『お菊の数えようとするお皿を片っ端からクレー射撃するオフ』/ヒモロギヒロシ
「そんなオフ会どこでやるのよう」
「番町に決まってるだろ。おろかな妹だな」
兄は愛銃を引っ提げ颯爽と出立した。へんなオフ会に参加して悪い虫がつかないか私はとても心配。兄はクレー射撃部のエースで、妹の私が惚れちゃうくらいかっこいいのだ。
気になって私も家を出た。タクシーに行先を告げるも、番町の所在は運転手もナビも知らない。車を降りて近所をとぼとぼしていたら、公園の茂みをほふく前進する兄を偶然見つけた。構えた銃口の先には赤ん坊を抱いた若い女。私は弾かれたように駆け出した。
幸い私の叫び声(というか愛の力)で正気に戻った兄は咄嗟に銃身を跳ね上げ、弾道は大きく逸れた。兄が平謝りに謝ると、母親は自嘲気味に笑った。常態を失った他人に襲われたことは一度や二度ではないのだという。彼女の身の上話には不倫とか呪いとか生霊とかいう物騒な言葉が何度も出てきた。さぞ恨まれるようなことをしてきたのだろう。
兄は時々彼女に会って相談に乗るうちに、いつしか親密な間柄になっていた。助けた恩を仇で返した彼女を、私も呪おうと決めた。
ネット経由で生霊を飛ばし、終日PCに張り付いているような馬鹿に憑いて女に危害を加えるよう仕向ける。呪の理論は既に理解出来ているけれど、実際は失敗続き。怨念があまりに重すぎて回線がダウンしてしまうのだ。
「お兄ちゃん、うちも光回線にしようよう」
「必要ない。うちは代々ADSLの家系だよ」
にべも無いのでネカフェへ出掛けた。そこで「ヤマカガシの胴体を切ったりつけたりして人造ツチノコを濫造するオフ」の告知と共に、生霊を呪速100mbpsで飛翔させる。あとは何処かの馬鹿が彼女の手足を切ったりつけたりしてくれるのを待つばかり。
夜遅くに帰宅した。兄はいない。お母さんの話では、刃物や糸をリュックに詰めて登山靴を履いてヨーデルなんかを口ずさみながら何処かに出掛けて行ったきりだという。
投稿者:kazuto 2008年07月15日 0時17分
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