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『祟りちゃん』/影山影司

 意外と皆、自分が妖怪だと気がついていないもので。最近では親が子供に教えないから、忘れてしまう家系も多いらしい。まぁ今時「あなたは垢舐めなのよ」なんて教えられても、辛いだけだから分らんでもない。
 昔、私と同じクラスにいた安藤君は碁石を洗うのが好きだった。学校の囲碁部に入って、部活後は毎日手洗い場で碁石を水に晒してじゃぐじゃぐとかき回してた。
 彼の家系が小豆洗いの一族だと知ったのは最近のことだ。小豆と碁石の感触は似ているんだろうか。もしかしたら安藤君はお米を研いだりするのも好きかもしれない。米研ぎ婆ってのもいたっけかな、と思ったら安藤母がそれらしい。なんてディープな一家かしら。
 私の父も妖怪だ。白髪の生えたおっさんだがカラカサ小僧、なんて呼ばれていた。私が小学校の頃、父は風の強い日に飛ばされた。「俺、傘化けだからよ、風ェ強いと飛んじまうんだァ」と言い残して父は空へ飛んでいった。母はまっとうな人間で、幼い私を抱えて父の行方を追うわけにも行かず、それ以来二人っきりの母子家庭で生きてきた。母も思うところがあったのか、私のために読み聞かせる本は妖怪図鑑とか、百物語とか、そういうのが多かった。血の濃い妖怪とはまだ会ったことが無いけど、いつか旅に出て、父みたいな妖怪に会ってみたいと思っている。

 風の強い日になると、私がしきりに父の話をするのはそういう理由。で、私の茶色い地毛が、風に揺られてやけに大きく広がるってんなら、私は父さんの娘って事よ。

投稿者:takazawa 2009年07月21日 9時33分

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