『狐火を追うもの』/五十嵐彪太
部活の帰り道、すっかり暗くなってしまった。お腹もペコペコだ。足早に歩いていると、小さな火がゆらゆらと宙に浮かんでいるのに気づいた。一つではない。列をなして進んでいる。「狐火だ」と思った。この近くには小さなお稲荷さんがある。そこは狐火が出ると言われていて小学生の時は肝試しによく使われていた。けれども実際に狐火を見たという人は誰もいなかった。だから僕は狐火が本当に出るなんて思ってもみなかったのだけど、これが狐火だとすぐにわかってしまった。これはただの直感だけど、たぶん間違っていない。
狐火はするするとお稲荷さんの方へ進んでいる。確かに不思議な光景ではあるけれど、怖くはない。狐の寄り合いでもあるのかな、なんて考えながら狐火が通り過ぎるのを眺めることにした。一瞬、行列の後をついていこうかとも思ったのだけど、それはなんとなくやめたほうがいい気がする。
狐火の行列はずいぶん長かった。ようやく最後の狐火が僕の前を通り過ぎると、なんとそのすぐ後を自分と同じ年頃の女の子が歩いているではないか。知らない子だ。隣の学校の子かもしれない。
「ねえ!これについていっちゃ、やばいって」
僕が声をかけても彼女は振り向きもしなかった。もう一度声を掛けようとして、そんなにのんびりしていられないと気が付いた。長い睫はぴくりともしないで遠くを見たまま、手も足も動かさずに狐火の後について進んでいたのだ。
僕は勢いよく女の子に抱きついた。誰か同級生に見られたらどうしよう、とチラリと思ったけれど、力一杯抱きしめてその場にしゃがみこんだ。僕に抱きしめられてもなお、女の子は進もうとする。
やっと狐火が遠くなって、女の子が鎮まるのを感じてから腕の力を抜いた。腕の中には、血を流したひびだらけの人形があった。
投稿者:takazawa 2007年07月30日 22時03分
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