『きつね』/朝宮運河
京都という土地は市街地こそ近代的なビルが建ち並んでいるけれども、市内を一歩逸れると緑深い山林か、田畑が一面に展がっている。これは京都市から車で数十分離れた、某町に住む友人に聞いた話。
夜、友人が駅からタクシーで自宅に向かっていると、運転手が話しかけてきた。
「お客さん、このあたりって狐が出るんですかねえ」と云う。
どういう意味ですか、と友人が尋ねると、その運転手はつい最近、仕事中に目にしたものについて話してくれたという。
夜の七時過ぎのことであった。
両脇を田圃に挟まれた田舎道をタクシーで走っていると、向こう側からトラックがやって来た。荷台に野菜を載せた白い軽トラックである。
すれ違いざま、何の気なしに眼をやると、トラックのすぐ後を黒いセーラー服を着た女の子が追いかけていた。走るというより、棒立ちのまますーっと、前方に滑るような恰好で、トラックの荷台にぴったりくっついている。少女の存在に気づかないのか、白いトラックはそのまま田舎道をがたがたと走っていった。
あれは野菜が欲しくて、狐が追いかけていたのではないか。
タクシーの運転手はそう語ったそうである。
友人の暮らす某町というのは、大きな池を埋め立てて作られた土地である。そのせいか不可解な出来事がよく起きるのだそうで、少女がトラックを追いかけていたのも、まさにかつて池があったあたりだということである。
投稿者:takazawa 2005年08月01日 2時03分
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