(メディアファクトリー)という異色作もありましたね。



怪談実話コンテスト傑作選 2 人影 MF文庫ダ・ヴィンチ



無惨百物語 怪談実話 ゆるさない MF文庫ダ・ヴィンチ
黒木 あるじ



怪しき我が家 家の怪談競作集 MF文庫ダ・ヴィンチ
皆川 博子ほか



怪談歳時記 12か月の悪夢 角川ホラー文庫
福澤 徹三



視えるんです。 2 幽BOOKS
伊藤 三巳華
出版:メディアファクトリー



猫怪々
加門 七海
出版:集英社



もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら 幽ブックス
工藤 美代子
出版:メディアファクトリー


門賀■工藤さんの『もしもノンフィクション作家がお化けに出会ったら』は面白かったですね。

東■すでに5刷まで行ってます。怪談実話の単行本としては、近年では画期的なことだと思いますね。

平■どういう層の読者が買っているんでしょうか。

タカザワ■幅広いと思いますね。工藤さんはベテランのノンフィクション作家ですから、もともとの愛読者もいると思いますし。三島由紀夫の首についてのエピソードなど、一般の読書家が興味を惹かれるエピソードも入っていますし。

東■横尾忠則さんが朝日新聞に書評を寄せたことが、ブレイクのきっかけになったようですね。文庫の怪談実話本を読んでいる若い読者とは違う層にもアピールしていると思います。内容的にも「ここまで書いちゃって、本当にいいんですか?」と、こちらが心配になるほど赤裸々に、御家族のことなども書いていらして敬服させられますね。工藤さんは熟年世代の性の問題についても書かれていますが、それと同じようなスタンスで書かれているような気がします。

門賀■工藤さんは怪談を書こうと思われているのではなく、あくまでノンフィクションとして書かれている。だから面白かったんだと思います。

平■肩の力が抜けている。

タカザワ■楽しみながら書かれた部分もあったんじゃないでしょうか。ふだんのお仕事が取材をして、文献をあたって、という積み重ねのお仕事ですが、この本はこれまであまり明かして来なかったご自身の体験を書かれています。怪談の話法にしたがっていないところがまた新鮮で。

門賀■なのに、かえって、ここが怪異だというポイントを浮き上がってくるんですよね。

タカザワ■とてもリアルに感じました。

東■工藤さんの『もしノン』のほかにも、ノンフィクションの分野では今年、石井光太さんの『飢餓浄土』と『遺体』という問題作が印象的でした。東南アジアをはじめとする貧困地域・紛争地域に腰を据えたルポルタージュを発表してきた気鋭の書き手ですが、今年出た両書では驚くほど怪談実話の領域に接近していて、これは怪談マニアや書き手の方々も、お読みになるといろいろと刺戟を受ける内容だろうと思いますね。それから……実は目下制作を進めている『怪談実話系7』(MF文庫ダ・ヴィンチ)に、やはりノンフィクションの分野で活躍されている高野秀行さんにご寄稿いただいているんですよ。



飢餓浄土
石井 光太
出版:河出書房新社



遺体 震災、津波の果てに
石井 光太
出版:新潮社

タカザワ■高野秀行さんは『幻獣ムベンベを追え』などの秘境探検ノンフィクションで有名ですね。

東■今回書いていただくのも、そうした探険行の途上で見聞された怪談実話です。打ち合わせの席で、いきなり柳田國男『遠野物語』の話が高野さんから飛び出したのは(笑)嬉しい驚きでしたね。

タカザワ■おそらくノンフィクションの書き手にとって怪異ってメインでは書けないものだと思うんです。それって料理でいえば使わなかった部位みたいなもので、怪談という料理法で美味しい料理ができる。そういう意味での怪談の有効性も感じますね。

東■エピソード的なものとして触れることはあっても主題ではないですからね。前に書かれていることでも、「怪談」という括りにすると、新しい作品になる可能性がある。『新耳袋』や『「超」怖い話』以降というか新しい怪談実話の担い手を模索する過程で、『幽』怪談実話コンテストやFKBの動きが始まり、そこから黒史郎、松村進吉、黒木あるじ、三輪チサといった若手の注目作家も登場してきていますが、そこにノンフィクションという異分野から新たな刺激がもたらされて、2012年の怪談実話界はさらに面白くなると思います。『幽』で続けている「怪談実話コロシアム」の新展開が、おそらく来年の台風の目になると予言しておきましょう!(笑)

辻■怪談漫画の秀作として岸浩史さんの『夢を見た』にも触れたいですね。



夢を見た
岸 浩史
出版:双葉社

東■怪談漫画というよりは夢漫画、幻想漫画といった趣ですが、「小説推理」に連載が始まった当初から注目していました。スタイルは漫画ですが、内実は非常に文学的なものだと思います。ご本人に取材したとき、「これって、てのひら怪談みたいですよね」と申しあげたら、「そうなんですよ」と同意してくださって(笑)。見開き単位で完結する話が多く、まさに「目で見るてのひら怪談」という印象です。

平■幽戸玄太さんの『FKB実録怪談 厭霊ノ書』(竹書房恐怖文庫)がすごく面白かったんですが、どういう方なんですか?



厭霊ノ書 実録怪譚 竹書房文庫
幽戸 玄太

東■何も知りません(笑)。まあ、巷の噂では怪談実話の某ベテラン作家の変名だとかいわれてますがね……。

平■そうなんですか! たしかに書き慣れてるし貫禄あるし。

東■素性を明かせないということの裏には何か事情があるんでしょう、きっと。そんなに気になるなら、平山(夢明)さんあたりを問い詰めてみたら如何?(笑)

平■アプローチがほかの怪談とちょっと違っているんですよね。血なんか飛び散らなくてもけっこう楽しめるんだなと思って。

辻■ほかに触れておきたいのが小野不由美『ゴーストハント』(メディアファクトリー)全7巻の完結です。ビーケーワンでもたいへんよく売れました。



ゴーストハント 1 旧校舎怪談
小野 不由美
出版社:メディアファクトリー


*全7巻、こちらからご購入下さい→ブックフェア「幻の傑作ホラー、小野不由美『ゴーストハント』」

東■小野さんの自作に対する職人的こだわりが、実によく発揮されたリライト作品になったなと感じ入りましたね。祖父江慎さんによるブック・デザインも、神憑り的で(笑)。小野さんには『幽』で「営繕かるかや怪異譚」という新連載も今年から始めていただいて、こちらもぜひ御注目いただきたいと思います。「これぞニッポンの怪談文芸!」と自信をもって推奨できるシリーズになるだろう手応えを、ひしひしと感じております。
ちなみに『ゴーストハント』に加えて、恩田陸さんの『夢違』、宮部みゆきさんの『ばんば憑き』と、今年の怪談文芸を代表する作品の書き手は、お三方とも1990年代中盤、かつて私が「ホラー・ジャパネスク」と命名した時代に頭角をあらわし、とりわけ質量ともに卓越したホラー作品を送り出して注目された女性作家の皆さんですね。彼女たちはその後、ホラーという枠にとらわれず、幅広い分野で大活躍されてきたわけですが、そんな皆さんが今年、ふたたびホラー/怪談に取り組んで素晴らしい作品を世に出した。やはり同時期にデビューされた京極夏彦さんの『幽談』や『冥談』『眩談』(『幽』連載中)連作の試みとも合わせて、「ホラー・ジャパネスクふたたび」の予感を抱かせる、嬉しい出来事だったと思います。



夢違
恩田 陸
出版:角川書店



ばんば憑き KWAI BOOKS
宮部 みゆき
出版:角川書店



幽談 幽BOOKS
京極 夏彦
出版:メディアファクトリー



冥談 幽BOOKS
京極 夏彦
出版:メディアファクトリー

*続きは『幽 第16号』の購入者特典として配信されます。1月31日までに購入した方が対象となりますので、この機会にぜひご購入下さい!

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投稿者 : 2012年01月06日 18:23

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