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『学業じまん』/ヒモロギヒロシ

 文学部と経済学部と工学部と農学部。どの学部が一番強いかで口論となり、学生寮の食堂で僕らは殴り合いの喧嘩を始めた。間に入った法学部のSが「個々の腕力の優劣はどの学部が強いかの論証たりえない」と言うので、僕らは「もっともだ」「さすが法学部だ」「法学部は敵に回したくねえ」と甚く感心しつつ結局、各学部の研究対象・研究成果から代表を立て、勝ち抜き戦を行なうことにした。
 民俗学専攻の僕が文学部代表に擁立したのは「黒板幽霊」。既に廃校のA予備校校舎では、かつて文系コースの生徒が黒板に頭を打ちつけ横死している。発作的な自殺とも、独自の暗記法に肉体が耐えられなかった為とも言われるが、黒板に眼鏡がみっしりめり込む程だったというのだから何にせよ凄まじい。以後、教室には彼の亡霊が彷徨い、目が合った者に頭突きをかますのだという。その黒板は今ここにあり、故に霊は食堂を徘徊し、皆は目を合わさぬよう顔を伏せている。
 対する経営学科のKはバニーガール姿の女子を擁立した。悪霊対バニー。勝敗は歴然と思われたが、対峙の際に目を逸らしたのは悪霊のほうであった。硬直する悪霊の頬にバニーが触れると、するりと消え失せた。
「A予備校文系コースの約九割が童貞。童貞の74%が女性と目を合わせるのが苦手。そして童貞の実に96%は、もしもバニーに優しくされたらもう死んでもいいと思っている。数字で手繰る勝利の方程式。これが統計学だ」
 僕はKの後出しジャンケン的戦術に抗議したが、「マーケティングとはそういうものだ」の弁に退けられてしまった。
 第二試合は工学部製作のガンタンク的なロボと農学部が山形で捕獲した幻の巨大魚タキタロウの対戦予定だったが、ロボのメンテがなかなか終らず大会はぐだぐだとなり、そのうち腹が減ってきたので巨大魚を焼いて喰い(無駄に旨かった)、酒を飲んで歌い騒ぎ、皆なんとなく和解したのでまあよかった。

投稿者:takazawa 2008年07月21日 4時40分

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