『二階の窓』/asak_00
常々、仕事部屋のレイアウトが気になっていた。机に座ると窓に背中を向けることになるからだ。
自宅の一室なので、贅沢を言っても仕方ないが、壁と本棚の関係でそこにしか机を置くことができなかった。それを除くと、二階の角部屋だし、静かなのでまあ気に入ってはいたのだ。
ただ、ここは二階なのに、二階であることを忘れてしまいそうになることがよくある。単なる気配だけなのだが、パソコンに向かっているときなどに、誰かの視線を感じるときがたまにある。
勿論、気のせいに決まっているが、一階ならまだしも、二階で誰かの気配を感じるのはあまり気分のよいものではなかった。
昨夜は仕事部屋に遅くまで篭り、明け方になって就寝した。昼過ぎに目覚めると妻が妙な表情をして話しかけてきた。
「あなたの部屋に変なものが落ちているんだけど」
妻と一緒に仕事部屋に赴き、妻が指差す方に視線を向けた。
「なんだよ、これ!」
窓の木枠の部分に長い髪の毛のようなものが無数、散らばっている。俺は声を荒げてしまった。気味も悪かったが、もしや妻が浮気を疑って探りを入れているのではと瞬間憤ったからだ。だが妻は、「そんなのこっちが聞きたいわよ」と、とても浮気調査とは思えない困惑した返事をしたため、俺は我に返った。
この家は俺と妻しか住んでいない。妻は女性にしてはかなり髪が短い。そう、浮気はバレなければ浮気ではない……。しかも既に終わったことだ。何しろ相手がこの世にいないのだから。恐る恐る髪に触れて感触を確かめた。あの女の髪の匂いが鼻腔を掠めた。二階の窓越しに立ち、指で髪を梳いていたのか。俺の後姿を見つめながら……。
投稿者:takazawa 2010年07月21日 10時55分
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