『本』/行騎
増えている、と思った。
部屋の中で自分のいる空間が限られているのである。これは確実に増えた所為であろう。確かに自ら買い求めたものもある。
しかし自分が買った以上に増えすぎなのだ、本が。
6畳ある部屋がもはや畳が見えているのは1畳分もなさそうである。
1冊置いたところに2冊、3冊置いたところに7冊、さらには本棚まで以前から部屋にあった気がしない。本は好きだが得体の知れない本が勝手に自室に増えているのは不気味だ、というよりおかしい。本が勝手に増えるわけがないのだ。自分が増やしていないのだから。
そう思ったとき背筋が寒くなった。そうだおかしいなぜ本が増えている。しかも勝手に、自分が何かやったわけではないのに。
そこでふと部屋に積まれた本に目を向けた。また、増えている。
しかし増えた量が異常だ。こんな量6畳の部屋に入るはずがない。
これは、夢か。夢ならば理不尽なこの事態も説明が付く。
しかし、ならば、でも、なぜ、痛いのだろう。足が本に押しつぶされて、痛い。もう本は半畳のスキマも残してはくれていない。
私は死ぬのだ。本に押しつぶされて死ぬのだ。
そう思ったら気持ちが穏やかになった。それはいい。それはとても気持ちが良い。
さてそれでは、本を読もうか。
投稿者:takazawa 2010年07月21日 10時54分
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